『シャニマス』の裏側に迫る!高山Pが答える一問一答インタビュー【Part1】

2018年にスタートした『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(以下、『シャニマス』)が、2021年10月に3.5周年を迎えました。アソビモットでは『シャニマス』3.5周年企画として、読者の皆さまから高山Pへの質問を大募集し、そのなかから厳選した質問を、高山Pに答えてもらいました。多くの質問を頂いたためPart1・Part2の2回に分けてお届けします!

Q: 同じプロデューサーとしてゲーム内の主人公(シャニP)にどんな魅力を感じますか?

高山:シャニPの性格としてはまじめで実直、アイドルと真っすぐにコミュニケーションをとる人物だと思っています。自分の経験にない事態に直面した時に、ちょっと戸惑うことがあっても、それでもアイドルたちと最善の関係を築いていこうとする、好感のもてるキャラクターだな、と。

とはいえ、彼はアイドルの魅力を引き立てるための存在でもあって、ゲームの主役はアイドルたちと、遊んでくださるプロデューサーさん(※1)たち自身です。ですから、基本的には彼の台詞が多い部分でも、アイドルの個性が際立つことを大切にしていて、シャニPの視点だからこそ見えるアイドルたちの魅力が描けるように意識しています。

※1 プロデューサーさん:『アイドルマスター』シリーズのファンのこと

高山P
『アイドルマスター シャイニーカラーズ』制作プロデューサー 高山祐介

Q:高山さん自身は、入社前に抱いていたプロデューサー像とのギャップはありましたか? 同じプロデューサーとしてゲーム内の主人公(シャニP)にどんな魅力を感じますか?

高山:経歴上、バンダイナムコエンターテインメントのみのお話になりますが、いい意味でイメージと違ったのは、「プロデューサーは偉い人間なのではなく、一緒になって盛り上がっていくチームのひとりだ」という雰囲気かもしれません。

いろいろな作品でプロデューサーは、権力をもった偉い人のように描かれることがありますよね(笑)。ただ、実際は開発やセクションの方々と一緒に仕事をしていく、作品作りをサポートする役割のひとつという感覚ですね。

Q:『シャニマス』はどれくらいの規模で、どんな職種の方々で運営されているのでしょうか? また、そのなかでの高山さんの役割について教えてください。

高山:スマートフォンアプリゲームは大体同じような気もしますが、プロジェクトマネージャーと呼ばれる全体の管理をする方や、仕様を決めるディレクター、プランナー、ゲーム内のパラメーターを決めるレベルデザイナーやゲームの仕組みを作るプログラマーなど、さまざまな職種の方々がいます。ほかにも、シナリオチームや録った音声を画に合わせて動かすスクリプター、イラストチーム、UIデザイナーなどいろいろなセクションに分かれています。

ひとつ特徴をあげるとすると、シャイニーカラーズチームはひとつの役割に閉じずに、多分野にたずさわってくださる方が多いかもしれません。ほかのセクションのことを理解できていたほうが相手への共感をもって働けると思いますし、チーム間でコミュニケーションを取りやすい雰囲気もあると思っています。

高山P

Q:個性的なキャラクターたちの性格は、どのように決められているのですか?

高山:一番大切にしている部分は、シリーズを通してもほかのアイドルと被りがなく、それでいて魅力的であることです。

また、強い特徴を出し過ぎてしまうと“キャラクター”として記号化されてしまい、その子ならではのパーソナルな部分が見えづらくなると思っているので、それぞれのアイドルについて「この子たちはどういう生い立ちで、どんな人生を歩んできたのだろう」「どんなふうに今の人格に至ったのだろう」と考えることを大切にしています。

僕ら自身のことを考えても、人はひとりひとりまったく違う人生を送っていて、その違いが性格や細かい所作などにも表われますよね。キャラクターにもそれが言えるんじゃないかと思っています。

Q:シナリオについての質問です。『シャニマス』のシナリオは、過去のアイドルマスター作品のみならず、文学や音楽など幅広い分野のオマージュを感じる瞬間があります。高山さんあるいはシナリオライターさんの経験・趣味が反映されているのでしょうか?

