ファンと作り上げた『ことばのパズル もじぴったんアンコール』。愛され続けている秘密とは?

『もじぴったん』シリーズとして、『ことばのパズル もじぴったんアンコール』が12年ぶりに発売!『アイドルマスター』や『塊魂』、『ミスタードリラー』などの人気ゲームとコラボしたステージも話題です。開発チームの方々に、今作の特徴や魅力、届けたい想いを聞きました!

『もじぴったん』とは?

『ことばのパズル もじぴったん』は、「もじブロック」を組み合わせていろいろな言葉を作っていく、知的好奇心をくすぐるパズルゲームです。2008年に発売された『ことばのパズル もじぴったん Wiiデラックス』をベースに作られた『ことばのパズル もじぴったんアンコール』が2020年4月2日、Nintendo Switch™で発売されました!

Nintendo Switch™ならではの機能を使うことで、いつでもどこでも遊べて、Joy-Con™を分けて使うおすそわけ機能で気楽にお友達とプレイできます。

『もじぴったん』シリーズの長年のファンが企画して実現した「アンコール」

今回お話を伺ったのは、こちらのおふたり。

プロデューサー
アジア事業ディビジョン 第2プロダクション 1課
伊藤麻矢

アシスタントプロデューサー
アジア事業ディビジョン 第2プロダクション 1課
石井悠暉

――人気のパズルゲーム『もじぴったん』が、パワーアップして12年ぶりに帰ってきましたね! 今回、『ことばのパズル もじぴったんアンコール』を開発することになった経緯を教えてください。

伊藤:私がPlayStation®2時代の『もじぴったん』が大好きで、激しくやりこんでいたんです。バンダイナムコエンターテインメントに自分が入社するなんて、ぜんぜん考えもしていなかった頃ですね。2018年の12月に発売された『塊魂アンコール』を開発していたとき、「塊魂の次は、もじぴったんしかない!」と真っ先に思い浮かんで、移植を企画しました。

――バンダイナムコエンターテインメントが手がけてきた、かわいいデザイン系のゲームのシリーズは、伊藤さんのような根強いファンが多そうですね。

伊藤:『塊魂』も『もじぴったん』も、ナムコ時代から続くオリジナルの作品で、キャラがかわいかったり、そうかと思えばちょっと尖っていたり……とオリジナリティが際立っています。もちろんゲーム性もよくできていたので、私自身も大ファンというところから入りましたね。

石井:『もじぴったん』は、並んでいる文字を1つずつ中央のマスに置いて言葉を作っていくというシンプルなゲームですが、実はとても奥深いところが魅力ですよね。ステージごとにギミックやクリア条件があり、文字をどうつなげていくか、戦略をいろいろ考える必要もあるので、今もファンが多くいるんだと思います。

――では、今作の『ことばのパズル もじぴったんアンコール』ならではの特徴や魅力、遊び方はどんなところでしょうか?

伊藤:今作はWii®版の『もじぴったん』の移植ですが、Wii®ではできなかった画面タッチでの操作を入れられたことが大きい特徴かなと思っています。

石井:ニンテンドーDS®版の『もじぴったん』が、タッチ機能がすごく好評で、その操作性のよさを今作でも感じてほしいという想いはありましたね。

伊藤:さらに、コンピューターとの対戦、オンラインでの全国のプレイヤーとの対戦に加え、Nintendo Switch™ならではの「おすそわけ」という機能にも対応していて、気軽にその場で家族や友達と対戦できるところも魅力です。

――ルールがわかりやすいので、初めて遊ぶ人でも対戦しやすいですし、初対戦で勝てちゃうケースも多くて盛り上がりますよね。

石井:僕も開発中にテストプレイを兼ねていろいろな人と対戦しましたが、初挑戦の人にボコボコにされることもあって、悔しかったです(笑)。シンプルでわかりやすいゲーム性を、Nintendo Switch™ならではの性能を活かして気軽にほかの人とシェアできるのが、今作で新たに広がった楽しみ方かもしれないですね。

――今作のステージ数は、なんと800以上もあるそうですね! 特に楽しんでほしいポイントはどこですか?

