なかやまきんに君&バズーカ岡田と見る『鉄拳8』。3D対戦格闘ゲームの「筋肉」を語る!?【後編】

2024年1月26日に発売した3D対戦格闘ゲーム『鉄拳』シリーズの最新作『鉄拳8』。より進化したグラフィックでリアルかつ迫力ある筋肉が描かれている本作を、ともにボディビルダーとして活躍されている、なかやまきんに君さん、バズーカ岡田さんの目線でこだわりを見抜いていただき、制作陣にその実情を語っていただきます。前編では、PVに登場する「風間仁」と「三島一八」、そしてピックアップキャラクターとして「ブライアン」の筋肉に注目。後編ではプロレスラーの「キング」と太極拳の使い手「フェン」の肉体に焦点を当てています。

「鉄拳」シリーズは、業務用ゲーム『鉄拳』を皮切りに、世界中で展開する3D対戦格闘ゲームとして、今年で誕生から30周年を迎えます。最新作『鉄拳8』では、ビジュアルからシステムまでさまざまな進化を見せています。今回はその中でもビジュアル面、それも「筋肉」の表現に焦点を当て本作のこだわりを深掘りしていきます。

鉄拳8のビジュアル

ゲストは前編同様、ボディビルダーやタレントとしても馴染み深いなかやまきんに君さんと、筋肉の有識者としても名高いバズーカ岡田さん。後編ではキングとフェン・ウェイ(以下、「フェン」)のふたりをピックアップし、その肉体造形からキャラクターの深掘りを行っていきます。キングの肉体に並々ならぬ称賛が飛び、フェンはその姿勢の低さから心配の声も……?

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なかやまきんに君

吉本興業養成所大阪校22期生として、2000年にデビュー。2006年から2011年にかけてアメリカ・ロサンゼルスにて筋肉留学を行い、2021年末に吉本興業を退社してからはフリーランスとして活動。タレントとして活躍するとともに、ボディビル大会でも実績を残す。

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岡田 隆(バズーカ岡田)

日本体育大学教授、ウィンゲート大学客員研究員

博士(体育科学)、理学療法士であり、日本体育大学では体育学部の教授を務める。YouTubeなどで筋肉に関する知識を広めるほか、テレビ番組にも筋肉や身体に関する識者として出演。

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池田 幸平(ナカツ)

バンダイナムコスタジオ 第1スタジオ 第1グループ 第2プロダクション

『鉄拳8』ゲームディレクター兼開発プロデューサー。入社以前から“ナカツ”のプレーヤーネームで「鉄拳」シリーズをプレーしており、入社後もシリーズの開発に携わる。

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青山 早紀

バンダイナムコエンターテインメント 第2IP事業ディビジョン 第3プロダクション

『鉄拳8』アシスタントプロデューサー。2017年に入社し、家庭用タイトルのプロモーション業務を経て、入社6年目からアシスタントプロデューサーを務める。

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西村 豪

バンダイナムコスタジオ 第1スタジオ 第1グループ 第2プロダクション

『鉄拳8』リードキャラクターアーティスト。2015年に入社し『鉄拳7』でキャラクターモデラーとして参画。2018年から『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』リードビジュアルアーティスト。『鉄拳8』ではキャラクタービジュアルの制作、品質管理等を務める。

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山岸 剛朗

バンダイナムコスタジオ 技術スタジオ 第2グループ アニメーション部

『鉄拳8』アニメーションディレクター。キックボクシングを習っている。新キャラクター制作時は各流派(格闘技、武道、武術)の練習に参加した上で、モーションキャプチャー撮影のアクター交渉にあたる。

キングの筋肉は、安易に「デカいよ!」だけでは終わらせられない

青山:前編に続き、こちらでピックアップしたキャラクターの肉体を見ていただければと思います。2人目は、シリーズ屈指の人気キャラクター、プロレスで戦う「キング」です。

『鉄拳8』キャラクターのキング
『鉄拳8』キャラクターのキング。出身はメキシコで、身長200センチ・体重147キロ、格闘スタイルはプロレスリング

池田(ナカツ):キングはプロレスラーとして活躍するかたわら、児童養護施設を経営していますプロレスの世界で絶対王者としての知名度をもちながら、より多くの子どもたちを救うためにプロレスの枠にとらわれない新たな興行によって、より多くの資金を集めようとしている、というキャラクターです。

岡田:キングさんはまさに筋肉、といった肉体ですね。全部すごいんですけど、やはり上半身の重量感が格別ですね組技系の選手なのでそういう体形になってくる、というのがちゃんと反映されていますね。

きんに君:正面から見たときの広背筋も素晴らしいですね。広背筋が腰の上くらいから出ていて、すごく位置が低いじゃないですか。

岡田:身体の下のほうから始まる広背筋は、ボディビル的にはローラットといって、ものすごく大きなアドバンテージになりますからね。

きんに君:肩の血管とかもリアルで、若いボディビルダーにはない出方をしていますよね。血管も老化をするので、年を取るとグネグネ具合が変わってくるんですよあと動きとしては、パンチをしたり身体をひねったりしたときの腹筋の収縮がすごくリアルに感じました。

会話するなかやまきんに君とバズーカ岡田

青山:キングがボディビルダーとして大会に出てきたら、どんな掛け声が出てくると思いますか?

