「BLEACH Rebirth of Souls」が描く“逆転”と“再生”とは?――卍解とともによみがえる熱狂

久保帯人先生による同名人気漫画を原作とし、アニメやゲームなどさまざまなかたちで展開されている人気作品『BLEACH』。今なお世界中のファンに愛され続け、2025年3月21日には対戦アクションゲーム「BLEACH Rebirth of Souls」が発売されました。今回は本作のプロデューサーに、開発の経緯から各要素に込められたこだわりを伺いました。

2025年3月21日に発売された、『BLEACH』の家庭用ゲーム最新作「BLEACH Rebirth of Souls」。今回は本作のプロデューサーである都築克明さんに、開発がスタートしたきっかけや『BLEACH』が持つ魅力、バトルやグラフィック、ストーリーなどにどのようなこだわりを込めたかを語っていただきました。

BLEACH Rebirth of Soulsキービジュアル
Recipe Image

都築 克明

バンダイナムコエンターテインメント
CE事業部 第1プロダクション

「BLEACH Rebirth of Souls」プロデューサー。2013年入社。これまでプロデューサーとして『キャプテン翼 RISE OF NEW CHAMPIONS』や『ONE PIECE 海賊無双4』『ONE PIECE ODYSSEY』などを担当。

“魂を震わせる”『BLEACH』ゲーム化への一歩はどう進んだのか?

――はじめに、「BLEACH Rebirth of Souls」の開発がスタートしたきっかけを教えてください。

都築:『BLEACH』は世界中で人気の作品で、もともと「家庭用ゲーム機で『BLEACH』のゲームを遊びたい」という声は多く届いていました。

また、2022年10月から“千年血戦篇”のアニメも放映され、2024年にはアニメが20周年を迎えました。世界中にいるファンの方々の作品への熱量が高まるタイミングに合わせて、『BLEACH』という作品をゲームでできる体験として楽しんでいただきたい。そんな思いを込めて、今回制作を進めることになりました。

「BLEACH Rebirth of Souls」プロデューサーの都築さん
「BLEACH Rebirth of Souls」プロデューサーの都築さん

――本作のコンセプトは“魂(ソウル)を震わせる、逆転(リバース)体験”となっていますが、このコンセプトが決まった経緯を教えてください。

都築:『BLEACH』をゲーム化するならアクションジャンルだろうとは当初から考えていました。そこから単に対戦アクションの型に落とし込むのではなく、もう一段工夫したいなと思ったんです。そこで、今回作るゲームでしか体験できない『BLEACH』らしさをコンセプトに据えることにしました。

黒崎一護

――その“らしさ”はどのように探っていったのでしょうか。

都築:開発チームと話し合いながら、漫画で描かれていたバトルを読み直したり、いわゆる名シーンなど、ファンの皆さまが好きなバトルをもう一度追っていったりしていきました。

その中でキーとなっていたのは、キャラクターの持つ強烈な個性、その個性を体現する斬魄刀、卍解に代表される変身、大コマで描かれるダイナミックな逆転劇、この4つかなと思ったんです。だからこそ、今回はそれを軸にアクションゲームの体験として作り上げよう、と。

日番谷冬獅郎

――ちなみに、都築さんも『BLEACH』のファンだったのでしょうか? 作品との出会いについてお聞かせください。

都築:もちろんです。学生の頃から『週刊少年ジャンプ』を読んでいて、『BLEACH』も連載が始まった当初から読んでいました。

当時から作品のオリジナリティーに釘付けでしたね。斬魄刀で戦うバトルや、刀の能力を解放する“卍解(ばんかい)”、キャラクターのセリフ回しもかっこいい。一般読者として「次はどうなるんだ!?」とワクワクしていましたね。

「BLEACH Rebirth of Souls」プロデューサーの都築さん

――「BLEACH Rebirth of Souls」を制作するにあたり、改めて読み直して気づいたことはありましたか?

都築:個人的に、剣八と一護が初めて戦ったシーンが好きなんですよね。戦いの後に剣八が「強くなりてえな…!」とこぼして、やちるが「もっともっと強くなろうよ 二人で…」と返すんです。ここだけでもすごく良いシーンなのですが、その後に描かれるふたりの関係性を知った上で見ると、本当にエモい。

都築:そういう深みがあることを改めて魅力に感じると同時に、その空気感や読後感をゲームとしてしっかり表現しなくてはいけない、とも思いました。プロデューサーの目線で作品を読んでみて、ゲームとしての可能性をより強く感じましたね。

刀で戦うからこその「間合い」を見極めるゲーム体験を

――本作のバトル部分を作っていく上で、特に苦労されたのはどのような点ですか?