伊藤:800ステージというのは、Wii®版の400ステージに過去作品のステージと、今作オリジナルの新しいステージをプラスして実現させました。

――これまでのファンも、今作から遊び始める方も、どちらも全力で楽しめますね。

伊藤:昔から『もじぴったん』が大好きという方は、移植で世界観が壊れたり、キャラやデザインが変わったりしたら、「こんなの違う!」と、残念に思う人もいると思うんですよね。私もファンだからこそ、『もじぴったん』を好きな方々の気持ちを裏切らないよう、今までの良さは残しつつ、新たな要素を入れることを意識しました。

石井:新ステージの中でもほかのゲームなどとのコラボステージは今作の魅力の1つです。『塊魂』や『ミスタードリラー』『アイドルマスター』など、バンダイナムコエンターテインメントのIPとのコラボだけでなく、弊社の宮河恭夫社長が作ったステージや、『ファミ通』さんとのコラボステージもあるんです。「開発チームだけでなく、いろいろな方向から、もじぴったんアンコールを盛り上げよう!」という想いから、たくさんの方たちの力を借りてコラボステージを追加することができました。

『塊魂』のステージ
『塊魂』コラボステージ。「王子」は『塊魂』の主人公キャラ

――例えば『アイドルマスター』のステージだと、作品に登場するアイドルの名前が使える単語として収録されていたりと、IPの魅力が反映されていておもしろいですね。

石井:最初に『もじぴったん』を開発された方が、ゲーム内の辞書にすごくこだわりを持って作られていて、ナムコのステージでは765ワードのオリジナルワードが登場するというこだわりの仕様で、その意志を受け継ぐ気持ちで、あるステージでのみ使える単語というアソビの部分を加えていきましたね。ファンの方に喜んでいただくことを最優先にして、オリジナリティのある言葉をできる限りたくさん使えるように努力しました。

――普通のステージでは使えないキャラクター名が、コラボステージで反応してくれると、プレイヤーとしてはとてもうれしいです。

石井:発売後にSNSで感想を見たら、「好きなキャラの名前が使えてうれしい!」という感想がたくさん上がっていましたね。開発チームとしても、皆さんが喜んでくださっていることがとても嬉しかったです。

『アイドルマスター』ステージ
『アイドルマスター』コラボステージ。推しの名前を使える幸せに震えます

――使える単語以外の部分で、コラボステージの見どころはありますか?

石井:コラボステージをクリアするとオリジナルアイテムをゲットできます。例えば『アイドルマスター』のステージなら、うちわやハチマキなどですね。ちなみに、今作に収録されているアイテムは600種類以上ありますが、全部揃えたという声もSNSでは見かけます(笑)。

――それはすごいですね! ステージクリアはできても、アイテムを手に入れるための高スコアがなかなか取れないので……。

石井:高スコアを取るためには、なるべく多くの連鎖を作る必要があったりします。こういったやりこみ要素が、ゲームの奥深さにつながっている部分でもありますね。

――先ほどお話に出てきた、社長に作っていただいたステージとは、どういったステージなんでしょうか?

伊藤:「いろいろな方にゲーム制作に携わっていただきたい」というテーマの一環で、半分くらい冗談だったんですけど、「宮河社長にステージを作ってもらえたらうれしいよね!」と盛り上がって。ダメ元でお願いしてみたら、社長が「おもしろいね~」と快く引き受けてくれたんです(笑)。社長からの「バンダイナムコエンターテインメントのロゴを使うのがいいんじゃないか」という意見で会社のロゴを使ったステージができ上がりました。

ロゴステージ

――確かに、社長に作っていただくというアイデアは珍しいかもしれません(笑)。バンダイナムコエンターテインメントの風通しのよさが伝わってくるエピソードだと思います。

