80年代、そして90年代にそれぞれ社会現象となるブームを巻き起こした「ミニ四駆」が、今アプリの世界で新たな盛り上がりを見せています。そのタイトルは『ミニ四駆 超速グランプリ』。スマホゲームとしての楽しさや手軽さを持ちながらも、「ミニ四駆」が持つ楽しさをリアルに追求した内容が人気を集めている本作について、開発チームの皆さんにお話を伺いました!
アプリ誕生のきっかけは「ミニ四駆の“熱気”」
今回お話を伺ったのは、こちらの皆さん。
井出 哲也
第1IP事業ディビジョン 第2プロダクション 2課
八束 洋子
ビジネス戦略室 NEマーケティング部 NEプロモーション1課
吉田 智哉
第1IP事業ディビジョン 第2プロダクション 2課
――まずは、『ミニ四駆 超速グランプリ』開発に至った経緯を教えてください。
井出:今起きている「第三次ミニ四駆ブーム」がきっかけです。バンダイナムコエンターテインメント本社は現在三田にありますが、移転前は“ミニ四駆の聖地”と呼ばれるオーバルガーデン(りんかい線品川シーサイド駅)の近くにあったんです。そのため、大会を目にする機会もあり、ミニ四駆の盛り上がりを肌で感じていました。
―― “かつて流行っていた“と記憶している人が多そうですが、今も現在進行形で盛り上がっているのですね。
井出:版権元様のお取り組みによって、80年代の第一次ブーム、90年代の第二次ブームから遊んでいて、今も続けている現役レーサーの方々がたくさんいる世界なんです。そこで「これは広くユーザーを取り入れられる題材なのではないか」と考え、『ミニ四駆 超速グランプリ』の企画がスタートしました。
――開発チームの方々も、やはり過去のミニ四駆ブームを経験した世代が多いのでしょうか?
井出:はい。企画を立ち上げたメンバーは特にミニ四駆世代の人たちが多いですね。中にはずっとミニ四駆を続けていて、ミニ四駆の世界では顔が知られている人物もいました。社内でも、ミニ四駆を走らせて遊ぶグループがあります。
「リアルホビー再現」がコンセプトの本格的ミニ四駆アプリ
――開発チームにも現役レーサーが多いとは、強力な布陣ですね!『ミニ四駆超速グランプリ』が具体的にどのようなアプリなのかを教えていただけますか?
井出:開発のコンセプトは「リアルホビー再現重視のスマートフォンアプリコンテンツ」です。ミニ四駆で感じられる、改造の自由度が生む「パーツのセッティングの楽しさ」や、仲間内で楽しむ「コミュニティー感」、そしてコースに対するベストセッティングを探って試行錯誤して楽しむ「正解が不透明である点」などを再現して、それを楽しめるアプリにしたいと考えて作っています。
※ミニ四駆を軽量化するために、ボディを削ること
――「ミニ四駆が持つ楽しさを、アプリ上で再現する」というコンセプトなのですね。ターゲットはどのように設定しましたか?
井出:現在もミニ四駆を楽しまれているレーサーさんはもちろんですが、昔のブームを体験したけれど今はやっていない人たちもターゲットにしたいと思いました。そのため“懐かしさ”もアプリの中では重要視しています。
井出:アプリのオープニングムービーもノスタルジーに浸っていただける表現になっています。実際に90年代頃のパーツを使って当時のマシンセッティングを再現して撮影しているんですよ。
――監修としてタミヤ、コロコロアニキがクレジットされています。両者はどのような形で参加されているのでしょうか?
井出:基本的には、パーツの3D化などミニ四駆部分の監修をタミヤさんにお願いし、『ダッシュ!四駆郎』と『爆走兄弟レッツ&ゴー!!』のキャラクターが登場する部分に関してはコロコロアニキさんにチェックしてもらっています。
――2020年にミニ四駆のアプリを作るにあたっても、やはりコミックは切り離せない要素だと考えたのでしょうか?
