ファンの“好き”を増幅させる――バンダイナムコエンターテインメントのマーケティング担当に聞く、IPを扱うマーケティングの醍醐味

IP(Intellectual Property=キャラクターなどの知的財産)を軸に、ネットワークコンテンツ、家庭用ゲーム、ライフエンターテインメントなどさまざまなエンターテインメントを展開するバンダイナムコエンターテインメント。今回は、そんな同社の事業を支えるマーケティングの最前線で活躍する人物にインタビュー。IPビジネスにおけるマーケティング、プロモーション業務のやりがいや難しさについて聞いた。

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許 侑彗(ほ ゆへ)

マーケティング担当

株式会社バンダイナムコエンターテインメント
第1IP事業ディビジョン 第4プロダクション 1課

他社IPを活用したゲームタイトルのマーケティング担当。新卒入社後は、プロダクション(制作)業務を担当、その後異動し現職に従事。

すばらしい作品たちを、プロモーションでがっかりさせたくないという熱い想い

――まずは現在の業務内容について教えてください。

許 侑彗(以下、許)フリー・トゥ・プレイタイトル(基本プレイ無料のゲーム)の、日亜地域のマーケティング・プロモーションを担当しています。バンダイナムコエンターテインメントで扱うタイトルには、版権元さまから作品の使用について許諾をいただいて展開しているIPタイトル(以下、他社IP)と、自社で展開しているIPタイトル(以下、自社IP)があり、私の担当としては他社IPタイトルとなります。

マーケティングにおける戦略立案から、メディアの選定や予算の検討、クリエイティブの制作、施策の実施後の効果測定までを行います。

取り組み自体は年間計画で動くため、毎日何かしらの活動を進めています。その中には、日々のSNSの投稿や大きなキャンペーンの運用まで実に様々です。例えば、TVCMを作ることもあれば、キャラクターのPVも作ります。そのほかにもWEBサイトの構成から決めたり、Web広告のクリエイティブを作ったりすることもあります。色々な制作会社にご協力いただきながら、担当者が中心となって進行します。

許侑彗

――ゲーム制作現場から現在のマーケティングを担当する部署に異動されたとのことですが、ご自身で希望されたキャリアでしょうか?

 はい、新卒入社から4年間プロダクションにてゲーム制作を担当した後に、マーケティングの部署に異動希望を出して、タイミングよく異動が決まりました。

運営中のゲームのメイン担当をしながら、新規のゲームの制作補佐をしていたのですが、そのなかで、たくさんの方に喜んでいただけるゲームを作ることの難しさを痛感しました。

ゲームを一人でも多くの方に届けることで、ファンの喜びに貢献したいと思い、意を決して希望を出しました。

――異動して業務が変わり、はじめは戸惑いなどありませんでしたか?

 私が現在の部署に異動してきて、初めて携わったのが新たにリリースするスマートフォン向けゲームアプリのプロモーションでした。特に、アプリゲームは、事前登録プロモーションや初動の集客が重要だといわれているのでプレッシャーも大きかったのを覚えています。

異動したばかりで何から手をつければよいかわからない状態からスタートしましたが、サポートについてくれた先輩の丁寧な指導や、業務に関する資料がチーム内に共有されていたことで、問題なく業務を進めることができました。

なお、チームで情報を共有しようという意識が高く、展開した施策に関するフィードバックなどを発表する「ノウハウ共有会」も毎月開催しています。

実は、一番最初にプロモーションを担当したのは異動前に制作を担当していたタイトル。なので絶対失敗する訳にはいかなかったんです。

――その他に人材育成に関して、役に立っていると思う取り組みがあれば教えてください。

 広告をはじめ、プロモーションの手法は移り変わりが激しいものですが、そのような状況をキャッチアップするための勉強会が頻繁に行われるのはありがたいです。

メディアや広告代理店などから直接最新情報を共有していただける機会があるのも非常に助かっています。巷に溢れているような情報ではなく、バイアスがかかっていない情報を直にいただけるのは、プロモーション施策の立案にも役立ちます。

――仕事に対してやりがいを感じるのはどのような瞬間ですか。

 正直、キャンペーンの準備をしている最中は、やりがいよりも大変だと感じることのほうが多いです。それでもキャンペーンを行って、お客様の反応を知ってしまうと「またやりたい」と思ってしまいます(笑)

コンテンツが好きな私からみると、すばらしい作品をお借りしていて、皆が好きなキャラクターを押し出していくなかで、ゲームのプロモーションでファンをがっかりさせるなんてできない……という想いもあります。

