人気RPG『テイルズ オブ』の世界観を再現するリアルイベント。作品を愛する人たちの交流の場にしたい(後編)

23年間にわたって愛され続けている人気ロールプレイングゲーム(RPG)作品『テイルズ オブ』シリーズ。シリーズ関連イベントを担当する根岸Pに、世界観を再現しつつ、“リアルさ”にこだわったイベントにするために、実際にどんなことをしているのか聞いてみました!

「作品を愛する人々が繋がれる場所を作るために」。『テイルズ オブ』シリーズのイベントに込められたアイディアとは?

前編では横浜アリーナで開催される年に1度の祭典『テイルズ オブ フェスティバル』の成り立ちや、そこに込めたアイディアについて語ってくれたバンダイナムコエンターテインメント LE事業部 イベント部 プロデュース課の根岸麻衣子さん。
2017年からスタートした舞台作品『テイルズ オブ ザ ステージ』や、今年新たにスタートした旅行型ツアーの第1回『テイルズ オブ ツアー 沖縄編』など、リアルイベントはますます広がりを見せています。
この後編では、人気ゲームシリーズの世界観を現実のイベントに持ってくるための工夫について語っていただきました!

bne_tales_negishi2_01.jpg

「お客様と一緒に作る」感覚を大切に。ゲームの世界観を現実に再現するための工夫

――2017年からはじまった舞台作品『テイルズ オブ ザ ステージ』では特に意識しているかもしれませんが、ゲームの世界観を現実のイベントに持ってくる際、どんな工夫をされていますか?

『テイルズ オブ』 の世界観やキャラクターをなるべく崩さない形にしたいとは思っていますが、たとえば舞台作品の『テイルズ オブ ザ ステージ』(以下『テイステ』)だと、衣装や武器の再現度にかなりこだわっているものの、カラーコンタクトを入れて目の色まで完全再現すると、キャラによってはコスプレ感が強くなって「リアル」な感覚が逆に弱くなってしまうんです。これは髪型もそうですね。そういう意味でも、目は黒目のままにしたり、髪は現実的な長さに寄せたりするなど実際の人とのバランスを取って、“お客様が観たときに”自然に見えるように工夫しています。

『テイルズ オブ フェスティバル』(以下『テイフェス』)のイベントでも、キャストさんによるスキットでは、基本的にはキャラクターとしてその場で演じていただくことをお願いして、作品の世界観を大切にしています。来てくれるお客様が最初にゲームで感じた世界観やキャラクターの魅力は、やっぱり大切にしたいので。もちろん、どんどん新しい挑戦もしていきたいですが、作品とあまりにもかけ離れた要素を持ってきてしまうことについては、慎重に考えなければいけないと思っているんですよ。

bne_tales_negishi2_02.jpg

――なるほど、そのバランスを大切に考えて企画を進めていくのですね! 一方で、イベントがあるからこそ伝えられる魅力もたくさんありそうです。

そうですね。年に一度のお祭り『テイフェス』ではキャラクターの普段とは違った側面が見えることもありますし、舞台となる『テイステ』の場合は長期開催なので、お客様の反応を見て、毎回内容を少しずつ変えています。

たとえば、今年の『テイステ』ではアッシュと六神将の物語を描く中で、プロジェクションマッピングをふんだんに使っています。初日はエンディングでキャラクターを引き立たせるために、リアルキャストさんの顔をエンディングで投影したんですが、『テイステ』はあくまでもゲームの再現度も大事にしているので、締めくくりはゲームエンディングで締めるのがいいかな、とお客様の反応も見つつ演出の見直しも図ってます。

また、舞台はダンスパートや客席も巻き込んだ演出も多くあるので、お客様が参加できるような演出も2日目以降に増やしていきました。
舞台は他のイベントに比べて、お客様との距離感も近いので、お客様からの反応を受けて、一緒に作り上げている感覚が強いです。

『テイルズ オブ』 のファンはシリーズ全体を通して優しく応援し続けてくださる方が多くて、その方々に支えられてここまで来たという感覚がすごくありますし、『テイフェス』も10年かけてお客様が一緒に育ててくれたものだと思っています。ですから、『テイステ』も「お客様と一緒に作っていく」ことを大切にしています。出演されるキャストの方も、『テイルズ オブ』のキャラクター性を再現することをいちばんに考え、各キャラの個性を表現できる俳優さんにご出演いただくことにしました。お客様、俳優のみなさんとともに、世界観のあるステージを一緒に作っていけたと思います。

一番の思い出は、キャストの方々やお客様の作品への愛情を感じた瞬間

bne_tales_negishi2_03.jpg

――そもそも、『テイルズ オブ ザ ステージ』がはじまったきっかけはどんなものだったんですか?

『テイルズ オブ』シリーズの魅力的な世界観やストーリーをゲーム以外で伝える場所を作りたい、という思いは以前からずっとありました。なかなか、ゲームをプレイする時間がない方も増えているので、舞台というコンテンツを通して、『テイルズ オブ』の世界をより多くの方に知ってもらい、認知を広げていければと思っていました。

今回の舞台は、TETSUHARU(増田哲治)さんを演出家として迎え、ダンスの要素が加わりました。演出意図として、『テイルズ オブ』は戦闘システムも高い評価をいただいているシリーズなので、戦闘シーンをダンスや殺陣で表現する形にしたんです。
結果的に、お客様の中でブームになっているヴァン師匠(せんせい)のダンスも、あのキャラクターが躍る、という意外性が好評でしたし、戦闘シーンに焦点が当たったことで普段のイベントよりも、当時ゲームをプレイしていた男性のお客様にも足を運んでいただいて、すごくよかったと思います。こんな風に、ひとつのイベントの中でも、色々なことを工夫して、多様な層に喜んでいただけるよう日々、イベントを企画しています。

bne_tales_negishi2_04.jpg

――根岸さんが『テイルズ オブ』 のイベントで思い出に残っているできごとはなんですか?

