コンビニエンスストアや書店で話題のハズレなしのキャラクターくじ『一番くじ』が、2022年5月20日から一部の『スシロー』店舗で、2022年6月25日から日本全国の店舗で販売開始!くじを引くと魅力的なキャラクターグッズが当たる『一番くじ』を、なぜ『スシロー』で販売することになったのか、スシローとバンダイナムコグループ横断で立ち上げられたプロジェクトチームの担当者にその裏側を聞きました。
人気キャラクターのフィギュアやぬいぐるみ、マグカップなど、くじを引くと魅力的なグッズが当たる『一番くじ』は、発売以来さまざまなIP(※1)とコラボを行い、全国のコンビニエンスストアや書店、ホビーショップなどで親しまれてきました。
※1 IP:Intellectual Property の略で、原作やキャラクターなどの知的財産のことを指します。
そして2022年春、初めて飲食店で『一番くじ』の販売が開始されます。今回タッグを組んだのは、年間およそ1億5700万人が来店し、年間売上業界No.1の回転すしチェーンの『スシロー』! 2022年5月20日から一部店舗で、6月25日から日本全国の店舗で導入され、『スシロー』店舗の客席に設置されたタッチパネルからくじを購入して、商品を受け取れるようになります。
なぜ『一番くじ』×『スシロー』の異色のタッグが実現したのか。背景には、バンダイナムコグループ エンターテインメントユニット(※2) の社内アイデア募集プロジェクト「いいかも!プロジェクト」がありました。本記事ではプロジェクトに関わったバンダイナムコグループ エンターテインメントユニットのメンバーと、『スシロー』を運営するFOOD & LIFE COMPANIESのコミュニケーション企画推進部・松川貴明さんに、タッグの経緯やプロジェクト実現までの裏側を聞きました。
※2 エンターテインメントユニット:バンダイナムコグループの事業ユニットのひとつ。家庭用ゲームの企画・開発・販売や、玩具などの商品企画・開発・製造・販売など幅広く手掛ける。
木村 隆成
バンダイナムコエンターテインメント 経営推進室 コーポレートコミュニケーション部
丸山 友孝
バンダイナムコエンターテインメント 経営推進室 経営企画部
新規事業関連のプロジェクトや、投資先企業との窓口・統合対応(PMI)などを担当。好きなネタは「寒ぶり・えんがわ」。
藤田 寛之
BANDAI SPIRITS ロト・イノベーション事業部
『一番くじ』の営業・プロモーション・『一番くじオンライン』の統括を担当。好きなネタは「大赤貝」。
松川 貴明
スシロー / FOOD&LIFE COMPANIES コミュニケーション企画推進部
主に販売促進・広告宣伝を担当。CMの企画や顧客コミュニケーション周りの企画全般も担う。好きなネタは「〆真さば」。
子ども連れでもゆっくり食事を楽しみたい!日常の課題から生まれた『スシロー』×『一番くじ』のアイデア
――『スシロー』で『一番くじ』を販売することになったきっかけは、本メディア『ファンファーレ』を担当するバンダイナムコエンターテインメントの木村さんのアイデアだと聞いています。このアイデアはどのように思いついたのでしょうか?
木村(バンダイナムコエンターテインメント):家族とよくスシローさんを利用させてもらっていたので、社内アイデア募集プロジェクト「いいかも!プロジェクト」に合わせて、「これはスシローさんと何か新しいことにチャレンジしてみたい!」と思い、アイデアを練りました。
子どもたちは食べ終わるとすぐに「もう帰りたい」と言い出すんです(笑)。でも、親はゆっくりお寿司を味わいたいじゃないですか。そういう時に子どもが楽しく待ってくれるようなサービスがあったらいいなと思っていたんです。そこで、もしスシローさんのお店で一番くじが引けたら、食後の子どもが飽きずにグッズに夢中になってくれるのではと考えました。
実は『スシロー』も『一番くじ』に注目していた
――木村さんご自身も家族で『スシロー』を利用されていて、実体験から生まれた企画だったんですね。その後、『スシロー』にコラボの相談をもちかけたわけですが、松川さんはなぜこの企画に賛同したのでしょうか?