また、ゲームタイトル単体に限らず、グループ会社と連動したキャンペーンを実施することもあります。ゲームタイトル1つだけではできないような大きなプロジェクトに関わることができるのも、やりがいにつながっていると思っています。

2024年3月現在、バンダイナムコエンターテインメントのマーケティング職ではキャリア採用を募集中です。

――お仕事で苦労したことがあれば教えてください。

 他社IPを扱っているからこその難しさは常に感じています。弊社はIPをお借りしている立場ですので、作品の世界観を毀損してないかを十分に配慮しなければなりません。

作品の世界観を壊すことなく、最大限に活かしたプロモーション施策を実行していくのは、私たちの腕の見せ所でもあります。

許侑彗

最後にモノを言うのは“好き”という気持ち

――バンダイナムコエンターテインメントのマーケティングおよびプロモーション活動をよりよくするためにどのようなことが必要だとお考えですか?

 現在、チームとして課題感をもっているのは業務の標準化です。社内でノウハウや知見を蓄積していくことで、1つの施策の精度を向上させていきたいのと、個人個人の力量に関わらず、誰もが同じレベルでプロモーションを実施できるようになれば、組織としての地力が上がると思います。

その中で、このタイトルではこの施策がよかったです! ではなく、どの要素が揃えば他のタイトルで横展開できるのかを整理できると、よりよくなると思い、取り組んでいます。

また、他社IPをお借りしてビジネスを展開することが特殊なので、私たち自身が視野狭窄に陥っている可能性もあり得ます。ですので、キャリア採用で入社する方には、ぜひフラットな意見をいただきたいですね。

――今後、マーケティング・プロモーション担当として、どのように成長していきたいですか?

 業務の中で何かしらの判断を行う際、時間をかけて不安要素を一つひとつクリアにしていかないと、自信をもって答えが出せないので、即座に判断できるように経験を積み重ねていきたいと思います。

マーケティング担当は、自分が考えた施策がうまくいくか不安なので、5本より7本! というように施策をたくさん用意したいと思ってしまいます。

ただ、根拠と自信をもってこの5本で大丈夫ですと言い切れるようになることを目指したいです。

いずれにせよ、仕事は楽しいので、今後も長く携わりたいと考えています。

許侑彗

――最後にバンダイナムコエンターテインメントへの入社を志している方にメッセージをお願いします。

 弊社のマーケティング、プロモーション活動は、タイトルの規模に対して、担当者1人の裁量が大きいのが特徴です。また、日本が世界に誇るIPに関わることができることも貴重だと思います。

弊社でしか経験できないようなやりがいのある仕事ができるので、ぜひチャレンジしてほしいと思います。

この仕事に携わるのであれば、作品を“好き”という気持ちが大事だと思います。もちろん作品を好きでなくても、仕事はできると思いますし、データでロジックを固める方法もありますが、作品を好きな気持ちは、誰も否定できません。

施策を提案する際に“なんで?”を突き詰めていくと、感覚的な部分に突き当たることもあります。その気持ちがなければ、ファンの気持ちも理解し難いでしょうし、IPでなくとも何か好きなものがある、何かを追いかけている人が向いている仕事だと思います。

バンダイナムコエンターテインメントで働くことに興味のある方は、こちらをご覧ください。

なお、本記事は⽇経クロストレンドに掲載された広告記事の転載となります。

【取材後記】
マーケティング、プロモーションという仕事は、売上げに直結する業務領域であることは間違いありません。しかし、売上や会社の業績以前に「ファンの方を楽しませたい」という気持ちがなければ成立しない仕事なのかもしれません。アイデア次第で大きな成果につなげられることができるのも、この業務の特徴ですが、そもそもファンのことをきちんと理解していなければ優れたアイデアも出てこないからです。「ファンの方の笑顔をみると、それまでの苦労も忘れて、また頑張れるんですよね」と笑う許さんの話を聞いていてそんなことを強く感じました。許さんをはじめ、バンダイナムコエンターテインメントでプロモーションの業務に携わる皆さんには、これからもその気持ちを胸に、様々なアイデアでたくさんのファンの方々を楽しませ続けてもらいたいものです。

取材・文/本間幹
出版社、広告制作会社、編集プロダクションなどで情報誌、フリーペーパーのディレクション、編集、取材、執筆に従事。ビジネス、ライフスタイルなど、多岐に渡るテーマの記事を執筆している。