『アイドルマスター』シリーズでは、現実のタレントと同じように「実在感」を大切にしたアイドルたちの活動が展開されています。今回、サービス開始から4.5周年を迎えた『アイドルマスター シャイニーカラーズ(以下、シャニマス)』の生配信企画「283プロ見守りカメラ」の裏側などを通して、そこにかける工夫や思いを聞きました!
藤原 杏菜
バンダイナムコエンターテインメント
第3IP事業ディビジョン765プロダクション
吉川 純生
バンダイナムコエンターテインメント
第3IP事業ディビジョン765プロダクション
『シャニマス』の運営・制作担当。入社後『アイドルマスター』シリーズのイベントを3年ほど担当したのち、2019年に『アイドルマスター』のゲームチームに異動し、ゲームの運営・制作を担当。
『シャニマス』の「実在感」を支える“作品の深さ”と“プロデューサーさんの熱量”
――『アイドルマスター』シリーズのアイドルたちは次元の壁を超えて活動することも多々ありますが、『シャニマス』チームではその「実在感」についてどのように捉えているのでしょうか?
吉川:『シャニマス』は、高山さん(シャニマスの制作プロデューサー)やシナリオチームの方々を筆頭に“リアルに人を描いていく”ことに重点を置いている作品だと感じています。近年はMR技術が活性化したこともあり、『アイドルマスター』シリーズ全体として実在感をより前面に押し出していますが、『シャニマス』はリアルさを作品の開始当初から大切にしてきたと思っています。
――高山Pも、「アイドルたちを人としてリアルに描く」ということは、『シャニマス』の魅力としてさまざまな場面でお話されていますね。
吉川:シャニマスを担当する前からも、「『シャニマス』はシナリオが良い」とずっと言われていて、“本当にアイドルが感情をもって存在している”“心をもって存在している”ことは、初期からの魅力だったのかなと思っています。
――マーケティングを担当されている藤原さんは、実在感についてどのように考えていますか?
藤原:実在感が生まれる一番の要因は、やはりプロデューサーさん(※『アイドルマスター』シリーズファンの総称)の熱心なプロデュースの成果だと思っています。
アイドルたちがこの世界で実在感を増しているのは、ご自身のプロデュース業を「本業」と呼んでくださるプロデューサーさんの作品との関わり方が大きいと感じます。プロデューサーさんがプロデュースしてくれるからこそ、アイドルたちが私たちと同じ世界で輝いてくれるのかな、と思いますね。
事務所を舞台にした約6時間の生配信企画「283プロ見守りカメラ」の裏側
――10月30日に実施された生配信企画「283プロ見守りカメラ」も、アイドルたちの実在感が楽しめる企画だったと思います。この企画はどういった経緯で生まれたのでしょうか?
吉川:『シャニマス』が4.5周年を迎えるにあたって、これまで大切にしてきた実在感を生かした企画をしたいと話をしていたのがきっかけです。今まで実在感を表現していたテキスト要素ではなく、五感でアイドルたちの存在を感じていただける企画はできないだろうか、という話になりました。
そして、今回は「視覚情報」だけでなく、「音」でも実在感を楽しんでいただこう、という方向性に決まり、YouTubeでの配信企画として283プロの事務所を舞台にした本企画が生まれました。
――吉川さんが所属するゲーム制作チームと、藤原さんが所属するマーケティングチームが一緒に進めていった企画なんですね。
藤原:主にマーケティングチームの若手メンバーが意見を出し合いながら制作を進めてくれました。ゲーム内の「シャイニーの日」(4月12日)の特別なコミュの評判を見ていくなかで、「アイドルたちが長い時間を過ごす事務所の雰囲気が気になる」「普段どんなことをしているのかもっと知りたい」というプロデューサーさんの気持ちに応えられないかと考えていたそうです。
そこで“アイドルと同じ時間を過ごす体験”を伝えるために、リアルタイム性のある生配信の形式を活用しつつ、臨場感のある音を追究した結果、プロデューサーさんに新しいかたちで彼女たちの実在感を感じてもらえる企画になっていったのかなと思います。
――なるほど。生配信形式にしたことはかなり重要なポイントになっていそうですね。
吉川:生配信にした意図としては、「アイドルたちと同じ時間を過ごしてほしい」という本筋の楽しみ方と、裏テーマとして、まだ若干コロナ禍の影響が続くなかで、「プロデューサーさんたちがゆるっとつながれるような場所を作りたい」と考えたからです。
最初は6時間も配信する予定ではなかったんですが、執筆の制作を協力いただいたシナリオチームとマーケティングチームから「よりリアリティを感じていただくために、昼から夜にかけての事務所の空気感を出したい」というお話をいただいて6時間配信を決めました。プロデューサーの皆さまからも好評をいただけてうれしく思っています。
――実際に配信を見ていても、事務所での1日がとてもリアルに感じられました。細かい部分で、実在感を感じてもらうために工夫したことはありますか?