松川(スシロー):実を言うと、スシローでも「一番くじさんとコラボしたい」と意見が出ていて。水面下で準備が進められていたんです。
ちょうど私の妻が2021年の春ごろに「欲しかった一番くじが買えなかった!」と話していまして。その後コンビニオーナーの友達に「一番くじってやっぱり人気なの?」と聞いてみたら、「すごく売れているよ」と話していました。「そんなに人気があるのはすごい! ぜひスシローでもコラボしたい。」と思って準備をしていたタイミングだったので、今回のお話をいただいてすぐに快諾しました。回転すしと一番くじは、親和性が高いと感じています。
「お客さまの体験価値を最大化したい」、お互いの視点から見えてきた共通の強み
――お互いに“相思相愛”だったとは驚きです。提携開始から販売までは10ヶ月間とスピーディに進んだと聞いています。この間、『スシロー』とBANDAI SPIRITSの2社ではどのようなやりとりがあったのでしょうか?
藤田(BANDAI SPIRITS):2021年の夏ごろにスシローさんにお話をさせていただいて、「2021年内にはサービスを開始したい」とお返事をいただきました。スシローさんは新鮮なものを扱う会社なだけあって、なんてスピード感がある企業なんだと驚きました(笑)。
松川:お客さまには来ていただくたびに新しい楽しみを提供していきたいので、どんどん企画を立てて実現させているんです。
藤田:お店の撮影やオペレーション調整など、細々したこともフレキシブルにご対応いただいて感謝しています。スシローさんは、現場主義でアイデアがすぐに管理職に上がっていく、風通しのいい組織だろうと感じています。
――逆に『スシロー』から見て、BANDAI SPIRITSはどのような企業だと感じましたか?
松川:僕らから見ると、BANDAI SPIRITSさんはファンや一番くじというブランドをとても大事にしている企業だと感じました。しっかり版権元様やその他関係先の企業様に確認しながら慎重にものごとを進めている印象です。
藤田:私たちは消費者の目線をとても大切にしています。一番くじについても体験型でエンターテインメント性の高い商品なので、ただの物販ではないと思っているんです。以前お客さまが「一番くじで特賞を引いたら、店員の方が『おめでとうございます』と言ってくれてうれしかった」とSNSに投稿されていました。くじの商品を手に入れる喜びはもちろん、くじを引くプロセス全体の体験価値を上げていきたいと思っています。
一筋縄ではいかなかった!『一番くじ』導入までの道のり
――全国店舗での導入に先がけて、2回の販売テストを行ったと聞きました。『一番くじ』を『スシロー』で販売する上でのハードルはありましたか?
藤田:時間を割いたのは購入の手順でした。これまで一番くじは、コンビニエンスストアや書店の店頭に商品を置かせてもらい、レジでくじを引いて商品を受け取ってもらいました。スシローさんではその手順での導入が難しく、異なるオペレーションが求められました。
これを解決するために、部署内のメンバーでスシローさんに通って、「どのような販売方法だとお客さまに楽しんでいただけるのか」を考えました。部署には約100人のメンバーがいますが、最終的に50通ものアイデアが集まり、くじに気づいてもらう方法やより良い受け渡しの方法を議論したんです。
――結果、どのような販売方法を採用したのでしょうか?
藤田:スシローさんは人気店なので入店時に待ち時間が発生することも多いため、「レジに商品を飾ってくじを引いてもらうのはどうでしょうか」と最初に提案したんです。しかし、店内に常にレジに店員がいるわけではないので、客席のタッチパネルで注文する形にしてほしい」と返答をいただきました。
松川:うちのオペレーションは回転すし業界の中でも特殊で、お客さまにはタッチパネルで注文、セルフレジで支払いをしてもらうため、レジには店員がぼぼいないんです。プロジェクトの初期段階では「商品がすしのレーンに流れるといいな」と考えていたのですが、衛生面を考慮するとキッチン内で商品の保管ができず、なかなか難しい。最終的にレジ横のパントリーに商品を保管して、席でくじを引いてもらう形にまとまりました。
販売テストで見えてきた課題と将来の構想
――2回の販売テストではどのような手応えや課題を感じましたか?
