「学園アイドルマスター」アシスタントPの2人に聞く、作品に込めた熱が100倍になって返ってくる喜びとは?【SPOTLIGHT】

今回の【SPOTLIGHT】シリーズでは、入社5年目にして「学園アイドルマスター」のアシスタントプロデューサーを務める佐藤大地さん、山本亮さんに焦点を当てます。

「自分が熱量を込めた分、プロデューサーさんからそれ以上の熱量で返していただけるのが、アツいコミュニケーションを交わしているようで、すごく楽しいです。」(佐藤)

「自分自身もいちファンとして、『アイドルマスター』シリーズの良さを知っているので、その感覚さえ忘れなければ必ずしも新しさにこだわる必要はないと思います。」(山本)

入社以前から『アイドルマスター』シリーズファンであるお二人に、その出会いからバンダイナムコエンターテインメントに入社したきっかけ、「学園アイドルマスター」との関わり方やそのプロデュースにおけるこだわり、苦労とやりがいなど、多岐に渡ってお話を伺いました。

2024年5月16日にリリースされたスマートフォン向けゲームアプリ「学園アイドルマスター」(以下、「学マス」)。『アイドルマスター』シリーズで初めて学園を舞台にした本作のアシスタントプロデューサーを務める佐藤大地さん、山本亮さんに、『アイドルマスター』シリーズとの出会いから「学マス」のプロデュースにおけるこだわりまでを伺いました。

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佐藤 大地

バンダイナムコエンターテインメント
AE事業部 765プロダクション

『アイドルマスター』シリーズのライブイベント補佐やYouTubeチャンネル「アイドルマスターチャンネル」の立ち上げに携わった後、「学マス」の開発に参加し、アシスタントプロデューサーを務める。お気に入りの楽曲は「Legend Girls!!」。

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山本 亮

バンダイナムコエンターテインメント
AE事業部 765プロダクション

『アイドルマスター』シリーズのゲーム運営に携わったのち、「学マス」開発チームに合流しアシスタントプロデューサーを務める。お気に入りの楽曲は「M@STERPIECE」。

「学マス」アシスタントプロデューサーは、コロナ禍に入社した5年目の同期!

――「学マス」のアシスタントプロデューサーの佐藤さんと山本さんにお越しいただきました。それぞれ、現在はどのようなお仕事をされているのでしょうか?

佐藤:「学マス」のアシスタントプロデューサーとして作品全体を見ています。中でも、僕は音楽面を中心に担当していますね。音楽制作プロデューサーを務めるバンダイナムコスタジオの佐藤貴文さんと一緒に、各アイドルの楽曲について話し合って、打診先の選定などを行います。

「学マス」アシスタントプロデューサー・佐藤さん

山本:佐藤くんが音楽や世界観周りを中心に見ているのに対して、僕はゲーム本体の運営部分を担当しています。開発会社さんと仕様について話し合いながら、ゲームを制作するうえで各部署のチェックに必要な調整などを行います。

「学マス」アシスタントプロデューサー・山本さん

――お二人は同期、かつ入社直後は同じ『アイドルマスター』シリーズに関わっていたそうですが、普段から交流は多かったのでしょうか?

佐藤:僕らはコロナ禍に入社した世代で、新入社員研修の段階からフルリモートだったんです。なので同期同士のつながりは薄かったのですが、たまに一緒に麻雀やゲームをすることはありました。

山本:「学マス」のチームに入ってからは自然と仕事の話をすることも増えましたね。あと、僕が一人暮らしをはじめたという話をしたら、佐藤くんと最寄り駅が同じだったんですよ(笑)。

佐藤:だから今は一緒に仕事をして、一緒に帰っています(笑)。

込めた情熱が100倍になって返ってくる、“プロデューサーさん”とのコミュニケーション

――「学マス」がリリースされるまで、より多くの方に届けるためにどのようなことをされていたのでしょうか?

山本:2024年5月のリリースに向けて毎週生放送を行い、Discordに“プロデューサーさん(※1)”たちが集まれる場も用意して、楽しみ続けられる場所を丁寧に整えました。3月には秋葉原で「初星学園入学願書」というチラシを作って、僕らが直接プロデューサーさんに配るイベントをやりましたね。

たくさんのプロデューサーさんがチラシをもらいに来てくださって、僕らに対して「写真を撮ってください」とか「サインを書いてください」みたいに言ってくださる方もいらっしゃったんですよ。まだゲームも出ていないタイミングなのに、そこまでの熱量で好きになってくださっていることに驚きましたし、身が引き締まりました

※1 プロデューサーさん:『アイドルマスター』シリーズのファンのこと

「初星学園入学願書」配布イベントの様子

――現在のお仕事で、どのような部分におもしろさを感じますか?

