今回の【SPOTLIGHT】シリーズでは、バンダナムコエンターテインメントでデータマーケティングを行っている田畑光介さんに焦点を当てます。
「データって有象無象で、それに対する分析・活用手法もたくさんあるのですが、その中から自社に求められているものにピッタリ合う仕組みを見つけられた時は楽しいですね。」
情報を分析して顧客理解や広告出稿に活かすデータマーケティングのお仕事や、転職してきた田畑さんから見たバンダイナムコエンターテインメントの印象、チームメンバーをまとめるうえで意識していることなどについてお話を伺いました。
【SPOTLIGHT】とは?
ファンファーレ編集部が、今気になるバンダイナムコエンターテインメントの社員に話を聞く連載企画。仕事に取り組む社員の素顔に【SPOTLIGHT】を当てて、これまでの経験や思い、本人のキャラクターを紐解きます。本シリーズを通して、これからのエンターテインメントが作る未来を照らします。
分析データに基づく適切なアプローチによって 、広告出稿などのプロモーション展開を支えるのが、データマーケティングの仕事のひとつです。今回はそんなデータマーケティングに携わってきた田畑光介さんにインタビューを行い、仕事内容やチームをまとめるうえでの心掛けなどを伺いました。
田畑 光介
バンダイナムコエンターテインメント
CX戦略室 データマーケティング部 アシスタントマネージャー
プロダクトを適切に世の中へ送り出すための仕組みを作る
――まずはバンダイナムコエンターテインメントにおけるデータマーケティングのお仕事について、簡単に教えてください。
田畑:データを使ってマーケティングサービスの企画・運営などを行う仕事です。簡単に言うと、プロダクトを世界中のファンにどう届けるのが適切なのかを考えていくイメージですね。
――データを活用することで、どのようなメリットが得られるのでしょうか。
田畑:例えば何か企画を考えていく時は、そのターゲット層として考えられているのはどんな人なのかをデータの軸から定量的・定性的に把握していきます。そうすることで、ターゲットとなる人により刺さるタイミング、より届きやすい媒体で広告などを出していけるようになります。
――具体的にはどのようなことをされているのですか?
田畑:例えば、ある自社ゲームがコラボ商品を発売する時には、そのファンが普段購入している商品は何なのかといったデータから、商品開発のために必要な分析を提供しています。
スマートフォンアプリのテレビCMを出稿する際にも、 マーケティングデータをもとに、どの放送局にどの時間帯で広告を出せば目にしてもらいやすいか、といったことを考えています。そういった分析に必要なサービスやツールを探して社内に導入することもデータマーケティングチームの仕事です。
――ターゲット層となるファンをデータの軸から定量的に把握しているんですね。
田畑:定量的な把握はもちろんですが、定性的な分析をすることもあります。具体的には、ファンのインサイト(※1)を得るためのインタビューです。調査会社さまと連携して、どんな質問を用意すれば課題解決に必要な回答が得られるかを検討したり、得られた結果をもとに、プロデューサーと戦略を検討したりしています。
※1 インサイト:対象者の行動や意図、それらの背景にある意識構造を見ぬくことで得られる「隠れた行動原理や動機」のこと
有象無象のデータから手探りで解決策を導き出す
――バンダイナムコエンターテインメントにおけるデータマーケティングに特徴はありますか?
田畑:「ファンにどう喜んでいただくか」「自社のサービスとファンを深く理解しなければ」とメンバーが常に考え続けているのが特徴かなと思います。データから想像するファン像が、インタビューで直接お話を聞いて見えてくる姿と違っている場合もあって、そこはむずかしくもおもしろい部分ですね。
――バンダイナムコエンターテインメントで行うデータマーケティングのどんな部分におもしろさを感じますか?