松川:1回目はお客さまに告知をしなかったので、反応があまり良くなかったんですね。そのため、2回目のテストでは一番くじの公式サイトの店舗リストやSNSで告知したところ、反響があり、たしかな手ごたえを掴みました。
藤田:BANDAI SPIRITS側が感じたのは、現状の一番くじの商品はスシローさんで販売するとなると高価格だということです。一番くじは1回700〜800円で販売していますが、スシローさんでは同じ金額でお寿司がたくさん食べられます。
将来的には、スシローさん専用の手頃な値段の商品を作れたらと考えています。いずれは、商品を寿司のレーンで流したいですし、タッチパネルの演出ももっと楽しんでいただけるようにしたい。購入してくださった方の体験価値を上げるため、いろいろと工夫したいですね。
松川:レーンに商品を流す形は、いずれ挑戦していきたいです。
藤田:スシローさん専用の新企画は販売動向を見て、部署でアイデアを固めて順次はじめたいですね。一番くじの新商品開発には約1年かかるので、今はお客さまに認知してもらう時間と考えています。楽しみに待っていてほしいです。
『一番くじ』×『スシロー』異色タッグの発端は、社員から企画アイデアを集める「いいかも!プロジェクト」だった
――『一番くじ』×『スシロー』企画の発端は、バンダイナムコグループ エンターテインメントユニット初の3社共同プロジェクトで大賞に選ばれたことだったと聞きました。
丸山(バンダイナムコエンターテインメント):部門の課題を社員のアイデアで解決しようと始まった取り組みが「いいかも!プロジェクト」です。バンダイナムコエンターテインメント、バンダイ、BANDAI SPIRITSの3社共同で実施し、多くのアイデアが集まっただけでなく、社員のコミュニケーションのきっかけや、事業連携・推進にも寄与した結果となりました。そんな取り組みでアイデア大賞を受賞したのが、木村さん発案の一番くじ×スシローの企画です。
――具体的に「いいかも!プロジェクト」はどのように進められたのでしょうか?
丸山:まず、社員が参加しやすいように、アイデアをパワーポイント1枚にまとめるだけで、気軽に応募できるようにしたんです。平行して、解決したい課題や期待するアイデアを事前に各所にヒアリングして、課題の背景も含めて具体的に説明するようにしました。
また、アイデア応募しなかった社員にも参加してもらえるように、応募された企画に対して、SNSの「いいね」のように「いいかも!」とリアクションを残せるようにしたことも、このプロジェクトを盛り上げることができた要素かなと思います。
毎週プロジェクトに対する社内発信を続けていたこともあり、結果的に3社の全取締役と多くの社員に参加してもらえました。
――結果多数の応募がありましたが、求める効果は得られましたか?
木村:応募者からの所感ですが、社内の交流は活性化したと思います。参加後は「アイデア見ましたよ!」「木村さんらしいアイデアですね」と社内で声をかけてもらうことも多かったですし、普段交流のないメンバーからメッセージをもらうこともありました。応募者同士で「あのアイデアいいね」「お互いに投票しようよ」と交流が生まれることもありましたね。
ほかには、日々自分の企画に「いいかも!」が増えていきますし、実名で3社それぞれの役員から反響ももらえるので、仕事のモチベーションも上がりました。
――多くのアイデアのなかから、なぜ『一番くじ』×『スシロー』の企画が大賞に選ばれたのでしょうか?
藤田:正直に言うとどれも良いアイデアで選定はすごく迷いましたね。木村さんのアイデアはピンポイントで「スシローさんで展開したい」と具体化されていた。場所が明確だったので、その後の動きもイメージしやすく、これが決め手になりました。さらに、このアイデアならより幅広い方に一番くじを楽しんでいただけるきっかけになるだろうと思い、大賞に選びました。
――社内アイデア募集プロジェクトから生まれた企画で、他社も巻き込んで実現させるってなかなか大変なことではないでしょうか?
丸山:社員としては、困っている事業部門の課題解決のためにアイデアを出してくれたので、ここに集まったアイデアは有効に活用したかったですし、できれば商品化していただきたい気持ちでした。そのため、応募テーマ(課題)出しと、アイデアの審査を、商品化まで検討・実現できる事業部門にし、商品化・事業化までの流れがスムーズになるよう意識していました。各社の事務局メンバーと連携できたのも良かったと思います。ただ、こんなに早く商品化されるとは思ってもいなかったので、非常にうれしいですし、参加いただいた社員にも、このニュースを伝えたいと思います。
それぞれが得た成果と、これからの展望
――先ほど藤田さんから将来の構想の話がありましたが、『一番くじ』×『スシロー』のタッグで今後実現していきたい構想はありますか?