山本:プロモーションの施策などで、自分で「これはおもしろいと思ってもらえるはず」と仕込んだことが、ちゃんとプロデューサーさんに伝わった瞬間ですね。

例えば、「学マス」のアイドルがやっているInstagramのアカウントのIDをMVの動画の中に隠しておいたんですよ。そうしたらMV公開から15分くらいで気づかれて(笑)。細部まで作り込んだ仕掛けを楽しんでいただけて、こだわってよかったなと思いました。

佐藤:やはり、こだわりがちゃんと伝わるのは楽しいですね。音楽面だと、「学マス」の楽曲は、「いちアーティストに提供する曲」を目指しています。自分が作中のプロデューサーだったとして、そのアイドルの成長物語をたどったうえでどんな曲を渡すか、と想像力を膨らませて作っているんです。

楽曲作りに関わる際は、楽曲単体で世界観が完成していて、聴いたときにその歌詞の主人公に興味が湧くか、という基準を大切にしていますね。「学マス」ならではの基準で作った楽曲の意図がしっかり伝わって、こちらのこだわりに100倍くらいの考察を返していただけるのがうれしいです。プロデューサーさんの考察を見て「なるほど」と思うこともあるくらいで(笑)。

自分が熱量を込めた分、プロデューサーさんからそれ以上の熱量で返していただけるのが、アツいコミュニケーションを交わしているようで、すごく楽しいです。

『アイドルマスター』シリーズ沼にハマったきっかけは2人ともアニメ版

――お二人がバンダイナムコエンターテインメントに入社されたきっかけも伺えればと思います。

山本:元々バンダイナムコエンターテインメントのゲームが好きで。こんなに楽しいものを作っている会社に入れば、自分も良い作品を作って恩返しができるのではないか、と思ったんです。

当時家庭用ゲームのほうが好きだった自分が珍しくハマったのが『アイドルマスター』シリーズでした。アイドルを好きになったら、ゲーム以外にもグッズやライブ、コラボイベントなど、いろいろな側面で楽しませてくれたんですよね。そのIP(※2)としての在り方にすごく惹かれました。

※2 IP:Intellectual Property=キャラクターなどの知的財産

佐藤:僕は、人生で最初にハマったリズムゲームが『太鼓の達人』だったんです。また、アニメで『アイドルマスター』シリーズを知り、「アイドルマスター ミリオンライブ!」(以下、「ミリオン」)の曲を聴きながら大学受験を乗り切ったこともあり、ダメ元で入社試験を受けてみました。

――今も少し出てきましたが、お二人の『アイドルマスター』シリーズとの出会いについて教えてください。

佐藤:作品との出会いは、中学時代に深夜アニメにハマりはじめてから、美少女アニメのひとつとして知ったことでした。その後リリースされた「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」も触るようになり、ライブもやっているらしいと聞いて、試聴動画を見ているうちにBlu-rayも買いはじめて。

ライブであれだけの人数の観客が一糸乱れぬコールをしている姿を見て、「うわ、楽しいな」って感じたんですよね。それと同時に、「これだけの統率を生み出せるこのコンテンツは何なんだ」とも思いました。そこが『アイドルマスター』シリーズ沼の入り口だったのかもしれません(笑)。

山本:僕も入り口はアニメで、高2の終わりに部活を引退して燃え尽きていたら、友達が「終わったんだろ?」とBlu-rayを手渡してきて(笑)。それで見はじめたら見事にハマりましたね。見終わったのが、ちょうど劇場版「THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!」の最終上映日だったんです。それで劇場に足を運んで、映画館でも泣いて、そこからはどっぷりでした。

受験勉強もあって最初は自分を抑えていたんですけど、受験会場を出て最初にやったことが、Blu-rayを貸してくれた友達と一緒にゲームセンターで『アイドルマスター』シリーズのぬいぐるみを取ることでした(笑)。

大学に入ってからは「THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!2015」でライブデビューをして、そこからは映画館でライブビューイングを観たり深夜バスで地方遠征したりしていました。

アイドルの個性を、時代に合わせて表現する

――「学園アイドルマスター」の楽曲を作るうえで、これまでの『アイドルマスター』シリーズから引き継いでいる部分はありますか?

佐藤:新しいブランドを立ち上げるにあたって、これまで大切にしてきた『アイドルマスター』シリーズの良い部分を守りつつ、新しいことにも挑戦しようと決めていました。だから、少なくとも楽曲に関しては、意識的に引き継ぐ、ということはしていないですね。

以前、『アイドルマスター』シリーズの楽曲を手がけてこられた方にお話を聞く機会があったんです。これまでたどってきた『アイドルマスター』シリーズの楽曲の変遷は、単に新しいものをというより、その時代ごとにアイドルに対して一生懸命取り組んだ結果が積み重なったものだとおっしゃっていて、感銘を受けました。

『アイドルマスター』シリーズとしての統一された要素があるというよりは、「アイドルをどう輝かせるか」を軸にいろいろなことをやっている印象があったので、それを今も続けているつもりです。アイドルごとの魅せたい要素と今の時代性を掛け合わせて、常に最善を模索していきたいと考えています。

――山本さんはゲームを運営していくうえで、どのような点を工夫していますか?

