『鉄拳8』を広めるキーパーソンに聞く。関わる全ての人たちの想いを乗せて、世界中のファンに熱狂の渦を巻き起こす【SPOTLIGHT】

今回の【SPOTLIGHT】シリーズでは、『鉄拳8』グローバル展開に携わる、グローバルマーケティング部チーフの明石知佳さんと、『鉄拳8』アシスタントプロデューサーの青山早紀さんのおふたりにスポットを当てます。

「『鉄拳』のおかげで人生が変わりました、と言ってくださったファンの方の顔や、開発やマーケティングのメンバーみんなが一生懸命タイトルを世に送り出そうとしている姿を見ていたので、その方々の想いを届ける意味でも絶対に成功させたい、という気持ちでした。」(青山)

「段階が進めば進むほど関わっていく方々が増えていくのですが、そのみんなに幸せになってほしい、努力が報われてほしいという気持ちが大きかったです。」(明石)

『鉄拳8』発売前には、1年に10回以上も海外出張したという青山さんと明石さん。現在のお仕事や入社の経緯、印象的だった海外イベントや仕事に向かうモチベーションなどについて語っていただきました。

【SPOTLIGHT】とは?
ファンファーレ編集部が、今気になるバンダイナムコエンターテインメントの社員に話を聞く連載企画。仕事に取り組む社員の素顔に【SPOTLIGHT】を当てて、これまでの経験や思い、本人のキャラクターを紐解きます。本シリーズを通して、これからのエンターテインメントが作る未来を照らします。

『鉄拳8』の筋肉を語る記事も公開中!

2024年1月26日に発売を迎えた3D対戦格闘ゲーム『鉄拳8』。本作をグローバルに広め、ファンコミュニティと深く関わる仕事について、グローバルマーケティング部の明石さんと、アシスタントプロデューサーの青山さんにお話を伺いました。

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明石 知佳

バンダイナムコエンターテインメント
グローバルマーケティングディビジョン グローバルマーケティング部 チーフ

アメリカの大学を卒業後、2017年に入社。グローバルマーケティング業務に携わる。『鉄拳8』の立ち上げ時はアシスタントプロデューサーとして本作に関わっていた。『鉄拳8』のメインキャラは今作から登場した麗奈になる予定。

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青山 早紀

バンダイナムコエンターテインメント
第2IP事業ディビジョン第3プロダクション

『鉄拳8』アシスタントプロデューサー。2017年に入社し、家庭用ゲームソフトのプロモーション業務を経て、入社6年目からアシスタントプロデューサーを務める。『鉄拳8』でのメインキャラはシャヒーン。

朝まで飲むほど仲良しなふたりは、「鉄拳」シリーズを世界へ届ける同志

――『鉄拳8』のアシスタントプロデューサーの青山さんと、グローバルマーケティング部の明石さんにお越しいただきました。おふたりは同期入社とのことですが、普段からお付き合いはあるのでしょうか。

明石:かなり、あります(笑)。

青山:苗字が“明石”と“青山”で、50音順で近かったので入社したときはずっと隣にいたんですよ。そこから仲が良くて、今はふたりとも『鉄拳8』を担当しているので、一緒に仕事をしたり、お酒を飲みに行ったりしています。

明石:朝まで飲んでいることも多いですね(笑)。

グローバルマーケティング部チーフ・明石さんとアシスタントプロデューサー・青山さん
(写真左)グローバルマーケティング部チーフ・明石さん、(写真右)アシスタントプロデューサー・青山さん

――プライベートでも付き合いが深いんですね。現在はどのようなお仕事をされていますか?

青山:プロダクションの仕事は一言では表せなくて、私はもう、何でも屋だと思っています。ゲームをひとりでも多くの方に届けるために、できることは全てやります。

世界中に届けるという意味では、eスポーツに関わるのが特徴ですね。前作『鉄拳7』のシェアは海外が95%以上という状況で、世界中にいらっしゃるファンの熱量を拡大するべく、弊社が主催する“鉄拳ワールドツアー”というトーナメントサーキットを開催するなど、1年を通してコミュニティとタイトルを盛り上げています。

2024年2月現在、プロデュース職ではキャリア採用を実施中です。「鉄拳」シリーズを含むIP(※1)をより多くの方に届けていくための仲間を募っています!

※1 IP:Intellectual Property=キャラクターなどの知的財産

――明石さんはいかがですか?