井出:はい。ミニ四駆ブームの第一世代、第二世代の方のためのフックとしてキャラクターが大きな役割を担うと考えましたし、僕やチームメンバーもマンガやアニメを見て「このマシン欲しいな」と思ったり、コロコロの記事を見ながら「このパーツいいな」と考えたりしていた体験がありましたので、やはり切り離せないですね。
ただし、アプリ自体は実際のミニ四駆としてのおもしろさを追求する「リアルホビー重視」がコンセプトですので、マンガのキャラクターが使う技や、途中でマシンが速くなるような、“ファンタジー”要素は取り入れず、キャラクターが持っているストーリーや、その特質を生かすように調整しています。
ミニ四駆のあの「試行錯誤感」を忠実に再現
――ミニ四駆をアプリ上で再現するためにこだわった点は?
井出:アプリのコンセプトにも関わるところですが、ミニ四駆が持っている“試行錯誤感”の再現ですね。「ガシャ」のシステムがあるゲームはほとんどの場合、「これがあれば、ほとんどのクエストが攻略できる」みたいな強力なアイテムがあるんです。でも、『ミニ四駆 超速グランプリ』に関しては、そうしたことがないように、各パーツのバランス調整を行なっています。本当のミニ四駆でもモーターが速すぎるとコースアウトしてしまうことはありますからね。もちろんアプリ中に“強いパーツ”はありますが、コースによってはまったく使えないこともあります。
――具体的にはどのように調整しているのでしょうか?
井出:新しいパーツを登場させる前にいろんなコースで走らせ、全コースにおいて速いことがないように各パラメーターを調整しています。元のパーツのイメージを損なわず、いかにゲーム内での立ち位置を確保するか。そして、パーツ単体ではなく、パーツの組み合わせの中で強さをいかに表現するかに苦労しました。
――開発陣も試行錯誤しながら調整しているのですね。
井出:それともうひとつ、大会のコースをテスト走行できないようにしているのも“試行錯誤”についてこだわったポイントです。ミニ四駆の大会である「ジャパンカップ」も事前にコースレイアウトは発表されるのですが、実際にそのコースで走らせられるのは本番だけなんです。それはアプリの中でも再現しているので、想像の中でマシンをセッティングしていく楽しさを味わっていただけると思います。
――開発やバランス調整の上で、実際のミニ四駆を組み立てて走らせたりもされているのでしょうか?
井出:もちろんです。みんなで新橋のタミヤ プラモデルファクトリーに行ってマシンを走らせたり、Twitterの公式アカウント系の人たちがやっている「公式ミニ四駆部」コミュニティーのオフ会に参加したり、ジャパンカップに出場したりしています。ゲームとしての調整は入りますが、基本的には“原作”であるミニ四駆やその歴史に沿った内容になっていて、皆さんが当時のブームで体験した内容と変わらないようにしています。また今現在のミニ四駆のトレンドも意識的に追っていて、今後のパーツリリースのスケジュールにも反映させています。
『ミニ四駆 超速グランプリ』開発スタッフのこだわりカスタム
ミニ四駆愛にあふれる開発チームの皆さんにここまでお話を聞いてきて、気になるのは、皆さんが「アプリ内でどんなマシンをカスタムしているのか」。今回は特別に、実際のアプリ画面を見せていただきました!
井出:僕はアプリ内ではスキルよりも見た目重視でマシン作りをしています。コースレコードを更新するよりも、子どものころに使っていたマシンを使って走る楽しさに達成感を覚えますね。第二次ブーム世代なので、レイスティンガーがすごく好きです。
吉田:私も井出さんと年代が近く第二次ブーム世代で、ビークスパイダーが一番好きです。当時も肉抜きして楽しんでいましたが、『ミニ四駆 超速グランプリ』においても、最初に手にしたビークスパイダーを使ってひたすら改造しています。“ボディーの見た目は損なわない改造”が自分の信念で、絶対にウイングはつけません(笑)今後はリアルなミニ四駆作りもはじめようと思っています。
予想の3倍以上!『ミニ四駆 超速グランプリ』の反響と今後について
――『ミニ四駆 超速グランプリ』がリリースされての、反響はいかがでしたか?