山本:プロデューサーさんの目線に立つことは常に意識しています。ゲームを楽しむ、イベントに行く、グッズを買う、SNSを調べるなど、いちファンの感覚を忘れないように、アンテナを張り続けていますね。

「学マス」ならではの新しさみたいな話も出ましたけど、新規性に引っ張られてプロデューサーさんがおもしろいと思えないものになることは避けたいんです。まずは、おもしろさを大事にしなきゃいけないなと考えています。

自分自身もいちファンとして、『アイドルマスター』シリーズの良さを知っているので、その感覚さえ忘れなければ必ずしも新しさにこだわる必要はないと思います。

――お話を伺っていると、お二人はどこか似ているところも正反対なところもあって、バランスが良い感じがしますね。

山本:普段話していて、方向性や見ているところは違っても、それが逆に噛み合うようなことも多いですね。

佐藤:2人とも、かたちは違えどオタクなので(笑)。

山本:同じ作品を同じように楽しむ部分もあれば違った楽しみ方をする部分もある。パッションで分かり合えるところもある一方で、補完し合えるところもあるので、良いコンビでやれているかなと思います

表に立つプレッシャーと、ファンからの反響で得られるやりがい

――お二人は入社5年目にしてアシスタントプロデューサーを務められていますが、若くしてその立場に立つことの苦労ややりがいについて教えてください。

山本:こういった大きな作品に関わらせてもらっていること自体が、やりがいになりますね。アシスタントプロデューサーという立場で各アイドルに関することを自分で判断して、それを送り届けられることは非常に大きいです。

一方で、実際に「学マス」が世に出て、とても多くの方々から反響をいただいているので、うれしさもありつつ怖さもあります。もちろん僕らは胸を張って送り出せるように判断を下していますが、今のところ制作プロデューサーとして顔を出しているのは小美野さんと佐藤くん、僕の3人だけなんですよね。

ゲームもシナリオも楽曲も僕らだけで作ったものではなくて、制作に関わる方々やクオリティチェック、プロモーションなどの担当者も含め多くの方が関わっているんですよ。そこに対する反響を3人で受け止めないといけないので、「これはすごいことだぞ」と感じています。

佐藤:僕は入社1年目の終わりくらいからずっと開発に携わってきました。だからリリースに至るまでの4年間近く、プロデューサーさんからの反応が見られない状態だったんですよ。

どれだけ仕事に打ち込んでも、「プロデューサーさんの反応が見られるのは3年後です」みたいな感じです。でも、社内からすると楽しそうなことをやっているチームに見えていたんですよね(笑)。

山本:そうだよね。

佐藤:努力や苦労が報われたのは本当に、リリースして一連の反響を見られたときですね。れまで4年間近く関わってきた仕事で、ここまで大きな反響をいただけたので、初めて答え合わせができた感覚でした。

山本くんが「学マス」チームに加わった当初は、少しライバル意識もありました。今はお互いが分からない部分で助け合える、良い関係だと思います。

チームで作った「学マス」の全体像に驚いてもらえるのがうれしい

――開発期間はプロデューサーさんからの反応が見られず苦しかったというお話もありましたが、これまでのお仕事の中で思い出に残っていることはありますか?

山本:リリース前にファンレターが会社に届いたことがあったんですよ。すごく大事に読ませていただいて、今でもPCにデータ化したものを大切に保管しています。つらいことがあったときに見返して、元気をもらっていますね。

佐藤:タイトル発表直後やリリース直後のタイミングに「学マス」に関わったクリエイターの方々と話す機会があったんですけど、プロデューサーさんの感想を受けて、皆さん本当にうれしそうで。長期間一緒に悩みながらやってきたからこそ、分かち合える喜びもひとしおでした。

「学マス」はクリエイターさんたちも含め本当にたくさんの方々の力をお借りして生まれたので、チーム全体の絆がすごく強いんですよ。だから、作品が世に出たときに、「『学マス』ってとんでもないコンテンツだな」みたいにIP全体として褒めてもらえたときが、特にうれしいです。

山本:これからも「学マス」を多くの方に楽しんでいただけるよう、アシスタントプロデューサーとして、チームのみんなと一緒にがんばっていきたいですね。

取材・文/村田征二朗
1989年生まれのライター。しゃれこうべ村田、垂直落下式しゃれこうべライターMなどの名でも活動し、コンシューマータイトルやスマートフォンアプリのゲーム関連記事を執筆。原稿料の8割はプロレス観戦のチケット代に消える。


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©窪岡俊之 THE IDOLM@STER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.
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