明石:グローバルマーケティング部では、グローバルなコミュニケーションのハブを担っています。

ゲームを世界に届けるとなったときに、実際に販売するのは北米やヨーロッパ、アジアなど各地にある海外拠点の方々です。各担当者に対して、ゲームのコアにあたる面白さやぶらしてはいけない軸を説明しない限り、地域ごとに適したメッセージは届けられないんですよ。なので、このゲームはここが軸なんです、と世界中にいる社員たちに伝えていきます。また、プロモーション施策についても、もっとこう見せたほうがいいのではないか、などと伝え方の整理をしています。

青山:地域によって情報の伝え方が変わってくるんですよね。

明石:例えば、『鉄拳8』では以前よりも、ストーリーや雰囲気に特にこだわってプロモーションを行ったんです。これまでも格闘ゲームだけではないさまざまな要素は押し出していたんですけど、「鉄拳」シリーズってストーリーも人気なんですよ。なので、今回はストーリーをより多くの方に知ってもらえるかたちで押し出して、もっと多くの方々に遊んでもらおうと作戦を練っていました。

実際にやってみて興味深かったのが、アジアではどちらかというと格闘ゲームとしての中身が重視されるんですけど、北米や欧州では映画のようなトレーラーが刺さったこと。そこは市場の違いが出たと思います。

まるで映画の予告編のようなストーリートレーラーが再生数200万回を突破

ファンの「声」を聞きながら試行錯誤を繰り返す

――おふたりがバンダイナムコエンターテインメントに入社しようと思われたきっかけは何ですか?

青山:決め手になったのは面接ですね。いろいろな企業を受けたんですけど、バンダイナムコエンターテインメントの面接は社員の方が活き活きとしていました。

質問もいわゆる就活的なものではなくて、その方が聞きたいことを聞いてくれたんです。印象的だったのが、面接官の方に最近子どもが生まれたからと、「子どもとどんな遊びをしたら仲良くなれると思う?」と聞かれたこと。そんな質問をした企業はほかにひとつもなかったんですよね。

――なんとお答えになったんですか?

青山:ほかの学生はゲームを絡めて答えていたんですけど、私は大学でアウトドアサークルに入っていたので、川下りをしたり無人島に行ったり、一緒に困難を乗り越えるようなアクティビティが楽しめるといいかもしれないですね、と答えたんです。ゲーム全然関係ないですよね(笑)。

でも、面接官の方はすごく前のめりに聞いてくださって、その発想はなかった、と言ってくれたんです。面接の受け答えでいろいろとエンタメについてお話しするのが楽しくて、そういう部分で、この人たちと働きたいな、と思いました。

――明石さんはいかがでしょうか。

明石:アメリカの大学に通っていたころ、海外の方々と自分をつないでくれたのがアニメやゲームだったんです。日本のポップカルチャーが世界に誇れるものなんだと感銘を受けて、就活もアニメやゲーム業界に絞っていました。入社を決めた理由は、一番グローバルに仕事ができそうだと思ったからですね。

明石 知佳

――お仕事でおもしろさを感じるのはどんなところですか?

明石:グローバルマーケティングの仕事では、各国や地域の市場によって大事にしたいことや伝えたいことが違ってくるところがおもしろいですね。日本にもさまざまな人がいると思うんですけど、それが世界という規模に広がると、さらに価値観が多様になります。そのなかでどういうふうに『鉄拳8』として一本の筋を通すか、調整していくのはおもしろいです。

青山:でも、国や地域ごとのマーケティング担当者と意見が衝突することもあるんですよ。「話が通じないんだけど!」と怒っていることも(笑)。皆さんがそれぞれの立場で真剣に考えているからこそ起こることだと思います。

明石:私がやるべきことをロジカルに話しても、向こうはやりたいという意志を熱量高く押してくることがあって。そういうときは意見をぶつけあいますね(笑)。

――青山さんは、プロデュースのどんなところにおもしろさを感じますか?

青山:自分たちが行った施策に対して想いが返ってくるところですね。プレーヤーやファンはどう受け止めているんだろう? と、SNSをこまめにチェックするので、チームでは“エゴサーチの鬼”なんて呼ばれています(笑)。

特に印象的だったのは、“鉄拳ワールドツアー2023”が終わった後に作られた #ThankYouTEKKEN7のハッシュタグです。『鉄拳7』の思い出や、ゲームを通して出会った方への想いをファンが自主的に投稿してくれて、「『鉄拳8』で会いましょう!」みたいな空気が広がっていたんですよ。感謝を言いたいのはこちらのほうなのに、と思いつつ投稿を見て感動していました。