伊藤:宮河社長は元々クリエイターで、ゲーム制作にとても理解があるので、ありがたかったですね。

高難易度ステージをおもしろく! 開発者のお気に入りステージ

――おふたりがそれぞれ好きなステージも教えてください。

石井:僕が印象に残っているのは、親子ガメのステージですね。CMにも登場しているステージで、思い出深いです。真ん中にある「ジャンボマス」を使いこなして20連鎖を作らないといけないんですが、20連鎖というかなり難しいステージ、めちゃくちゃ悩みましたね……。

親子ガメステージ
石井さんは「カメがかわいいけど、手こずらされました……」と語ります

伊藤:私が好きなのは、クマのステージです。かわいいけど、調子に乗って「くま」という言葉ばかり作っていくと、クリアできなくなっちゃうんですよ(笑)。あ!「くま」だけ作っても、クリア条件には1コ分しかカウントされない!という……。

クマステージ
「みんなも‟くま”の罠にハマるはず!」と思いながらプレイするのが楽しいという伊藤さん

――『もじぴったん』全般に言えることかもしれませんが、キャラやデザインはかわいいのに解き方が激ムズ、みたいなステージがけっこうありますよね……。

伊藤:そうなんですよ~(苦笑)。でも、かわいくてシンプルだからまたやりたくなるし、1ステージあたり、あまり時間もかからないので、気軽に再チャレンジできます。何も思いつかなくて適当に置いた文字で連鎖しまくることもありますし(笑)。「こんな言葉があるんだ!」という偶然の出合いも含めて、ずっと遊べるゲームじゃないでしょうか。

石井:やり直しボタンもあって、試行錯誤する過程が楽しかったりもしますね。意外な言葉を発見できたときの爽快感や、頭をひねってやっとクリアできたときの達成感もたまらないです。

応募総数11万通! ファンと作り上げた『ことばのパズル もじぴったんアンコール』

――今作のプロモーションで工夫した点や、力を注いだ点はどんなところですか?

伊藤:今回は、ファンの方々にもできるだけ『もじぴったん』に関わっていただきたいというテーマがあり、ゲーム内の辞書に追加したい新語と新しいステージを一般募集したんです。人によっては、何百通も送ってくださった方もいますよ! 採用させていただいた方は全員、スタッフロールに投稿いただいた際のニックネームを掲載させていただきました。

石井:一次募集だけでも、11万通くらい届きましたよね。

伊藤:『もじぴったん』への想いがないと応募してくださらないでしょうから、本当にファンの方が多い作品なんだなと感動しました。

――それだけたくさんの応募があると、選別も大変だったのでは?

伊藤:新語の選別は石井にメインで担当してもらったんですけど……実は、彼は英語がネイティブなんです。

石井:皆さんが送ってくださった言葉を1つずつ、しっかり調べることが当時の日課になっていたので、かなり日本語の勉強ができました(笑)。

伊藤:そんな石井も楽しく遊べるくらい、わかりやすい日本語のパズルゲームなんですよ、『もじぴったん』って(笑)。

石井:印象深かったのは、「タピる」とか「インスタ映え」とか、JK語の応募が多かったことですね。あと、募集期間がラグビーのワールドカップの時期に近かったので、「ワンチーム」「ジャッカル」といったラグビー用語も多くて。まさに今の時代を反映している言葉が多く送られてきたのが、おもしろかったです。応募いただいた方々のセンスある言葉のラインナップを、ユーザーの皆さんにも楽しんでいただけたら、個人的にうれしいです。

――募集した新語以外に、新しいステージのアイデアなどで印象に残っているものはありますか?