高山:オマージュありきで作品づくりをすることはないですが、アイドルたちを描写するうえで、その魅力を伝えるためのものとして参考にすることもあります。

例えば、幽谷霧子だと、デカルトの『方法序説』をモチーフにしたシナリオ「我・思・君・思」がありますが、あれも霧子の魅力を伝えたい、引き出したい、と考えるなかで出てきたものでした。

幽谷霧子「我・思・君・思」

Q:以前高山Pが言っていた「小宮果穂に制服を着せたかった」という話にこだわりを感じ、また共感して印象に残っていました。ほかにもこだわりがあって入れたものはありますか?

高山:プロデュースイベント『オータム・メイプル・ボックス』のお話ですね。あれは僕がある時ポロッと言ったことをシナリオチームの方が覚えてくださっていて、そこにアートチームの「普段とは違う姿でいることで、果穂の魅力がより伝わる」という判断が加わって実現したものでした。

基本的に僕の個人的な意見をゲームに反映させることはありません。ただ、強いて言うなら、僕はホラー好きなので、エイプリルフールには毎年シナリオチームに「ホラーやりたいですね」と言っています。あまり採用されませんが……(笑)。

小宮果穂

高山:一方で、同じように「アイドルたちの普段とは違う姿を見てほしい」という意味でこだわったものでしたら、ソロ曲はそのひとつだと思います。

運営開始から2年以上お待たせしてしまいましたが、「今ならできる」と決断するきっかけになったのは、風野灯織でした。アイドルたちのソロ曲は最初期から作りたいと思っていて、最適な時期を考えている状態でしたが、アイドルへの理解も進み、そのタイミングが来たことに加えて、ある時「灯織にはこういう曲が合うな」とイメージが湧いたことで、ソロ曲の制作を具体的に考えはじめた部分があったと思います。

風野灯織「スローモーション」

Q:コミュやシナリオの演出はオート機能を使う場合、使わない場合の両方を考慮しているのでしょうか? 使っていても演出のタイミングや間がぴったりハマる感覚があります。

高山:演出に関しては、オートを使う、使わないよりも、「音声としてボイスを聞きながら進めると最もいい形になる」ように工夫しています。どちらかというと、アニメやボイスドラマのような感覚ですね。

というのも、もし僕らが実際にアイドルと会話したとして、アイドルの声が途中で途切れることはないと思うんです。また、会話にはテンポがあって、気まずい瞬間には沈黙が流れたりします。そういった間も含めて楽しんでいただけたらとてもうれしいです。

Q:各衣装の一言コメントはアイドル自身の感想と捉えていますが、あれは身内である主人公(シャニP)に向けてなのか、ゲーム内のファンに向けたものなのか意識されていることはありますか?

高山:衣装のフレーバーテキストや、クリスマスプレゼントについてくるテキストなどは、誰の視点で誰に向けたものかということは決めすぎないようにしています。

アイドルの言葉である場合もありますし、ナレーション的な視点の場合のこともある、という形ですね。厳密に決めてしまうと、どうしても表現の幅が出づらくなってしまうと思っているんです。細かい部分については、シナリオチームにイメージして作ってもらっています。

衣装のフレーバーテキスト

Q:楽曲とシナリオイベントの結びつきについて伺いたいです。歌詞の内容が明らかにシナリオイベントを示唆していることがありますが、どこまで意識しているのでしょうか。

高山:(音楽制作を担当する)バンダイナムコアーツさんやシナリオチームとのやりとりのなかで、「ここを拾おう」という具体的なコミュニケーションをして、制作を進めている訳ではありません。

ただ、「このユニットが次に目指したいのはどこだろう」というユニットの歩みや今後の展開を関係者間で共有しているので、その共有し合った内容を個々で表現することでリンクする部分が出てくるのかな、と思います。あとは、楽曲の打ち合わせ時に、音楽制作チームやシナリオチームが参加しているので、そこで意識のすり合わせをしています。