岡田:いわゆる有名なフレーズとして、これだけ大きいと「冷蔵庫!」などがあるかもしれません。でも2メートルで140キロ級ですからね。

きんに君:この肉体と彼のバックボーンを考えると、安易に「デカいよ、冷蔵庫!」だけでは終わらせられないですよね。やはり、この仕上がりには特別な言葉を掛けたいなと思います。キングさんには、僕がデビュー1年目の時期にやっていたギャグがちょうど合うかもしれません。

最近はやっていないんですけど、「力強さと優しさの、二世帯住宅!」を贈ります。

キングと一緒にポーズを取るなかやまきんに君

岡田:いや、これはまさにですよ。彼のバックボーンを踏まえ、力強い肉体と子どもたちのために戦う優しさというので、ピッタリですね。ポージングしたら言いたいですね、力強さと優しさの、二世帯住宅かい!って。

青山:素敵すぎます(笑)。

シリーズ初の「筋肉伸縮表現」で、血管が浮き出るタイミングまでこだわる

西村:本作の筋肉描写で特に意識したのは、スケール感とバランスですCGで、粘土のように部位ごとに筋肉をつけていくんですが、全部が全部大きくなってしまうと、誇張しすぎてしまうというか、必要のない「エグみ」が出てしまうんです。

キャラのかっこよさを残しつつ、筋肉が悪目立ちしないように、という全体のスケール感を意識してバランスを取りながら造形は進めていました。

3Dモデルの「筋肉が伸縮する表現」

山岸:さきほど、きんに君さんがキングの腹筋収縮について触れてくださったんですけど、3Dモデルの「筋肉が伸縮する表現というのは、前作の『鉄拳7』まではありませんでした。以前までは腰をねじったり腕を曲げたりしても、ただモデルの向きが変わるだけだったんです。

今作では、モデルの筋肉が伸縮する仕組みを作ってもらって、腕を曲げたらここの筋肉が縮んでここは伸びる、といった細かい調整をしています。

きんに君:ひねり具合までリアルに表現されているということですね。筋肉が悪目立ちしないようにとおっしゃっていましたけど、我々のような筋肉界隈だとやはりそっちを見てしまいますね。でもそこで違和感なく見てしまうくらい、本当にリアルです。

岡田:わかります、映像を見ても技より筋肉に注目しますね。筋収縮や関節運動が全く不自然ではないですし、この動きのタイミングでここの血管が出てくるんだ、というのも絶妙ですよ。

山岸:我々が「スジボリ」と呼んでいる血管が浮き出る表現については、いろいろな映像を参考にしつつ、キャラクターごとに数値を設定しています。タイミングについてはアニメーターが手打ちで「気持ち良い瞬間」を狙って調整しています。

きんに君:自分たち筋肉界隈なら、「仕上がった状態でトレーニングをしたら血管がこういう感じで浮き出るな」というのが実体験としてわかるんですよ。それを参考資料だけで作ったと思うと、驚きですね。

筋肉がパンプアップする表現

格闘スタイルから見抜かれるフェンの屈強な下半身

青山:早くも最後のひとりとなりますが、3人目は「フェン」です。フェンの格闘スタイルは太極拳で、武の高みを目指して、ストイックに修行に励むタイプです。

『鉄拳8』キャラクターのフェン
『鉄拳8』キャラクターのフェン。出身は中国で、身長は190センチ・体重83キロ、格闘スタイルは太極拳

池田(ナカツ):少しキャラクターの補足をすると、フェンには元々師匠がいたんですよ。師匠は心技体の心と技を追求することで伝説の武人“龍神”になれると考えていたんですけど、フェンは力を追求することで龍神になれると考えていて、その食い違いから師匠を自分の手で殺めてしまった、というバックボーンがあります。

青山:フェンは武道家ということで、さきほど見ていただいた元警官のブライアンやプロレスラーのキングとはまた異なった印象になるかと思いますがいかがでしょうか?