石井:このゲームには、いろいろなギミックがついたマスやブロックがあるんですよ。それをうまく使いこなしている応募作が多くて、『もじぴったん』を熟知しているファンの方がたくさんいるんだなと、びっくりしました。例えば、移動マスを利用してハートがくっついたり割れたりする仕掛けのステージはおもしろかったですね。

プロモーションで「QuizKnock」とコラボ! 見応えたっぷりなプレイ動画も

――プロモーションでは、東京大学発の知識集団「QuizKnock(クイズノック)」とのコラボレーションも話題になりました。

石井:もともとQuizKnockさんが大好きで、クイズやゲームが得意な彼らと『もじぴったん』は相性がいいんじゃないかと思い、コラボを提案させていただきました。CMやコラボ動画は、どちらもすごく反響があって、このプロモーションもゲームの成功につながっていると思います。

伊藤: QuizKnockさんとは機会があったらコラボしたいなというのは、私もずっと思っていて。実は今回、『もじぴったん』の辞書にも「くいずのっく」という言葉を収録しているのですが、それはコラボが決まる前の段階でもう収録を決めていたんですよ。

――そうだったんですね! YouTubeのコラボ動画を拝見したら、東大クイズ王・伊沢拓司さんが、あまりゲームをプレイしたことがないと言いつつ、あっという間に強くなって驚きました(笑)。

伊藤:CMや動画撮影のときも感じましたけど、当然ですが(笑)皆さんとっても頭が良く、理解力の速さとか、ことばのチョイスとか、衝撃的でした。

石井:『もじぴったん』の本質を速攻で見抜かれたというか……(笑)。対戦で勝つにはどういう戦略を取ればいいかなど、すぐにその場でひらめいて実践されていましたね。『もじぴったん』の魅力にすごくマッチしている方たちだなと、改めて実感しました。

――QuizKnockのメンバーが、個人で『ことばのパズル もじぴったんアンコール』を遊ばれている動画もアップされていますよね。

伊藤:あれはメンバーの方々が、それぞれ自主的に作ってくださっているんですよ。「僕たちも個人で動画を撮って、アップしてもいいですか?」と連絡があり、「もちろんです! どうぞどうぞ!」と。メンバーの皆さんも、好奇心を持って『もじぴったん』を楽しんでくださっているのは本当に嬉しい限りです。

――QuizKnockをきっかけに、今作を知る方も多そうですね。

石井:ゲーム自体がシンプルで、誰でも遊べるものになっていますから、今まで知らなかったという方にも手に取ってプレイしていただきたいですね。無料体験版もあるので、ぜひ気軽に遊んでみてください!

――今後、『もじぴったんアンコール』のように、『アンコール』シリーズの予定はありますか?

伊藤:次は『ミスタードリラーアンコール』が2020年6月25日に発売されます。当時遊んでいた方々がもう一度プレイして、やっぱりおもしろいゲームだなと思い出し、再びハマってもらえるとうれしいです。その方々の中には今はお子さんがいらっしゃる方もいると思うので、今度は親子で遊んでいただくのも楽しいのでは、と。

『ミスタードリラー』ステージ
アクションパズルゲーム『ミスタードリラーアンコール』の発売も待ち遠しい!

――『塊魂』も『もじぴったん』も『ミスタードリラー』も、すべて直感的にプレイできるので、自分が年を取っても遊べるだろうなと思うと、また数十年後に発売してほしい気持ちもあります。

伊藤:確かにそうですね。じゃあ、親子三代で遊べるよう、数十年後に『アンコール・アンコール』シリーズをやりましょうか(笑)。特に、今作の『もじぴったん』は、収録されている言葉が時代を映す鏡のようなものなので、また最新の言葉をたっぷり入れて作れたらおもしろそうです。『アンコールシリーズ』を、世代を超えて楽しんでほしいですね!

“PlayStation”および“PS2” “PS3” “PS4”は、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの登録商標または商標です。
Wii・ニンテンドーDS・Nintendo Switch・Joy-Conは任天堂の商標登録または商標です。

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【取材後記】
今回の取材では、英語ネイティブの石井さんが、日本語がテーマになっているゲームの辞書作りの一部を担当されたという開発秘話に驚きました。誰でも楽しく遊びながら日本語の勉強ができる『ことばのパズル もじぴったんアンコール』は、親子で遊ぶのにもピッタリですね。私もたくさん遊んで、語彙力を高めたいと思います!

取材・文/矢郷真裕子
フリーランスの編集者・ライター。さまざまなゲームキャラクターの感情に触れて感動しながら成長。