井出:リリース当初、まず現役でミニ四駆を楽しまれているレーサーさんのあいだで好評となり、彼らが中心となって盛り上げていただけたのですが、そこから予想外のペースでユーザーさんにプレイしていただき、驚きました。
八束:当初はユーザー認知を広げるために現役レーサー向けのプロモーションを行なっていたのですが、かつてのブーム当時に楽しんでいた方々に一気に広がった印象です。
井出:これは想像なのですが、当時のブームを体験した世代である30〜40代の方々が勤める会社の中で口コミが広がったのではないかと考えています。この世代はほとんどの人がミニ四駆を知っていると言っても過言ではないですからね。1〜2月に関しては予想の3倍以上のユーザーさんがプレイされて、アクセス集中の問題が出てしまったくらいでした。
――当初はコア層に向けてプロモーションしていたけれど、それがライト層にも口コミで伝播したわけですね。
八束:はい。開発のこだわりが強くゲーム性が高い評価を得たこともあり、アプリを配信した当初からSNSでの反応が良かったことが盛り上がりのきっかけだったと思っています。
井出:やはり版権元様が築き上げてきたミニ四駆というIPの強さを感じますね。また、各社様これまでTwitterでの情報発信に力を入れられてきているのですが、そのアカウントで告知にご協力いただけたことも大きいと考えています。
八束:その後、2020年3〜4月ごろには、さらに広くライト層を取り入れるために、ブーム当時に遊んでいた人たちだけでなく、その周りでそれを見ていた方々や興味を持たれていた方々に向けたCM展開を行いました。
――社内でも反響はありましたか?
井出:やはり反響は大きかったですね。実際に社内でもプレイされている方が多く、チームを飛び越えて会話するきっかけになっています。社食でも隣の人たちが『ミニ四駆 超速グランプリ』の話をしている場面に出くわしました(笑)。「ユーザーさんの間でも、こうして会社での会話から広がっているんじゃないかな?」とそのときに感じましたね。やはり長くプレイし続けていただきたいアプリですので、実際にユーザーさんが楽しんでいる姿が直に見られるのはうれしいことです。
――最後に、ユーザーのみなさまに『ミニ四駆 超速グランプリ』をどのように楽しんでいただきたいかを教えてください。
井出:まず、このアプリでしかできないこととしてARがあります。実際のミニ四駆のサイズは1/32スケールなのですが、ARを通せば1/1スケールで表示ができるんです。ユーザーさんの中には駐車場で自分の車の隣に並べて写真を撮られている方もいて、作り手としてすごくありがたいと思いました。
井出:それとコースを自分で組めるのも大きな特徴です。広い家に住んでいるならともかく、自由にコースを組むのはリアルではハードルが高いですからね。ブーム当時も、コースを持っているお金持ちの子の家に遊びにいくみたいな感じでしたし(笑)、そういった“昔できなかったこと”を実現するのもアプリならではの楽しみ方になると思います。
――たしかに、ブーム当時もみんながコースを持っているわけではありませんでしたね(笑)
井出:そうなんですよ(笑)。それとチーム機能もぜひ楽しんで欲しいですね。地元の友達同士で組んでいただいてもいいし、まったく知らないチームに飛び込んで交流を広げるのもいいと思います。チームでのタイムアタックや、毎週更新されるコースなどのコンテンツがあって、弊社運営チーム内でもタイムを競い合ったり、おすすめパーツなどの攻略情報を共有したりという遊び方をしているので、ぜひ楽しんでいただければ。
――『ミニ四駆 超速グランプリ』を通して、再び実際のミニ四駆を触ってみるユーザーさんも多そうですね。
井出:ありがたいことに実際にそういう声も届いていて、ミニ四駆の遊びに寄せたゲーム作りによって“原体験”を呼び起こせられたのかなと思っています。僕自身もミニ四駆が好きですので、アプリで久しぶりに復帰したユーザーがミニ四駆のキットを触ってくれるのはうれしいことです。
【 ミニ四駆 超速グランプリ 】
▶ 公式サイトは こちら
▶ ダウンロード
→App Storeは こちら
→Google Play™は こちら
【取材後記】
「リアルな趣味の楽しさをゲームで再現する」のは多くのゲーム開発者が苦心してきた取り組みだと思いますが、その最新形がここにあると感じます。リアルなミニ四駆でアプリ中と同じカスタムをして比べてみるのも楽しそうだと思いました。
取材・文/坂上春希
1984年生まれのコンテンツプロデューサー。ライター/カメラマンとしても、ガジェット、ビジネス、インテリア、カルチャー、テクノロジー等の分野に渡りメディアや広告の分野で活動中。