田畑:僕はインターネット広告代理店からエンタメ業界に転職してきたのですが、自社の実務に根差した仕事に取り組めるのはおもしろいですね。
広告代理店で働いていたころは広く浅く、さまざまな業界に受けがいい仕組みを前提にしていました。でも今は、自社の「メイン事業が何で、ファンはどういう人で……」と縦軸で考えたうえで、各業界で先行している仕組みやツールを積極的に取り入れることができます。
データって有象無象で、それに対する分析・活用手法もたくさんあるのですが、その中から自社に求められているものにピッタリ合う仕組みを見つけられた時は楽しいですね。
例えるならデータやソリューション探しというのは、“山の中から使えそうなデータの原石を見つけて磨く”ことなんです。そういった考えのもと、昨年にはチームのメンバーが「ほうせきくらぶ」という部署のオリジナルキャラクターを考えてくれました。
また、開発の初期段階でインパクトを与えるような調査分析ができるのも、バンダイナムコエンターテインメントで行うデータマーケティングならではのおもしろさかもしれません。
例えば、ある作品で新作ゲームをつくろうという話があったのですが、ファンへの調査や分析を通じて「求められている企画の方向性とは異なる」という示唆が得られたんです。結果として当初の予定とは別の作品で制作することになり、リスクを回避することができました。
このように開発の初期段階で、顧客需要がより見込めるかたちでの制作着手に携われることがあるんです。
――前職でもマーケティングのお仕事をされていたとのことですが、そのノウハウが活きていると感じる部分はありますか?
田畑:前職では海外のマーケティングテクノロジーを調査して国内の市場に導入する、といったことを10年ほどやってきました。何かの仕組みを導入する時に、どんな調べ方をすれば必要な情報やサービスを見つけられるのか、また、見つけたものを社内に導入するための手順や調整には一通り触れてきたので、そのあたりの一定の知見は提供できているかな、と思います。
――逆に、前職に比べてむずかしいと感じるのはどんな部分でしょうか。
田畑:データから見える結果をどこまで考慮して制作チームに意見を伝えるべきか悩むことがあります。データを用いることは、精度を上げる要因にはなっても、必ずしもヒットを約束するものではないんです。だから、僕たちとしても「データ上はこうなっています」という伝え方しかできない時があります。
とはいえ、社内でもっとデータを活用してもらえたら、作品や商品をより多くの人に届けられるはず。そのためには、プロデューサーなどが「ファンに喜んでもらえそう」と感じて企画を考える時に、データを活用することで精度を上げられるな、と思ってもらえるようになることが必要だと思っています。これから徐々にデータマーケティングチームの活動を広げていきたいですね。
――ちなみに、バンダイナムコエンターテインメントのデータマーケティングのお仕事では、マンガやゲームといった「作品」に対する愛情も大事なのでしょうか。
田畑:エンターテインメントの会社なので、マンガやゲームなどに興味をもっている人、弊社の扱うコンテンツが好きな人なら、楽しく働いてもらえると思います。やっぱり、作品に対する愛情は大前提として必要なので、中途採用の面接などでも「どういうコンテンツが好きですか」といったことは聞くようにしています。
ただデータマーケティングに関して言えば、特定の作品に対する熱はバイアスがかかる原因にもなるのではないかと思っています。だからこそ、仕事上ではあえて作品愛とはまた別の視点から冷静に考えて、データを正確に読みとるように意識しています。
僕はアメリカに留学していたころ、交通費を含め毎週1,000円近くかけて週刊少年ジャンプを買っていました……。今でも毎週、購読しています!
武器となる特色やバランス感覚をもった人と一緒に働きたい
――チームのメンバーをまとめていくうえで意識していることはありますか?