吉川:まずは遠近感の表現ですね。今回の企画の意図をシナリオチームがしっかりと汲み取ってくれて、玄関先で話している声は小さくなっていたり、逆にカメラの近くで話している声は大きくなっていたりと、事務所の広さなどは制作時も確認時もチーム全体で丁寧に意識しました。
また、声優さんの演技にもこだわっていただきました。例えば、和泉 愛依(いずみ めい)のところに黛 冬優子(まゆずみ ふゆこ)から電話がかかってきた時に、気張らない演技を意識していただくなど、普段のアイドルとしての活動では見られないような瞬間を届けられたのではないかと思います。
――事務所での生活は、表のアイドル活動とはまた違いますもんね。配信のなかではカラスの鳴き声が聞こえてくるなど、プライベートな日常感へのこだわりを感じました。
吉川:ありがとうございます。カラスの鳴き声については、『シャニマス』の事務所がある聖蹟桜ヶ丘周辺をモデルにしています。あの周辺って実際にカラスがたくさんいるんです。そういうリアルの部分も意識して、シナリオや音響チームなどいろいろな方々が実在感にこだわって作ってくださいました。ほかにも、夕方時に石焼き芋の声が聞こえてくるなど、細部まで表現しています。
新しいかたちで、アイドルたちをリアルに感じてもらいたい
――もうひとつ、アイドルたちの存在をリアルに感じる要素として、たびたび画面にアイドルたちからの連絡が届くというシーンもありました。これはどんなアイデアで生まれたのですか?
吉川:スマホで視聴する方も多いと思い、実際に自分のスマホで見ている感覚になっていただきたいと考えていました。今回の企画では、プロデューサーさんが仕事に行っているあいだにも遠隔で見られるカメラを事務所に置いていて、その画面を確認する際に、アイドルたちの連絡も時折スマホに表示されていました。
――個人的には、芹沢 あさひ(せりざわ あさひ)からプロデューサーさんに届いた無言の「<写真を添付しました>」「<写真を添付しました>」という連続メッセージに笑ってしまいました(笑)。
吉川:ほかにも、配信終盤のマメ丸と小宮 果穂(こみや かほ)のところもそうですけど、プロデューサーといる時や『放課後クライマックスガールズ』のみんなと話している時とは違った雰囲気でマメ丸に話しかけている様子にほっこりしたりと、いつもと違ったアイドルたちの一面も楽しんでいただけたのかな、と思っています。
また、配信中に起こる出来事を台詞ではなく、音だけで表現した部分もこだわっています。例えば、樋口円香(ひぐち まどか)が水を飲んでいるシーンは音だけで台詞はありません。この辺りは、中途半端に説明するよりも、輪郭だけ描いて見てくださる方の想像力に任せるほうが、リアルに伝わると思いました。
――実施後のプロデューサーさんからの反響はいかがでしたか?
吉川:さまざまなご感想をいただきましたが、攻めた企画だと言っていただいたことに加えて、アイドルたちの普段は見られない表情を見られたり、アイドルの存在を実際に感じられたりしたという声を、想定以上にいただけたのかなと思いました。当日長時間にわたって見て盛り上がってくださったプロデューサーさんたちに感謝の気持ちでいっぱいです。
藤原:今までやったことのない形式の企画だったので、プロデューサーさんに新しい楽しみ方をしていただけたのかな、と思いますし、ゲームでは感じられないような事務所の空気感や、「こんなにカラスがいるんだ」というような新しい発見もしていただいて、より283プロを身近に感じていただける企画になったのかな、と思っています。
――今後、同じような企画の続編も考えているのでしょうか?
吉川:同じようなものになるのかは分かりませんが、プロデューサーさんたちには新しいことでワクワクしていただきたいと思っているので、新しい企画は今後もどんどんやっていきたいと思っています。
後編では、『シャニマス』の実在感を高める企業コラボの裏側や、SNS施策によるファンの方々とのコミュニケーションなどを深堀りしていきます。
『シャニマス』のアイドルたちが現実世界とリンクする!5周年に向けた制作チームの意気込み【後編】
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【編集後記】
アイドルたちの存在をよりリアルに、身近に感じてもらうための工夫が詰まった企画「283プロ見守りカメラ」。ひとりのプロデューサーとして、この企画でアイドルたちの新たな一面を見られたので、今後のさらなる展開が待ち遠しいです。後編では、『シャニマス』のその他の施策を通して、引き続きお2人にアイドルたちの実在感を伝えるためのさまざまな工夫についてお話を聞いていきます!
取材・文/杉山 仁
フリーのライター/編集者。おとめ座B型。三度の飯よりエンターテインメントが好き。
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『シャニマス』のマーケティング担当。入社後欧米向けゲームアプリのマーケティングを経て、2020年に『アイドルマスター』チームに異動し、マーケティングを担当。