“EVO”は一日限りのお祭り、“鉄拳ワールドツアー”は1年をかけた集大成

――『鉄拳8』のプロモーションでは海外出張されることも多いと伺っていますが、出張までの流れや現地でのお仕事について教えてください。

明石:いくつかパターンはありますが、イベントのために行くことが多いですね。“鉄拳ワールドツアー2023”のファイナルもそうですし、各地でのゲームイベントにプロデューサーが参加するとなれば、段取りを組むのはグローバルマーケティング部の仕事になるので、そこに帯同することもあります。

青山:イベントに必要なデータファイルや資料の準備・確認をしたり、プロデューサーがインタビューを受けるならタイムスケジュールの管理をしたり、といった感じですね。また、大会に行く場合は、どんなファンの方が楽しんでくれているのか、プレーヤーの皆さんがどういった盛り上がり方をしているのかなど、現場を見て勉強しています。

出張中は寝食を忘れるほど、現場やファンと向き合えることにやりがいを感じています!

――海外に行かれるということで、おふたりとも英語は得意なのでしょうか。

青山:私はそんなに喋れないんですけど、コミュニケーションは積極的に取るようにしています。

明石:青山さんはすごいんですよ! 私はわからない言語の場合でも言葉を使うことを重視して会話集などを見ながら話すのですが、青山さんは海外の担当者とお酒を飲みに行ったとき、「イエス」と「ノー」の身ぶり手ぶりだけで1時間くらいコミュニケーションを取っていて。しかも、めちゃくちゃ盛り上がっていました(笑)。

青山:お酒が入っていたというのもあるんですけど(笑)。でも、そういうところで距離が縮まりましたね。相手がスペイン語を喋っていると思ったら、とりあえず知っているスペイン語の数字を言ってみるとか、そういったことが大事なのかなと思います。

話は逸れますけど、私はイベントの現場に向かう際、必ずカメラを持っていくようにしています。特に撮影の役割があるわけではありませんが、私自身、選手たちが熱狂しているシーンを見るのが好きなので、それを撮影してSNSにアップすることで、選手やファンの思い出として残してあげたいなと思ったんです。言語の違いを気にしすぎずコミュニティの中に飛び込んで、ファンと同じような目線で楽しむことを忘れないようにしています。

――特に印象的だった出張、というと何がありますか?

明石:毎回感動するのは“EVO(Evolution Championship Series)”ですね。「鉄拳」シリーズに限らずさまざまな対戦格闘ゲームが登場するeスポーツの大会で、言ってみればオリンピックのような豪華さです。

青山:会場もラスベガスですし、毎年世界中から数千人もの方々が参加するんです。アメリカというのもあり選手や観客の感情の爆発ぶりがすごくて、規模的にも日本では味わえない雰囲気ですね。選手同士が対戦後に言語の壁を越えて仲良くなっている様子なども見られて、グッときます。

――“EVO”と“鉄拳ワールドツアー”では、またおもしろさが違ってくるのでしょうか。

青山:“EVO”は世界中の鉄拳好きたちが集結する1日限りのお祭りのような大会なんですが、“鉄拳ワールドツアー”は1年をかけて決勝大会に進出する選手を決めるので、言うなれば本気中の本気の大会なんです。

明石:“鉄拳ワールドツアー”は予選からずっと見ている大会ということもあって、ストーリー性が感じられるのもいいですよね。この選手とこの選手がここで当たるのか! みたいな。

青山:そうですね。過去の鉄拳ワールドツアーでパキスタンの選手が頭角を現して、世界大会を席巻した時期があるのですが、決勝大会にむけて日本勢と韓国勢が手を組んで、パキスタン戦対策として合同練習をする一幕がありました。

明石:しかもその結果、韓国と日本の選手たちがパキスタンの選手たちを打ち破り、なんと決勝戦で韓国VS日本の対決になったんです! 結果的に優勝したのは日本の選手だったのですが、それまでのストーリーを知っているぶん、とても感動しました。

青山:これはタイで行われた“鉄拳ワールドツアー2019”のファイナルでの話なのですが、私たちもそれぞれ応援している選手がいて、現地のファンと同じようにものすごく盛り上がっていたんですよ。そうしたら観客の一部だと勘違いされて(笑)。

明石:現地のカメラに撮られて、その写真がSNSにアップされたんですよね(笑)。すごくいい写真でした。

明石 知佳

支え合うからこそ走り続けられる

――世界中で作品のファンを増やす、ダイナミックなお仕事。大変な思いをされることもあるのではないですか。

明石:2023年の“EVO”のタイミングでさまざまなトラブルが重なってしまったときは、あらかじめそこに向かって準備してきた方々の情熱や苦労を思ってつらくなることがありました。できることを全部やっていたのに、それでもそんなことになってしまって、自分たちの無力さを痛感しましたね。