田畑:僕たちのチームは中途入社のメンバーが多いこともあり、考え方や強みなどさまざまな個性をもつメンバーがいます。自分にも足りない部分がたくさんあって、人に助けてもらうことが多いので、常に相手の良いところ、得意なことを見るように心掛けています。例えば仕事がうまくいっていなくても、その人の中に優れた技能があればそれを活かせるよう、自分もうまく連携できないかと考えています。
あとは、会話しやすい雰囲気ですかね。忙しくて声をかけづらい状態だと、相談したいことがあっても先送りにしちゃって対応が後手後手になってしまいます。コミュニケーションが取りやすい環境を作り、早めに相談してもらうことで、一緒に善後策を考えていきたいです。
――相談しやすい空気があるのは大事ですね。
田畑:それと、ネガティブな方向で感情的にならないようにも気を付けています。怒られたりネガティブなことを言われたりすると、だんだん相談したくなくなるじゃないですか。僕の尊敬している先輩が、メンバーの自己肯定感の高め方やチームビルディングが非常に上手い方で、そのチーム運営の方法を参考にしています。
――チームにはさまざまなタイプのメンバーがいらっしゃるとのことですが、田畑さんご自身はどのようなタイプだと思われますか?
田畑:僕自身は、相手に合わせていくことが多いですね。それでチームとして動きやすくなるのであれば、自分のスタイルにこだわる必要は特にないのかな、と考えています。ただ、譲れるポイントと譲れないポイントを分けるようにはしています。
――ちなみに、田畑さんの「譲れないポイント」はなんですか?
田畑:僕の場合は家族が優先順位の一番上にあるので、家庭のために仕事をするということです。その点、バンダイナムコエンターテインメントはいろいろな福利厚生や補助制度があるので、子どものいる親にとっては働きやすい会社だなと思います。
転職してきて、社内でファミリーイベントが開催されることにびっくりしました! CMで「Bandai Namco」のマークが出た時に、ここが自分の働いている会社だよと子どもに伝えられるのもうれしい。
――最後に、バンダイナムコエンターテインメントで活躍できそうな人について教えてください。
田畑:データマーケティングチームは、前職からこれだけは譲れないというもの、得意といえる能力が明確にある方はフィットしやすいと思います。また、さまざまなバックグラウンドをもつメンバーがいるので、そういった背景を含めて楽しんでもらえる方は合いやすいはず。
個人的に一緒に働いてみたいのは、バランス感覚がいい人ですね。さまざまな場面であいだに入って調整や相談をしないといけないので、やりたいこととやるべきこと、特定のタイミングでどこまで進めるべきなのかなどの調整が上手くできる人が来てくれると、非常にありがたいです。
僕たちはチームとしてもまだまだ若いので、自ら意思をもって一緒に動いてくれるような方をお待ちしています!
バンダイナムコエンターテインメントで働くことに興味のある方はこちらをご覧ください。
【あなたは未来のエンターテインメントをどのように照らしますか?】
ファンの皆さんが、何を思い、考え、行動しているのかといったことが可視化できれば、より良いかたちでエンターテインメントを届けることができるようになると信じています。そういった仕組みを少しでも下支えできればと思っています。
ファンファーレでは皆さまのご意見、ご感想を募集しております! 編集部にて拝見させていただきました上で、今後の改善のための参考にさせていただきます。記事に寄せられた声を「Fan’s Voice」として紹介させていただく場合もございます!
【取材後記】
データマーケティングという、いちファンとしてコンテンツに触れるぶんにはなかなか注目しないお仕事。コンテンツ自体の数も増え、広告も無数に展開する昨今、ただ公開すれば人の目につくというわけでもないことを考えると、適切なターゲットに届けるための分析が重要であることは想像に難くありません。
有象無象のデータから手探りで正解を探すお仕事が興味深いのはもちろんとして、家族が最優先という言葉が何のためらいもなく出てきたことも印象的でした。職人的に働く人がいる一方で、田畑さんのように家庭のために仕事をするというスタイルの人もいるというのは、職場としても魅力的に思えます。
取材・文/村田征二朗
1989年生まれのライター。しゃれこうべ村田、垂直落下式しゃれこうべライターMなどの名でも活動し、コンシューマータイトルやスマートフォンアプリのゲーム関連記事を執筆。原稿料の8割はプロレス観戦のチケット代に消える。
©Bandai Namco Entertainment Inc.
インターネット広告代理店で10年近く勤務したのち、バンダイナムコエンターテインメントに転職してデータマーケティングチームに加わる。現在は、データを使ったマーケティングサービスの企画・運営などを行っている。