「アイドルマスター」アニメイヤー開幕!2023年、「アイマス」はアニメに本気?【後編】【アイマスフューチャー連載① 狭間×冨田】

『U149』をトップランナーとし、『ミリアニ』『シャニアニ』とバトンをつないでいく、「アイマス」シリーズアニメイヤー。3作品それぞれのアニメ製作の裏側や製作陣の思いに迫るインタビュー後編では、『ミリアニ』と『シャニアニ』における3Dアニメ製作のこだわりなどを伺いました。

「アイマスフューチャー連載」とは?
2023年以降の「アイドルマスター」シリーズを、アニメ/ゲーム/イベントなどの担当者が語る全3回のインタビュー。第1弾となる今回は、765プロで「アイマス」シリーズアニメ&マーケティング統括を務める狭間和歌子さんと、「アイマス」シリーズアニメプロデューサーを務める冨田功一郎さんが「アイマス」シリーズのアニメ化について語ります。

2025年に迫る「アイドルマスター」シリーズ(以下、「アイマス」)20周年に向けた施策のひとつ――それが「アイマス」アニメイヤー!

「アイマス」のさらなる成長のため、アイドル一人ひとりの魅力をさらに深めていくため、2023年~2024年にかけて「アイマス」シリーズの新作アニメ3作品が放送されます。

インタビュー前編では、「アイマス」アニメイヤーの詳細および、アニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』(以下、『U149』)、『アイドルマスター ミリオンライブ!』(以下、『ミリアニ』)、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(以下、『シャニアニ』)、それぞれにおける製作方式の違いなどを伺いました。

U149』『ミリアニ』『シャニアニ』のキービジュアル
左から順番に、『U149』『ミリアニ』『シャニアニ』のキービジュアル

後編では、ゲームとは異なるアニメならではの魅力や、3Dアニメとして製作される『ミリアニ』&『シャニアニ』のこだわりなどを、お話いただきました。

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狭間 和歌子

バンダイナムコエンターテインメント
「アイドルマスター」シリーズアニメ&マーケティング統括
『ミリオンライブ!』プロデューサー

リリース当初からスマートフォン向けゲームアプリ(以下、ゲームアプリ)『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』のプロデューサーを担当。現在は『ミリオンライブ!』のプロデューサー務めるとともに、「アイマス」シリーズアニメ&マーケティング統括も兼任。

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冨田 功一郎

バンダイナムコエンターテインメント
「アイドルマスター」シリーズアニメプロデューサー

バンダイビジュアル(現・バンダイナムコフィルムワークス)にて、テレビアニメ『ゴッドイーター』や『テイルズ オブ ゼスティリア ザ クロス』などのプロデューサーを経験したのち、バンダイナムコエンターテインメントに転籍。2022年より「アイマス」シリーズアニメ事業のプロデューサーを務める。

『ミリマス』の設定資料はエクセル1ページしかなかった!? 『ミリアニ』実現までの道のり

――『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』(以下、『ミリシタ」)のプロデューサーを長年務めてきた狭間さんとしては、プロデューサーさん(※1)たちに待ち望まれてきた『ミリアニ』を劇場で先行上映することに並々ならぬ思いがあるのではないでしょうか?

※1 プロデューサーさん:「アイマス」シリーズのファンのこと

狭間:「アニマス(アニメ「アイドルマスター」の略)」全体の統括という立場でもある以上、『アイドルマスター ミリオンライブ!』(以下、『ミリマス』)に限ったお話をするのは恐縮ですが、それでもやはり「『ミリマス』で絶対にアニメをやりたい!」という思いをもち続けてきた身として、非常に感慨深いものがあることはたしかです。

『ミリアニ』は、2023年8月18日より、47都道府県、全75館で先行上映を実施します。そこにはアニメ化を待ってくださっていた、すべてのプロデューサーさんへの感謝の気持ちを込めていますし、私自身、可能な限り全国の映画館を回って、皆さまが劇場で「ミリアニ」を見ている姿を見届けたいと密かに考えています。

『ミリマス』の歴史を振り返れば、プロデューサーの皆さんは毎年のようにアニメ化の発表を期待してくださっていたのに、私たちは長いことアニメの進捗ニュースをお届けすることができずにいました。

私たちとしても『ミリマス』のアニメを製作したいと思っていたのですがなかなか実現に至らず、それでもアニメ化実現の際に役立つと信じて、先んじてアイドルたちの(人物像)設定をより深掘りする会議を開催していたこともありました。

……というのも、もともと『ミリマス』の個々のアイドルの設定資料は、実はエクセル1ページに収まる程度しか存在しなかったんです(苦笑)。

 「アイドルマスター」シリーズアニメ&マーケティング統括の狭間さん
「アイドルマスター」シリーズアニメ&マーケティング統括の狭間さん

――『ミリマス』のアイドルたちが、もとをたどればエクセル1ページに沿って描き出されていたとは、驚きです!

