アソビあふれる企業は社内報もひと味違う!? 読まない社内報から、読みたくなる社内報へ――その思いでリニューアルを手掛けた大月みね子さんに、バンダイナムコエンターテインメントの社内報の魅力やどのような工夫がされているのかなど、詳しく語っていただきました。
「PLAZA=広場」。社員の人が社内報に関わる機会をたくさん作りたい
様々な企業で社員向けに配布される社内報。一般的にイメージするのは、文章の多い堅いイメージだったり、会議などで知らされる社内情報が改めて掲載されていたり…。「あまり読まない」と耳にすることも。
でも、そこはエンターテインメント企業! バンダイナムコエンターテインメントは、社内報までもアソビ心たっぷりで、思わず読みたくなる仕掛けが盛りだくさんなんです。その仕掛人でもあるコーポレートコミュニケーション部の大月みね子さんにお話をうかがいました。
――バンダナムコエンターテインメントの社内報「BNE PLAZA」はWebで配信されているそうですね。いろいろ工夫が施されているとのことですが、まずは立ち上げの経緯を教えてください。
大月:Web社内報は、バンダイとナムコの統合当初である2005年からスタートしました。私は以前、事業部で主に携帯コンテンツの企画運営などを担当していたのですが、その頃は忙しい業務の中、なかなか会社全体に視野が広がらず、申し訳ないことに社内報をあまり見る機会がなかったんです。
大月:でも、3年前に現在の部署に異動して、実際に自分が社内報の運用を始めてみると、会社のさまざまな情報が得られるので、「もっと社内の人に見てもらいたい」という思いが強くなりました。そこで、リニューアルすることになり、2018年11月より現在の「BNE PLAZA」が誕生しました。
――「BNE PLAZA」というネーミングにはどういった思いが込められているのでしょうか?
大月:それまでは、経営層のメッセージやトピックスを伝えることが主な役割だったんですが、やっぱり一方通行というか、発信のみでした。それだと、なかなか見てもらえないと思い、もっと“見てもらえるコンセプト”に変えたほうが活用されるのでは、と思ったんです。社員の人が社内報に関わる機会をたくさん作り、集まってくる広場という意味で、「PLAZA」という名称を提案しました。
――「BNE PLAZA」はどういう構成になっているのでしょうか。「会社のコト」、「仕事のコト」、「仲間のコト」、「つながるコト」という4つのカテゴリーに分かれているそうですね。
大月:「BNE PLAZA」で扱うコンテンツをわかりやすい言葉でまとめてカテゴリー名をつけました。1つめの「会社のコト」は経営層から社員の方々へのメッセージや、CSRや協賛活動などの事業外活動を主に発信しています。
2つめの「仕事のコト」は製品サービスに関わる情報や社員に役立つ情報を発信しています。例えば、プレスリリースやメディア掲載情報の共有のほかに、「BNE PLAZA」の新しい試みとして始めた「事業トピックス」というのがあります。各部署にトピックス担当を置いていただいて、毎月、自分たちの事業部のトピックスを寄稿していただく形で記事を掲載しています。
――各部署のトピックスはどういった内容なのでしょうか?
大月:どんな情報を掲載するかは担当者にお任せしていて、自由といいますか、社員の方になるべく負担がかからない形での協力をお願いしています。事業部の方が直接寄稿することで旬な情報があがってきますし、担当者が伝えたいことを社内報を通して直接社員に届けることができます。例えば新製品を担当プロデューサーのインタビューを交えて、想いを込めて紹介してくれることもありますので、他部署の方にとっても参考になるような内容になっています。
社員による投稿型のリレーブログ「TASUKI」は100人超え!
――3つめは「仲間のコト」です。
大月:社員にフォーカスしたカテゴリーで、業務とは別に、社内イベントやクラブ紹介、社員のリレーブログ「TASUKI」、海外拠点の方の社員紹介コーナーなどもあります。あとは出向社員や中途採用の方の新メンバー紹介なども掲載しているので、多くの社員が登場します。「PLAZA」全体を見ても、誰かしら社員の方が関わっている記事がほとんどですね。
――社員のリレーブログ「TASUKI」はどういったものなんですか?
大月:「TASUKI」は2年前から始めたコーナーで、バンダイナムコエンターテインメントならではのものだと思います。身近な社員が出ていると読まれるきっかけになるというのが運用する中でわかってきていましたので、それなら取材を受けて登場するのではなく、自分の言葉でつづってもらうようなブログ形式で、毎週水曜日に一人ずつ更新していく社員紹介コーナーにしようということになりました。登場した社員が次の方を紹介するリレー形式なのですが、部署の偏りがないように、自分の部署以外の方を紹介するという選定基準を設けて依頼をしています。
――ブログにはどのような内容を綴られているのでしょうか?
大月:書く内容については、テーマが2つありまして、「バンナムフライデー」のことと、自分の趣味や今ハマっていることを書いてもらっています。「バンナムフライデー」は、毎月1回金曜日に 幅広いエンターテインメント体験を通じて、自己成長を促進し、新規事業創出の糧を得る時間を持つという2年前から行っている社内の取り組みで、過ごし方は人それぞれなので、どのように過ごしたのか、そこから得たことや学んだことを紹介してもらうことにしています。
――「TASUKI」が回ってきた社員の皆さんはどのような反応ですか?