最初期のユニットだと、アルストロメリアやアンティーカは楽曲がかなり早めにできあがっていたので、そこからユニット自体のイメージを膨らませた部分もありました。アンティーカの「回せ、錆びついた運命の鍵を」やアルストロメリアの「花ざかり、私達の幸福論」のようなユニットのキーワードは、楽曲からお借りしてできあがっていったものだったと思います。

高山P

Q:『シャニマス』の音楽がとても好きです。作詞作曲/編曲をする方々の選び方や基準、ユニットごとのコンセプトの決め方について興味があるので伺いたいです。

高山:おおもとのユニットのコンセプトを決める時にバンダイナムコアーツさんと音楽性についての話し合いを必ずしていて、シャニマスというひとつの作品の中にもさまざまな音楽性があり、それぞれのユニットの音楽性が被らないことを大切にしています。

作曲家や作詞家の方については、僕たちから「こんな雰囲気の音楽だとうれしいです」とご相談をするなかで、バンダイナムコアーツさんが決めてくださることが多いですね。過去に曲を作ってくださっているからこその積み重ねもありますから、一度担当してくださった作家さんに引き続きお願いをしたりもします。

例えば、初期ユニットでは、アルストロメリアの音楽性についていろいろなアイデアが出ました。ポップさや可愛さが感じられるビジュアルが先にあるなかで、イルミネーションスターズの「王道アイドル」感と上手く差別化したいと考えていたところ、かわいらしさも感じるお洒落なポップスを提案いただきました。また、歌詞の面でも「幸福論」のような哲学的なワードが入ることで個性が出て、僕たちも予想できなかったアルストロメリアの魅力を加えてくださったように感じます。

アルストロメリア
アルストロメリア

一方で、アンティーカはゴシック・スチームパンクをモチーフにしており、メタルをベースにストリングスを入れた重たいサウンドにしよう、と最初からイメージしていました。同じくロック寄りのユニットでいうと、ノクチルはメタル寄りのアンティーカやエレクトロ寄りのストレイライトとはまた違うイメージで、4ピースで作られた爽やかで駆け抜けるようなバンドサウンドをイメージしています。

アンティーカ
アンティーカ

Q:ノクチルの曲について質問があります。ほかのユニットは歌詞での自分たちの呼び方が「私」や「私たち」ですが、ノクチルだけ「僕ら」と異なる呼び方になっています。この点についての高山さんなりの答えや知っていることがありましたら教えいただけるとうれしいです!

高山:これは、曲の雰囲気や見せたい方向性と「僕」という言葉がしっくり来た、というのが理由です。ノクチルらしい「真っすぐな爽やかさを感じさせてくれる言葉」というイメージです。

ノクチル
ノクチル

Q:『シャニマス』を遊び続けていくなかで、シナリオやイラストに攻めたものや凝ったものが増えたように感じています。リリース前からこの2点を強みにする構想はあったのでしょうか? それとも続けていくなかで方針を定めたのでしょうか?

高山:「クオリティの高いものを楽しんでいただきたい」とは思っていますが、やはり、イラストやシナリオは「アイドルたちの魅力を表現するためのもの」ですので、攻めたい、凝ったものを作りたいという気持ちは、あまりないかもしれません。

むしろ運営をしていくなかで、少し変わったカードイラストの構図や行間のあるタイプのシナリオを、プロデューサーさんに好意的に受け入れていただけたことが大きかったです。やはり、プロデューサーの方々の反響を受けて表現の幅が広がっていったのかな、と思うんです。

もともと、イルミネーションスターズの最初の3枚のSSRプロデュースアイドル(「【ほわっとスマイル】櫻木真乃」「【柔らかな微笑み】風野灯織」「【金色の元気いっぱいガール】八宮めぐる」)は、アイドルをバンッと正面に出したかなり王道の構図でした。そこからイラストチームを中心にアイドルが魅力的に見える構図を模索し続けてくれた結果、今があるんじゃないかと思っています。

高山P

Part2では、『シャニマス』のCMやプロモーション、SNS企画や、作品のこれからについての質問を聞いています。そちらもお楽しみに!

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取材・文/杉山 仁
フリーのライター/編集者。おとめ座B型。三度の飯よりエンターテインメントが好き。