狭間:『ミリシタ』を開発する際に、各アイドルの出身地などの設定が追加されましたが、アニメ化の際には、より詳細な設定資料が間違いなく必要になるだろうということで、アイドルひとりごとに数時間にわたる打ち合わせを行いました。

その際にはバンダイナムコスタジオの東義人さん(『ミリシタ』コンテンツディレクター、シナリオ統括)にご協力いただきましたし、脚本家の加藤陽一さん(『ミリアニ』シリーズ構成・脚本)にご参加いただくこともありました。

「この子ってこういう子かな」「この子はこういう私物をもっていそうだよね」など、みんなで話し合いまして……。それぞれのアイドルにまつわるエピソードを思い出しながら人物像を深掘りしていき、それを設定として書き足して理解を深めていきました。

その会議を経て、試行錯誤のなか、麗花、茜、未来のまだ表現しきれていない個性にフォーカスしたコミカルなオリジナルショートアニメにチャレンジしたこともあったんですよ。ゲームとはあまりに異なるテイストのストーリーだったため、キャスト(声優)さんもびっくりされていました。「これまで、こんな設定ありましたっけ!?」と(笑)。

また、『ミリオンライブ!』は演じるキャストさんとアイドルがリンクするような設定があるので、よりアイドルたちや世界観のイメージが膨らむよう、脚本家の加藤さんに『ミリシタ』生配信の台本を書いていただきました。現場に足を運んでいただいたことも、何度もあるんですよ。

『ミリアニ』のキービジュアル
『ミリアニ』のキービジュアル

アニメという“群像劇”が描き、深める、それぞれのブランドの魅力

――インタビュー前編の冒頭で、狭間さんが「ゲームとアニメ、それぞれに良さがある」とおっしゃっていましたが、各々が表現できるアイドルの魅力という点ではどんな違いがあるのでしょうか?

狭間:最大の違いは、ゲームが主に”プロデューサー対アイドル”の物語を表現していくものであるのに対し、アニメは“アイドルたちの群像劇”として表現できることだと思います。

基本的にゲームでは、自身の分身である”プロデューサー”といういち個人の視点でストーリーが展開していきますよね。没入感が高い反面、ワンシーンで描ける登場人物の数にはどうしても限界があります。「この子は、この子と仲が良い」といったような少人数での関係を表現することになりがちです。

一方、アニメでしたら、ストーリー展開や画角の自由度も高まりますので、芸能プロダクションに所属するアイドルという”集団のなかでの個”の側面を表現しやすくなります。大筋のストーリーに対して、一人ひとりがどう動くか……といったように。

またアニメの場合は、”プロデューサー”も登場人物のひとりとして描かれますので、視聴者が“プロデューサー”としてだけでなく、“アイドル”という視点で作品を楽しめる点も違いのひとつです。

例えば、小学生の女の子に”プロデューサーさん”の感覚をもってもらうのは難しいことだと思うのですが、アイドルの気持ちに対してならば共感したり、「自分が同じような立場だったら」と考えたりすることもできると思うんです。結果的に、「アイドルマスター」シリーズのファン層を拡大する大きなきっかけになると考えています。

――『ミリアニ』と『シャニアニ』は、3Dアニメーションであるという点でも注目を集めています。それぞれの映像製作において、こだわったポイントを教えてください。

冨田:『ミリアニ』は白組さま、『シャニアニ』はポリゴン・ピクチュアズさまというアニメ制作会社に手がけていただいています。各ブランドや制作会社さまは、当然ながら異なる魅力をもっています。したがって、“アイドルたちの3DCG化”に際して『ミリアニ』と『シャニアニ』では、それぞれ異なる角度からアプローチしているんです。

「アイマス」シリーズアニメプロデューサーの冨田さん
「アイマス」シリーズアニメプロデューサーの冨田さん

『ミリアニ』の場合は、すでに『ミリシタ』にてセルルック3DCG(※2)を展開していた流れを汲みつつ、彼女たちが“765の系譜”の(「アイマス」で描かれてきた”765プロ”に新たに所属することになった)アイドルたちであると感じてもらえるよう、過去の「アイマス」ゲーム作品の3Dモデルのエッセンスも取り入れています。

※2 セルルック3DCG:3ⅮCGを2Ⅾアニメ(手描きアニメ)のような見た目で表現する技法

島原エレナ
永吉昴
『ミリアニ』の1シーン

冨田:一方、これまでゲーム『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(以下、『シャニマス』)では、アイドルたちの2Dイラストにアニメーション効果を加えることで、2Dのままいかに美しく、躍動感あるものに見せるかということに挑戦してきました。「シャニアニ」を手がけるポリゴン・ピクチュアズさまには、そうしたゲームでの演出面のこだわりまでも、3Dアニメに落とし込んで描いていただいています。

加えて、『シャニマス』は作品全体のテーマとして”透明感”を大事にしてきました。3Dアニメになっても、そうした”透明感”を随所に感じていただけるような仕上がりを目指していますので、ぜひご注目ください。

櫻木真乃
アニメ『シャニマス』の1シーン

すべてのプロデューサーさんに向けて、「ありがとう」と「これからも――」をお伝えしたい

――3月25日~26日に開催されたアニメイベント「AnimeJapan 2023」では、「アニマス」のブース出展、およびトークステージを実施しました。これまで「アイマス」に触れたことがなかった人にも興味をもってもらうために、どのような工夫をして臨まれましたか?