大月:皆さん快く引き受けてくださり、楽しんで記事を書いていただいている印象です。基本的に社内報の記事を依頼する際は、負担にならないような範囲で…ということでお願いしていますが、力作を書いてくださる方もいらっしゃいます(笑)。特に若い世代の方はSNSなどで自分のことを綴ることに慣れていらっしゃるのか、文章がとっても上手で、読み応えのある面白い記事を書いていただいているので、ありがたいなと思っています。
――投稿型だと個性も出ますし、すごく充実していそうです。毎週、楽しみですね。
大月:定期的にアクセス数を見ているんですけど、いろいろな記事の中でもやっぱり1、2位を争うぐらいの人気のキラーコンテンツにはなっています。社内報を身近な媒体として捉えてもらえているというのが、運営側としてはよかったなと思っています。
――ちなみにスタートしてから100人を達成されたとか!
大月:これからも継続の予定ですが、全体の社員数からするとまだまだ…。全員を「TASUKI」では紹介できませんが、登場する社員はもちろん、周囲の社員も身近な社員が社内報に掲載されると部署内で話題になって社内報へのアクセスのきっかけにもなります。「TASUKI」だけでなくその他の記事も含めて多くの社員の方々に「PLAZA」に関わってもらえたらと思っています。
社内の人が共感できる “あるあるネタ”を4コマ漫画に
――そして、4つめが「つながるコト」になります。
大月:ここが今、活性化したいなと思っているところなんです。記事の寄稿やリレーブログは依頼をすれば社員の方が協力してくれますが、「BNE PLAZA」としては、自ら意思をもって参加する媒体にしたいなと思っていまして。社員が身近な媒体として気軽に参加できるコーナーを作り、興味を持ってくれている社員を増やしたいな、と。そういう意味で「つながるコト」では双方向性のあるコンテンツを掲載しています。
――具体的にどういった試みを?
大月:「エグゼトーク」という役員の皆さんのブログコーナーで、社員からの質問をテーマにブログを書いていただいています。誰でもサイトから質問を投稿できるようにし、仕事の話からプライベートまで、社員が聞いてみたいことを募集しています。役員の人柄や意外な一面が知れるということで、社員には好評のコンテンツとなっています。
大月:あとは今期、「BNEあるあるマンガ」というコーナーを始めました。社外の方には通じないような、バンダイナムコエンターテインメントならではのローカルネタやよくある失敗談などの投稿を募集して、それを4コマ漫画にして掲載します。クスっと笑えたり、BNE社員なら共感できる内容になっていますので、コミュニケーションのきっかけになればと思っています。
――おもしろいですね! 漫画だと見やすいですし、アクセス数も伸びそうですね。
大月:忙しい業務のちょっとした息抜きになったらいいですし、普段、仕事の内容では関われていないけど、こういう小ネタをちょっと投稿してみようかなって思ってくれる人がいると嬉しいですよね。投稿してくださった方全員には、日頃使っていただけるようなオリジナルグッズを作って配布しています。
大月:とにかく、いかに興味を持って自らアクセスしていただける媒体になるか、考えているところです。もちろんおもしろいコンテンツだけではなく、経営層の今の考え・想いを伝えるメッセージも毎月「エグゼクティブメッセージ」というコーナーで展開していて、そこはやっぱり必ず見てもらいたいところなので、そういった重要な内容も織り交ぜながら、日々見てもらえる媒体にしたいなと思っています。
社員の声を直接きいて、より身近な媒体へ
――「BNE PLAZA」はアソビ心にあふれて、とてもエンターテインメント企業ならではだと感じます。そんなエンターテインメント企業において、インナーブランディングという点では、どのような思いで取り組まれていますか?
大月:エンターテインメント企業に限ったことではないのですが、会社を自分事に捉えられると視野が広がりますし、自分が担当している業務への情熱も増すんじゃないかなと思います。自分の好きな会社で働くってやっぱり楽しいじゃないですか。一社員でも、今いる自分の会社をよくしていくためにできることってあると思いますし、Web社内報が、会社と社員を近づける役割を担うことができれば、より社員の方がモチベーションを上げて、働きやすい会社になると思っています。
――今後、「BNE PLAZA」でやってみたいことなどはありますか?
大月:動画を使った情報配信です。現在は写真と文章だけで掲載していますが、内容によっては動画の方がダイレクトに情報が伝えられるので、活用したいと考えています。
また、これまでは、全社アンケートを実施したり、日々のアクセス数を追って社員の利用状況を把握していましたが、今期は、社員の声を直接聞くヒアリング会を実施しました。全部署から数名ずつ参加していただき、利用状況やコンテンツの感想、要望などをざっくばらんに話していただきました。勤続年数や部署、担当業務、ライフスタイルなどによって働き方はさまざまなので、個々に違う利用状況を把握できましたし、社員同士で社内報について話合ってもらったため、コンテンツのアイデアもたくさん出てきました。(それによってorそれにより、)多くの気づきが得られ、社内報運営改善にすごく参考になったので、今後もいろいろな社員の方の意見を聞きながら、バージョンアップをしていきたいと思います。
――最後に、「BNE PLAZA」の課題として見えてきているものや今後の目標を教えてください。
大月:現在、多くの社員の皆さんにご協力いただきながら月に30以上の記事を公開していますが、情報収集も社員への周知もまだ十分ではないと感じています。社内イベントでプレゼントキャンペーンを実施したり、ノベルティを配布してBNE PLAZAの社内周知施策を実施していますが、もっと多くの社員に気軽に参加していただき、身近な媒体としてBNE PLAZAを活用してもらいたいと思います。
取材・文/四戸咲子
フリーのライター。エンターテインメントをはじめ、さまざまなジャンルで執筆。
【撮影 吉川綾子】