イベントにご出演いただいている声優さん、キャストのみなさんの作品に対する愛情深さにはいつも驚かされます。
『テイフェス 』だと、当日朝に行なうスキットのリハーサルで、声優さんから「もっとこういう形にしませんか?」と提案をいただいたりします。イベントをよりよいものにしたいという想いを感じます。
『テイルズ オブ』 シリーズの場合、タイトルによってはゲームが発売されてから数十年経つタイトルもありますが、今でもずっとご自身のキャラクターを愛してくれるキャストの方が多いんです。「色んな方に愛されているからこそ、このイベントが実現するんだな」と実感しました。

「タイトルを越えて人々が集まる、“交流の場”を作りたい」。根岸Pが『テイルズ オブ』 のイベントに込めた想い

――『テイルズ オブ フェスティバル』や『テイルズ オブ ザ ステージ』のような場所は、『テイルズ オブ』 シリーズを好きな方々にとってどんな場所になっていると感じていますか?

たとえば『テイフェス』では、会場に来たときに、お客様の間で「久しぶり!」というやりとりがあったりするんですね。そんな風に、普段は離れた場所に暮らしている方々が、1年に一度集まって交流を深めるような場所になってきていると感じます。

新作タイトルが毎年出るわけではないわけですから、新作発表の場としてのイベントではなく、『テイルズ オブ』 の魅力をみなさんで共有できる場所と思ってもらえていたら嬉しいですね。グッズもそうで、みなさん推しキャラのグッズをたくさん持って会場に集まってくださって。そこから「このキャラ、私も好きなんです!」という会話が生まれています。そんな風に、これまでの様々な『テイルズ オブ』 作品の垣根を越えて、色んな方が集まれる場所を作ることができたら嬉しいと思っているんです。

『テイフェス』では、出演者の方々に関連したグッズを販売するので、旧作タイトルのキャラクターの新商品も展開できる貴重な場になっています。作品を長く愛していただいている方々にも当時の作品のグッズが手に入る場所になり、ずっと作品を愛してもらうきっかけになれていると嬉しいですね。

bne_tales_negishi2_05.jpg

もちろん、『テイフェス』 で自分がプレイしたことのない作品に興味を持ってくれる方も多いですし、お客様自身が「この作品もやってみて! 面白いよ」と自分が好きなタイトルをオススメし合ってくれたりもしています。それはリアルなイベントでこそ生まれる広がりだと思うので、そんな場所をこれからもたくさん増やしていきたいと思っています。

沖縄ツアー のときには、こちらでお客様をランダムにチーム分けをさせていただいてBBQを開催しました。その時にお客様から「ご飯を食べながら好きな作品について話すことができて幸せでした」と感想をいただいて、とても嬉しかったです。

――『テイルズ オブ』 シリーズの様々な作品や、様々な人々を繋ぐ場所になっているんですね。

『テイルズ オブ』シリーズのイベントを通して、ファン同士の交流の場をこれからも広げていきたいですし、新しいイベントにも挑戦していきたいです。

今年は「テイルズ オブ ヴェスペリア」が10周年ということもあり、初のタイトル単独イベントを「テイルズ オブ ヴェスペリア」で開催し、『テイフェス』ではできない、固有タイトルの世界観の掘り下げを実現するイベントにしました。
キャストのみなさんに作中の名シーンを生で演じてもらう朗読劇パートの演出や、『テイフェス』でもおなじみのバラエティスキットも用意したり、当時の開発担当の方を迎えた、キャスト陣との開発当時の振り返りトークや、今だから言える秘話のパートがあったり、単独イベントでしかできない企画も入れ込みました。
来年以降も別のタイトルでも続けていきたいですね。

こんな風にイベントごとに特色を付けて、さまざまな客層の方が楽しめるイベントをどんどん発信していきたいです。
イベントはお客様の反応がダイレクトに返ってくる場所なので、「こういう企画を入れたら喜んでいただけるかな?」と想像しながら、これからもたくさんの人が笑顔になれて、ファン同士が交流できる場所を提供していきたいと思っています。

テイルズ オブ フェスティバル2018 についてはこちら ≫≫≫

テイルズ オブ ザ ステージについてはこちら ≫≫≫

『テイルズ オブ オーケストラコンサート 2018』も10月開催 ≫≫≫

©藤島康介 ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
©いのまたむつみ ©藤島康介 © BANDAI NAMCO Entertainment Inc.

【取材後記(後編を終えて)】
根岸さんのお話を聞いて何よりも印象的だったのは、1995年のシリーズ第1作以降23年の間に数多くのタイトルが生まれてきたシリーズだからこそ、「それぞれの作品が好きな人々を繋ぐ場所を作りたい」ということでした。

今年は『テイルズ オブ ヴェスペリア』が10周年を迎える他、「家庭用完全新作」を制作中との情報も解禁となった『テイルズ オブ』シリーズ。『テイルズ オブ フェスティバル』や『テイルズ オブ ザ ステージ』などを筆頭にしたイベントの現場でも、その世界観はまだまだ広がっていきそうです。

人気RPG『テイルズ オブ』 シリーズ の魅力をリアルな場所へ!イベント担当・根岸Pの想い(前編)≫≫≫

取材・文/杉山 仁
フリーのライター/編集者。おとめ座B型。三度の飯よりエンターテインメントが好き。