岡田:まず、着用している布が多めなので、もっと筋肉を見せてほしいですね。

一同:(笑)。

岡田:ただ、見えている筋肉は少ないんですけど、格闘スタイル的に下半身をすごく鍛えている印象です。そういった点からも、殿筋やハムストリングス、大腿四頭筋の外側広筋に目がいきますね下半身がかなり強くないと、あの低さはキープできないと思うので。

きんに君:見えないのはもったいないですよね。足腰の筋肉がきっとすごいと思うので、もっと見たいです。

『鉄拳8』キャラクターのフェンをみるなかやまきんに君

西村:下半身の強さについては、体格をデザインするうえでも意識しています。フェンは姿勢をかなり低くするポーズが多いので、ほかのキャラクターよりも少し下半身の筋肉を発達させて作っているんです

池田(ナカツ):ちなみに、ふだんのコスチュームだと露出は少ないですが、本作ではキャラクターのコスチュームをカスタマイズできるんです。なので、上半身を脱いだ状態だったり、下半身も短パンにして脚を出したりすることもできます。

岡田:それはいいですね。あと、横アゴに「咬筋」という筋肉があるんですけど、その描かれ方もすごいと思いました。食いしばっているのがちゃんと筋肉で表現されています食いしばりは運動パフォーマンスと関連しますからね。

『鉄拳8』キャラクターのフェン

岡田:ボディビル的な掛け声を贈るならば、やはりお尻やハムストリングスが発達しているので、そういう方に対する称賛する言葉としてよくあるお尻にバタフライ(蝶々がいるよ)!ですかね。あと、さきほどの話を踏まえるともっと筋肉見せてくれ!とかですね。

きんに君:なにより、ふだんどんなトレーニングをしているのかが気になりますね。あれだけ低い姿勢でトレーニングをして、きっとウエイトトレーニングもしていると思うんですけど、そうなると膝への負担が心配になります

一同:(笑)。

『鉄拳8』の制作陣

すべてはパワー! 筋肉をきっかけに踏み込む『鉄拳8』の世界

青山:今回、鉄拳8』キャラクターの筋肉にフォーカスを当てましたが、実際にご覧になっての感想をお聞かせください。

岡田:格闘ゲームの筋肉がここまでリアルになっていることに驚きましたひと目見た瞬間に、現実のボディビルダーも参考にして描いたんだろうなと思ったら、やっぱりそうでしたからね。そのうえで、筋肉をよりゲームらしく表現しつつ、違和感のないものに仕上げていて、その絶妙な塩梅に感動しました。

きんに君:僕も『鉄拳8』のすごい筋肉を見てモチベーションが上がったのが半分、落ち込んだのが半分ですね。これはリアルな感想で、この肉体はすごいなというので「よし、がんばるぞ!」となる反面、自分の身体を見たときに細さが気になってしまうんです。トレーニングが楽しみでもありつつ、自分はまだまだだな、と思ってしまいますね。

岡田:ボディビルダーだと、自分の弱点部位を見てしまうんですよ。私の場合、上腕筋がすごくていいなと思いましたね。自分もあんな風にセパレートさせたいです。それくらいリアルでした。

バズーカ岡田となかやまきんに君

西村:そう言っていただけると、とても光栄です。今回、我々としてもこだわって制作した筋肉をこのようにフィーチャーしていただいて、非常にありがたかったです。おふたりのお話を聞けて勉強になりましたし、自分ももっと人体について勉強したいなと思いました。

池田(ナカツ):『鉄拳8』はスペシャルスタイルという操作方法を使えばシリーズに触れたことがない方でも気軽に壮快な空中コンボや駆け引きを楽しめるようになっていますし、キャラクターカスタマイズで肌を露出するような組み合わせにすることで肉体造形の鑑賞もできて楽しめます。

今後は運営でフォトモードを搭載して、より間近で筋肉を見たり写真を撮ったりもできるようにすることも考えています。「鉄拳8」はPlayStation®5、Xbox Series X|S、Steam®で発売中で、無料体験版もあるので、この対談を見て遊んでみたい、筋肉をよく観察してみたいと思った方はぜひ手に取って遊んでいただけるとうれしいです

なかやまきんに君とバズーカ岡田と『鉄拳8』制作陣

前編では、プロモーション映像に登場する風間仁と三島一八、そしてピックアップされたブライアンの筋肉について語っています!

【取材後記】
前編に続きボディロッキンで激ヤバな視点からのコメントが続出した後編。格闘ゲームのキャラクターを見て膝を心配する、という展開はなかなかにレアだったのではないかと思います。前編でも肌のドライさに注目するというのに驚かされましたが、血管の浮き出すタイミングのリアルさに気付くという観察眼にも衝撃を受けました(そしてその目にもリアルに映る作り込み!)。

プロレスを好きな身としては、リアルのプロレスでもここ数年で見かける機会が増えた印象のある、パワーボムの体勢から両膝を相手の背中に突き刺すバックブリーカー(『鉄拳8』内での技名は“スパインクラッカー”)がキングの技として収録されているのがアツいところ! 好きなスポーツや格闘技がある方は技のチョイスに注目するのも楽しいかもしれません。

村田征二朗
1989年生まれのライター。しゃれこうべ村田、垂直落下式しゃれこうべライターMなどの名でも活動し、コンシューマータイトルやスマートフォンアプリのインタビューや攻略記事を執筆。原稿料の8割はプロレス観戦のチケット代に消える。

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