都築:逆転を楽しんでいただくためにはどうすればいいか、という部分は試行錯誤を重ねました。特に、刀で戦うキャラクターが多いので、殴る・蹴るといった格闘戦とは違って、斬り合いの「間合い」にフォーカスしたのも本作の特徴の1つだと思います。

対戦ゲームにおいて、「間合い」の駆け引きというのはキャラクターのスピードにすごく影響します。速すぎると間合いを管理するのが難しくなりすぎるし、かと言って遅すぎると『BLEACH』らしくなくなってしまう。そのあたりのバランスは非常に苦労しました。

「BLEACH Rebirth of Souls」のプレイイメージ

――『BLEACH』のキャラクターは個性が強いので、グラフィックやエフェクト的な再現も大変そうですね。

都築:そうですね。例えば、一護やグリムジョー、ウルキオラはそれぞれ変身した後の戦い方がバラバラです。それに伴い、キャラクターごとに動き自体も違ったものになりますし、固有ゲージみたいなものが必要になってくるキャラクターも多いんですよね。

ほかにも、砕蜂なら一撃の威力ではなく手数で攻める、剣八なら振りの大きい攻撃を当てて一気に削る、みたいなキャラクターに沿った動きも存在しています。こういった部分は、アクションゲームとしてのやり込み要素にもなっています。

「BLEACH Rebirth of Souls」のプレイイメージ

――『BLEACH』は好きだけどアクションゲームは初心者、という人でも気軽に遊ぶことはできるのでしょうか?

都築:PlayStation®5のボタンで言えば、四角ボタンと三角ボタンを押していれば、基本的な攻撃はできるようになっています。なんとなくで触っていただいても、『BLEACH』らしいアクションはお楽しみいただけると思います。

本作ではスタンダード操作という操作方法を用意しています。アクションが苦手な人でもパッと触ったときに遊びやすくなるように、操作をある程度補完してくれるものです。

もちろん、全部マニュアル操作でアクションを組み立てる、プロフェッショナル操作も用意しています。ちなみに、開発チームは発売まで毎日対戦していたので、プロフェッショナル操作です。どんどんテクニックを磨き続け、互いに高め合っていますね(笑)。

「BLEACH Rebirth of Souls」のプレイイメージ

作品のデザイン、魅力的なワーディング……あらゆる角度から『BLEACH』を再解釈する

――『BLEACH』の世界観をゲームに落とし込んでいくにあたり、バトル以外でもこだわった部分を伺えればと思います。

都築:『BLEACH』の魅力は本当に多岐にわたってあると思うのですが、まず1つはビジュアル面のデザイン性ですね。

『ジャンプ流!』という、漫画家の先生ごとに制作の裏側を紹介するDVD付きの漫画講座本があるんですけど、もちろん久保先生のものも出ていたんですよ。それをもとに、グラフィック表現については開発とも話し合いました。『BLEACH』ファンの方々はアートに対して目が肥えている方も多いので、その期待に応えられるものにしよう、というのは大前提でした。

「BLEACH Rebirth of Souls」ファーストトレーラー

――作品の表現を分析して、どのような発見があったのでしょうか?

都築:白と黒の大胆なコントラストや1色を中心に構成する、あるいはフォントの使い方など、そういった部分を「こういうのは『BLEACH』らしいよね」というように1つ1つ発見していきました。それらの気づきを基に開発チームとも試行錯誤しながらゲームに載せていきましたね。

本作だと、メインメニューの見せ方などがわかりやすいかと思います。キャラクターは映っているんですけど、全員顔は見せないようにしました。ふつうキャラクターものを扱うのであれば顔はドーンと見せるところを、あえてそこを引き算することでかっこよく見せる。そういった工夫も取り込んでいます。

「BLEACH Rebirth of Souls」のプレイイメージ

――『BLEACH』といえば、独特な語彙も特徴であり魅力の1つですが、それをどのようにゲームに反映していったのでしょうか?