松川:回転すしとIPは日本の2大いいとこ取りなので、海外店舗での販売はぜひやりたいですね。ほかには、レーンやタッチパネルの演出でバンダイナムコグループさんのお力を借りられたらと思っています。
回転すしにとって、店舗での楽しい体験価値は重要なものです。回転すし店だからこそのレーンを使ってお客さまにワクワク感を味わっていただきたいと考えております。タッチパネルで映像を楽しめたり、レーンにIPのオブジェを流したり、バンダイナムコグループさんの力を借りて、ワクワクできる店舗体験を生み出していきたいですね。
木村:それはぜひ実現したいですね! 僕もスシローさんはよく利用させていただいておりますが、レーンにお寿司が流れてくる様子が遊園地のパレードみたいで「次は何が来るんだろう?」というワクワク感にすごく近くて。
松川:動くPOPを店舗のレーンに流すとお子さんもすごく喜ぶんですよ。ここ2年はお持ち帰りが増えていますが、スシローは店舗空間を通してお客さまにワクワクドキドキ感を提供していきたい。「美味しい」と喜んでもらうだけでなく、お客さまの体験価値を上げていくために、今後もご協力をお願いできたらと考えています。
――ここまでお話を聞いていると、両社には「お客さまのエンタメ体験を大切にする」文化が共通していますね。お互いにめざすものが似ているので、提携もスムーズに進んだのではないでしょうか。
松川:シンパシーは感じていて、「いいかも!プロジェクト」はスシローでも開催を検討したいと思っています。評価が公開されるので社員のモチベーションアップにつながりますし、部署を超えた多様なアイデアも得られます。
社内の新企画は本社メンバーだけで決めることも多く、アイデアの量が限られてしまいます。店舗スタッフを巻き込みながらさまざまなポジションから意見を吸い上げられるので、とても有用なプロジェクトだと思います。
――今回の提携を通して互いに収穫があったようですね。最後に、『ファンファーレ』の読者に向けたメッセージをお願いします。
松川:一番くじとの提携で確実にお客さまの間口が広がることを期待しています。一番くじは「買いに行くならここの店」と各販売店に固定ファンがついています。これからスシローでの店舗販売が始まりますが、同様にスシローにもファンがついてくれたらうれしいですね。
私たちは「うまさで真っ向勝負」というキャッチコピーを掲げていて、どこよりも味にこだわっています。一番くじをきっかけに店内でドキドキワクワク楽しんでいただけたらと思っていますし、スシローをもっと好きになってもらいたい。これからも驚きやうまくて、楽しい食事体験を提供していきますので、今後の企画にご期待ください。
藤田:「いいかも!プロジェクト」を通して社内のアイデアを実現できたことに手応えを感じています。このプロジェクトがアイデアを実現する機会になり、社員のモチベーションにアップに繋がればこんなにうれしいことはありません。
木村:スシローさんはとあるテレビ番組で経営者の方の品質へのこだわりやお客様への思いを知って大ファンになった企業で、いつかお仕事を一緒にしたいとずっと思っていました。今回、一番くじとのコラボレーションという形でご提案した一枚の企画書が、会社をまたいで実現されることが何よりうれしいです。
私の子どもたちにさっそく店内で試してもらおうと思っていますし、店内を訪れたご家族や友人同士で一番くじを体験いただき、その時の喜びや笑顔が周囲のお客様にも伝播するようなエンターテインメントとしてお届けしたいです。
また、今後も『ファンファーレ』の担当者として、「いいかも!プロジェクト」のような社内外の枠組みを超えて進められているプロジェクトや、会社のさまざまな情報を知っていただけるような記事を発信してまいりますので、ぜひご期待ください!
丸山:バンダイナムコグループのエンターテインメントユニットは、IPを軸に幅広い出口を相互活用し、世界中のファンの熱量を上げることを目指しています。このようなプロジェクトにも主体的に参加できる社員を強みとして、ファンの方々に喜んでいただける商品の提供を行っていきたいと思います。今後も、バンダイナムコグループの総合力・団体戦で、多彩な事業で新しい融合を生み出していきますので、ぜひ楽しみにしていてください。
――『一番くじ』×『スシロー』に続く今後の新商品のリリースにも期待が高まります。本日はありがとうございました!
【編集後記】
今回の取材では、松川さんの「回転すしにとって、うまいはもちろん、『楽しい食事体験』も重要なもの」という発言にハッとしました。思い出してみれば、子どものころはすしが流れてくる様子を見るだけで楽しいものでした。
大人になっても「次のキャンペーンではどんな期間限定メニューが食べられるんだろう?」と頻繁にニュースをチェックしています。そういったドキドキワクワク感は地道な企業努力によって作られているんですね。藤田さんがお話しされていたスシローさん限定の『一番くじ』は個人的に期待大!
また、「いいかも!プロジェクト」をきっかけとして木村さんのアイデアが実現していくスピードに驚きました! 「いいかも!プロジェクト」発のそのほかの企画にも、注目していきたいですね!
取材・文/鈴木 雅矩
1986年生まれのライター。ファミコン時代からゲームを遊び、今も毎日欠かさずコントローラーを握っている。
バンダイナムコエンターテインメントのWebメディア『ファンファーレ』やコーポレートサイトの運用などオウンドメディア全般を担当。好きなネタは「焼とろサーモン・あん肝」。