冨田:今回私たちは、「2023年、「アイドルマスター」はアニメに本気!」をスローガンとし、「アイマス」シリーズのアニメが3作展開することを多くの方に知っていただくため、アニメ「アイドルマスター」として“単独ブースを出展”しました。

「AnimeJapan」というイベントは、ごく一部の人気タイトルやオリジナル作品を除けば企業単位でブースを出展するケースが多いため、イベント内だけではなくブースのなかでも埋もれやすいんです。なので、とにかく「アイドルマスター」という名前をイベントのなかで少しでもたくさん露出することを考えました。

そしてスローガンのように“本気”度をアピールする施策のひとつとして、『ミリアニ』に登場する春日未来をブースの宣伝隊長として起用しました。ブースに設置したデジタルサイネージ上に、アニメと同じ3Dモデルの未来が登場し、目一杯に動いてしゃべってブースを案内するというものです。

これまでも、ショップや交通機関とのコラボなどで「アイマス」シリーズのアイドルが音声アナウンスをする事例はありましたが、今回はビジュアルを伴って視覚的にも訴えかけることができました。

『ミリアニ』用の3Dモデルを使用しているので、ブースを訪れた方のなかにはアニメと現実が溶け合ったような感覚をもってくださった人がいたかもしれません『ミリアニ』を見た折には、「あの時に見た未来が、そのままアニメで動いてる!」と思っていただけるような思い出に残るものになっていたらうれしいですし、今後もそういった機会を作っていきたいと思っています。

「AnimeJapan 2023」の「アニマス」ブース
「AnimeJapan 2023」の「アニマス」ブース

――最後に、「アニマス」に興味をもっているすべての方に向けてメッセージをお願いします。

冨田:これまでに「アイマス」をお楽しみいただいているプロデューサーさんにも、「アイマス」に触れてこなかった方にも、ぜひ見てもらいたいと思っています。

映画館で見ていただいても、テレビ放送やネット配信で見ていただいてもうれしいです。極端なことを言えば、仮に見ていただけなかったとしても、この1年に3作品も新作があるお祭り騒ぎを一緒に楽しんでもらえたらいいなと思っています。このアニメイヤーをきっかけに、「アイマス」を好きになってくれる人がたくさん増えるよう、なにとぞ応援のほどよろしくお願いします!

狭間:ゲームを起点に始まった「アイドルマスター」シリーズがアニメ化できたのは、一緒に作品を育ててくださったプロデューサーの皆さんがいてくださったからです。

アニメ化には、技術、ビジネスの両側面で実現に向けた高いハードルがあります。

そうしたなかにあっても、新作アニメ3作品への挑戦を応援してくれた会社やこの挑戦に合意してタッグを組んでくだった制作パートナーの皆さま、何よりずっと応援してくださっているプロデューサーさんに、心からのありがとうございますをお伝えしたいです。

2025年に訪れる「アイマス」シリーズ20周年に向けて、「アイマス」をさらに大きく成長させていきたいと思っていますので、もっともっと多くの方にプロデューサーさんになっていただけるよう、これからもプロデュースよろしくお願いいたします!

 狭間さんと冨田さん

3作品まとめて「アニマス」と表現するのはなぜ? 先行上映会を実施する背景は? インタビュー前編はこちら↓

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【取材後記】
「アイマス」シリーズの新作アニメ3作品――『アニマス』が、怒涛の勢いで放送されていく「アイマス」シリーズアニメイヤー。狭間さん、冨田さんのおふたりからは、そんな記念すべき年を迎えることに対する思いや、それぞれの作品製作における貴重な裏話、そして、プロデューサーの皆さんに向けたありったけの感謝の思いが語られていきました。

『U149』、『ミリアニ』、『シャニアニ』がどのような物語を描いていくのか。そして、輝かしい「アイマス」アニメイヤーを越えた向こう側には、どのような未来が待っているのでしょうか。今からワクワクが止まりません!

取材・文/山本雄太郎
1994年生まれのフリーライター。ゲーム、esports関連の分野を中心に、イベントレポート記事やインタビュー記事などを執筆。テレビアニメ『アイドルマスター XENOGLOSSIA』の最終話は何度見ても泣いてしまう。

©窪岡俊之 THE IDOLM@STER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.
©Bandai Namco Entertainment Inc. / PROJECT U149