そのとき私はバンダイナムコエンターテインメントアメリカが貸し切った会場にいたんですけど、後からやってきた青山さんの顔を見た途端に、涙が止まらなくなってしまったんです。

青山:大号泣していたんですけど、会場はちょうど一番盛り上がっているタイミングで。周りは「ウェ~イ!」って盛り上がっていたんですよね(笑)。でも、いろんな思いを背負って大号泣している同期の姿を見て、みんなそれぞれいろんな思いを背負って仕事をしているんだな、と私も感傷的な気持ちになりました。

――そんなつらい場面もあるなかで、モチベーションとなっていたのはどんなことですか?

青山:「鉄拳」のおかげで人生が変わりました、と言ってくださったファンの方の顔や、開発やマーケティングのメンバーみんなが一生懸命タイトルを世に送り出そうとしている姿を見ていたので、その方々の想いを届ける意味でも絶対に成功させたい、という気持ちでした。発売前までは、『鉄拳8』をひとりでも多くの方に届けることしか考えていませんでしたね。自分がこんなに愛情を持てるタイトルは他にないのではと思っています。

明石:私は『鉄拳8』を立ち上げた当初、すなわち中心チームのメンバーが4人くらいしかいないころからずっと関わっていたんです。最初から関わったタイトルは初めてだったので、最後まで見届けたいという想いがありました。段階が進めば進むほど関わっていく方々が増えていくのですが、そのみんなに幸せになってほしい、努力が報われてほしいという気持ちが大きかったです。

――朝までお酒を飲むほど仲が良いということで、お互いに助けられたような場面もあったのでしょうか。

青山:本当に公私ともにずっと一緒にいて、お酒の場でも仕事の話になって、アツい想いを語って涙を流すようなこともあったんですよ。明石さんがいてくれたからこそ走り続けられたのかな、と思います。

明石:青山さんがいなかったら、どんどん心が弱っていったと思います(笑)。どちらかが落ち込んでいたら、もうひとりが「とりあえず飲みに行こう!」と鼓舞して、ふたりで一緒に落ちてしまうことがなかったんです。それには、本当に助けられたなと。

仕事をどう捉えるかは個人の価値観なので、何が正しいということはないんですけど、下の世代の社員たちにも大変ながらも一生懸命に働くことのおもしろさや、この仕事の楽しさが伝わればいいなと思っています。せっかく仕事をするなら、自分で何かを成し遂げる達成感を味わってほしいんです。それを伝えられる環境をこれから作っていきたいですね。

【あなたは未来のエンターテインメントをどのように照らしますか?】
青山:作り手の考えや想いと、世界中のファンの期待や気持ちを、手探りながらも融合・昇華させて、自分自身も楽しみながら、10年20年先にも通じるエンターテインメントを生み出します!

明石:ひとつの作品には、作り手にも、売り手にも、買い手にも、いろいろな方々の想いがいっぱいいっぱい詰まっていると思います。それぞれの視点で物事を捉えているので、みんなが完全に交わることはないけれど、その距離を縮めて、笑顔や興奮や感謝というかたちでつながることはできると「鉄拳」シリーズのマーケティングを通じて感じてきました。これからも、作品を通じて人びとの距離を縮めて、笑顔でつながる環境をより多くの作品で作っていきたいなと思います!

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【取材後記】
仲の良い同期とあってインタビュー中も朗らかに話されていた青山さんと明石さん。インタビューの数日前までもアメリカに出張に行かれていたらしく、その忙しさが伺えました。おふたりともファンや開発メンバー、販促などのかたちで作品に携わる方々への感謝や敬意が溢れており、作品と真摯に向き合う姿勢が印象的でした。

頻繁に海外出張をされるということは英語スキルが高い、と勝手に思っていたこともあり、青山さんがお酒の場では身ぶり手ぶりでコミュニケーションを成立させていた、という話はおもしろくもあり意外でもありました。言語だけでなく、コミュニケーションを取ろうとする姿勢こそが大事ということですね!

取材・文/村田征二朗
1989年生まれのライター。しゃれこうべ村田、垂直落下式しゃれこうべライターMなどの名でも活動し、コンシューマータイトルやスマートフォンアプリのゲーム関連記事を執筆。原稿料の8割はプロレス観戦のチケット代に消える。

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