地域のファン、交流人口を増やす。地域活性化の取り組み:BNJ×IDLプロジェクト座談会(後編)

地域と協働してエンタメで社会課題解決に取り組む「BNJ PROJECT」、編集力とメディア力で社会課題解決に取り組む「IDL ソーシャルデザインチーム」。前編では、地域活性化や社会課題に取り組むワケを語りました。後編では、現状の両プロジェクトの取り組みと、地域とのプロジェクト連携についてお伝えします。

地域や自治体と一緒に、そこにしかない“良さ”を楽しく活かす!

それぞれの得意分野を活用して、地域協働に取り組む「BNJ PROJECT」と、「INFOBAHN DESIGN LAB.」。どちらもアプローチは違えども、「地域と共に、そこの“良さ”を活かせる新たな仕組みを一緒に生み出そう!」と、さまざまな施策を行っています。両プロジェクトが、地域とともに施策に取り組む中で重要視していることや今後の展望は、いったいどんなものなのでしょうか?

目の前の人と全力で楽しむ。アソビの新文化「ドリフトトライク(三輪車)レース」の実証実験(BNJ PROJECT)

前編では「BNJ PROJECT」(以下、BNJ)と「INFOBAHN DESIGN LAB.」(以下、IDL)のみなさんに、地域協働に取り組むワケや、「地域の方々と一緒に、新しいアソビの文化を創出していきたい!」という熱い気持ちを話していただきました。後編では、両プロジェクトの現在の取り組みや、今後の展望について語ってもらいます。

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写真左から、尾作慶一さん(BNJ)/坂本純一さん(BNJ)/菊田政仁さん(BNJ)/白井洸祐さん(IDL)

ドリフトトライク (三輪車)レースのプロジェクトの始まり

白井洸祐さん(以下、IDL 白井):BNJ PROJECTでは現在、大人も楽しめるドリフトトライク(ドリフトを楽しめる3輪車)のレースのプロジェクトを行っているそうですね。地方創生の展示会での ご縁とのことですが、「実施したい!」と思った点や判断ポイントは何でしょうか?

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©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

坂本純一さん(以下、BNJ 坂本):“コンパクトに各地で遊べる共通の仕組み”を作りたかったので、誰でも気軽に扱いやすいドリフトトライクのサイズ感がとても魅力的でした。

IDL 白井:ドリフトトライクをただの乗り物ではなく、みんなが楽しめるエンターテインメントとして落とし込む必要があったかと思いますが、人を楽しませるためにどのような点を工夫されましたか?

菊田政仁さん(以下、BNJ 菊田):シンプルだからこそすぐに乗れて、どこでも遊べるところが大きなポイントなので、地域の方たちと協力して、大人も子どもも一緒に全力で楽しめるイベントとしてレースを開催しました。どの地域でも、予想以上に反響がいただけてよかったですね。

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©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

ドリフトトライクイベント開催中のエピソード、地域や自治体からのフィードバック

IDL 白井:ドリフトトライクのイベントでうまくいったことや、今後の課題を教えてください。

BNJ 菊田:木曽岬町(三重県)のイベントでは、最初は役場の駐車場をお借りしました。ドリフトトライクがコンパクトなので、特別なコースや場所を用意するのではなく普段使っている 駐車場であっても盛り上がりましたね。
また、河川敷の近くにある、国土交通省管轄の防災ステーションの敷地を使わせてもらったのですが、木曽川に面し、治水と生活が切り離しがたい地域だからこそ、 地元の方たちに改めて防災ステーションの存在を覚えてもらうきっかけ作りのお手伝い ができてよかったです。

尾作慶一さん(以下、BNJ 尾作):今後は、幅広い年齢層の方が参加できたり、よりエンタメ性を高めたりといったオリジナルルールを作って大会を開催するなど、さらに集まりを広げられる形を目指しています。カスタマイズできることで多くの人に、ドリフトトライクでのアソビを身近な存在 として楽しんでもらえたら嬉しいですね。

IDL 白井:今ある地域資源を使いながら、小さく始められるのは地域にとっても魅力ですね。それに、カスタマイズによって地域ごとの特色も出せるようになるかもしれません。

BNJ 坂本:三重県を中心に、近隣のさまざまな自治体の方にも集まっていただいて合同でイベントができたので、終了後に行ったワークショップも盛況でした。「各地を回ってグランプリをやりましょう!」という話も出て、地域や自治体の方たちとの連携が、また次につながるきっかけにもなっていることを実感しましたね。

IDL 白井:みなさんの取り組みが、地域の人たちの連携をもたらし、自ら新しいエンターテインメントを作るきっかけにもなっているのですね。そこから仕組みを作ることで地域の交流人口も増えていけば、未来にはドリフトトライクが新しい“アソビ”の文化になりそうです。

地域と企業が可能性を発掘し合う。アクティブワーキングの実証実験(IDL)

アクティブワーキングのプロジェクトの始まり

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BNJ 菊田:インフォバーンでは、「アクティブワーキング(都市部のビジネスパーソンを地域に招き、地域と都市部の企業をつなぐ短期滞在プログラム)」のプロジェクトを行っているとのことですが、その理由や狙いを教えてください。

IDL 白井:インフォバーンが事業開発のお手伝いをしている都市部の企業は、競争の中で常に新しいビジネスの機会を求めています。そういった企業にとって、埋もれている資源がたくさん眠っている地域は、まだ見ぬフロンティアと言えるのではないか? ということで、地域と都市部の企業をつなぐことを考えるようになったんです。
また、第三者の視点で地域の価値を深掘りし、一期一会ではなく、その後に事業が生まれるように、地域と企業がお互いの可能性を発掘できるよう心がけています。それが、地域にとっても企業にとっても、持続的に「稼ぐ」ための入り口になると思うんです。

実施までのエピソード、実施後の手ごたえ

BNJ 尾作:具体的に実施に至るまでには、どのようにプロジェクトを進めていくのでしょうか?