都築:『BLEACH』のワーディングは本当に難しかったです。

本作のストーリーやキャラクターのセリフは、僕らとしても数十稿を超えるくらい調整を重ねてしっかりと作り込んだのですが、その後さらにアニメ製作委員会のご担当者さまに多大なご協力をいただき、作品としての完成度を上げていきました。

「BLEACH Rebirth of Souls」プロデューサーの都築さん

――数十稿とはすごいですね! 相当に力の入った制作が行われた、と。

都築:一度書ききった後で、文章の調整や表現の相談をさせていただきました。

また、当時はちょうど“千年血戦篇”の1クール目、2クール目が制作されているタイミングで、アニメを作られている中での制作現場のノウハウなども教えていただきました。あの期間がなかったら、完成までにもう1年ぐらいかかったんじゃないかと思います。大変なご助力をいただいたぶん、本当に良い形に仕上げることができました。

「BLEACH Rebirth of Souls」のプレイイメージ

「追体験」を軸に「新体験」を織り交ぜるストーリー展開

――本作で描かれるストーリーについても、こだわったポイントを教えてください。

都築:先ほども少し触れましたが、本作のストーリーモードでは、「原作ストーリーの追体験」を軸にしつつも「ゲームならではのストーリー」も用意しています

まず、原作ストーリーの追体験についてですが、『BLEACH』の始まりである“死神代行篇”から“破面(アランカル)篇”までのストーリーを収録しています。現在、アニメで“千年血戦篇”が展開しているのもあって、ゲームとしてはそこにつながるお話を、改めて丁寧に楽しめるようにした方がいいな、と考えました。

「BLEACH Rebirth of Souls」のプレイイメージ

都築:また、“死神代行篇”から“破面(アランカル)篇”までは、20周年を迎えたように、アニメが制作されたタイミングから時間が経ち、ハードのスペックも上がって表現できることもだいぶ増えたんですよね。

そのため、アニメ製作委員会のご担当者さまとも相談しつつ、グラデーションや光の表現などを足したり、現代のトレンドを意識した表現を採用しています。

――ゲームオリジナルで描かれるストーリーについてはどう進めたのでしょうか?

都築:メインストーリーは黒崎一護の物語になるのですが、既存ストーリー以外の部分にフォーカスをする要素も盛り込んでいます。キャラクターの日常を体験できるストーリーもいくつかありますね。

阿散井恋次と織姫

都築:『BLEACH』を改めて読み直したときに思ったことなのですが、例えば尸魂界(ソウル・ソサエティ)篇では長い間変化のなかった尸魂界(ソウル・ソサエティ)という世界に、ある意味“異分子”となる一護がやってきて、大きな変化を巻き起こしますよね。それによって立場や考えが変わるキャラクターもいれば、変わらない信念を持ち続けるキャラクターもいるんです。

そういうキャラクターたちの、“一方その頃”といったアナザーストーリーをしっかり描ければ、各キャラクターのことをより好きになってもらえるのではないかと考えたんです。メインストーリーである縦軸をしっかりと作った上で、お話やキャラクター設定がしっかりしている作品だからこそ横にも広げてみる、ということをさせていただきました。

阿散井恋次と朽木ルキア

都築:また、各章の最初と真ん中にはストーリーのあらすじを紹介するムービーも用意しています。本作のストーリーモードは会話シーンもかなり長いので、「途中までスキップしたけどやっぱりストーリーを見よう」と思った方や、キャラクターが複数のグループに分かれて行動する“尸魂界(ソウル・ソサエティ)篇”などで、状況を整理するために役立っているかと思います。

――初めて『BLEACH』に触れる方も楽しめる内容になっているんですね。それでは最後に、このインタビューを読まれている方々へのメッセージをお願いします!

都築:「BLEACH Rebirth of Souls」は、久しぶりとなる『BLEACH』の家庭用ゲームです。バトル、ストーリー、グラフィックなどいろいろなものをファンの方に楽しんでいただける作品として、しっかりと作ることができたと思っています。

皆さまに遊んでいただく中で求められるものについても、今後ケアしていければと考えていますので、まずは久しぶりの家庭用ゲーム機でプレーする『BLEACH』を楽しんでいただければうれしいです。

「BLEACH Rebirth of Souls」プロデューサーの都築さん

【取材後記】
2001年に漫画の連載が開始した『BLEACH』。当時学生だった自分も連載初期から読んでいたので、「BLEACH Rebirth of Souls」の公式ホームページやPVを見ただけでテンションが上がってしまいました。

既存ストーリーの追体験とともに、“一方その頃”を描くオリジナルストーリーも楽しめる本作。『キャプテン翼 RISE OF NEW CHAMPIONS』も手掛けたチームと共に制作されているとのことで、個人的にはこちらの作品で展開したストーリーが非常におもしろかっただけに、本作のストーリーにも期待大です!

取材・文/村田征二朗
1989年生まれのライター。しゃれこうべ村田、垂直落下式しゃれこうべライターMなどの名でも活動し、コンシューマータイトルやスマートフォン向けゲームアプリのインタビューや攻略記事を執筆。原稿料の8割はプロレス観戦のチケット代に消える。

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