IDL 白井:例えば、京都府北部の伊根町では、都市部の企業やビジネスパーソンとアクティブワーキングを行い、京都府など自治体と一緒に現地視察から始めました。すると、どうやらハードなスポーツサイクリストが喜びそうなアップダウン、風光明媚な景観、そして地域の観光リソースがあるらしい……。
そこで、専門的な知見を有する自転車関連企業に現地を見てもらうと、「他の地域には負けないほどのポテンシャルを有する」というお墨付きを得られました。以来、事後の持続的な事業化を見越し、サイクリングコースの設計・最低限必要なインフラの整備・住民も巻き込んだ体験試乗会・各種検証などのプログラムをスタートしています。

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BNJ 尾作:地域・自治体の方からのリアクションや、IDLとしての手ごたえはどうでしたか?

IDL 白井:反応は好評で、現在は「サイクル・リビングラボ」という一般社団法人を立ち上げ、地域・住民・企業とともに持続性のある仕組み作りに取り組んでいます。企業と一緒に、地域の価値を見つけられたという手ごたえはあるので、それを成果につなげていきたいですね。

BNJ 坂本:その地域にしかない独自の良さを活かし、取り組みを長く続けていきたいというのは、私たちBNJにも共通する想いです。

アソビの文化が自ずと生まれて続くコミュニティを作っていきたい

地域と一緒に、アソビのコミュニティ作りを

IDL 白井:これまでに、バンダイナムコエンターテインメントはゲームセンターで生まれる自然発生的なコミュニティも大切にしてきたと思いますが、コミュニティが生まれることは、地域の課題解決にどんなふうに役立つと考えられますか? 事業で 培ってきた知見など、活用できそうなことをぜひ聞かせていただければ。

BNJ 坂本:人が集まってコミュニティが生まれると、そこから自然とディスカッションになりますよね。どんな課題に取り組むにしても、対話は欠かせないものです。また、我々BNJの狙いである“地域の方々がエンターテインメントを自分たちで作れるようになる”ということについても、最初のきっかけや仕組み作りは我々がお手伝いしても、きっと続けていくことで、最終的にはコミュニティの力で自走できるようになるだろうと考えています。

BNJ 菊田:さらに、生まれたコミュニティ同士が楽しんで刺激し合い、連携し合う仕組みが作れれば理想的だと思います。そうすれば、地域の特性や状況に応じて、スケール感も柔軟に変えていけるので。

IDL 白井:「一緒に遊ぶ・楽しむ」という 視点で、コミュニティ作りに長年携わってきたのは、バンダイナムコエンターテインメントの強みですよね。それを活かして、BNJで今後やっていきたいことはありますか?

BNJ 坂本:ドリフトトライクの全国大会などといった楽しいお祭り的なことは、ぜひやりたいです。昔からあるお祭りは、コミュニティで集まれるし、地域の独自性もあって……と、BNJ PROJECTのねらいに近いので、お祭り作りをしたい! という気持ちがありますね。近年、地域のお祭りは徐々に小さくなっているものも多いようですので、人が集まる楽しさを再発見できるきっかけが企業主体でもいいのではないか、と。

BNJ 尾作:参加してくれる地域のみんながそれぞれ、クリエイターになれるような仕組みも生み出したいと考えています。その仕掛け作りが、また新たなアソビや文化作りにつながるはずと思っています。

BNJ 菊田:アソビのコミュニティ作りの支援は、これまでもバンダイナムコエンターテインメントがずっと行ってきたことなので、その強みを活かして地域に寄り添って 一緒に作れるソリューションを提供し、地域の人と一緒にアソビをたくさん創出していきたいですね。

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【まとめ】
どんな地域にも必ず、そこにしかない価値や魅力があるもの。それを地域の人たちと一緒に発見し、さらに新たな文化を創出したいという熱い気持ちが、みなさんから伝わってくる座談会でした。
BNJやIDLのいろいろな取り組みが、多くの人たちを巻き込んでイノベーションを起こし、やがて次世代へもつながっていく……。これからの両プロジェクトにご期待ください!

BNJプロジェクトWebサイト ≫≫≫

【INFOBAHN DESIGN LAB.(IDL)について】
株式会社インフォバーン(本社:東京都渋谷区、代表取締役CEO:今田素子/代表取締役CVO:小林弘人)のデザインコンサルティング/イノベーション支援チーム。体験デザイン、テクノロジー、ブランド・コミュニケーション戦略の知見を活かし、新しい価値創造をもたらす製品・サービスの創出を通じ、企業のイノベーションを総合的に支援します。その一角を担う「ソーシャルデザイン」チームは、社会課題を発見し、それを解決するための持続的かつ創造的な仕組みづくりと価値創出を行っています。

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