今年からeスポーツ競技としてプロライセンスの発行を開始した対戦格闘ゲーム『鉄拳7』。選手たちが感じる競技の魅力やライセンス取得までの道のりとは? 加齢選手&破壊王選手にインタビュー! 今回は「鉄拳7×esports GIANT KILLING in ゲオ」が実施されたゲオ八尾店でお話を伺いました!
最高のライバルにして唯一無二の相棒。ともに歩んだプロへの道のり
中学生の頃に大阪で出会い、ともに技を磨きながら『鉄拳』シーンを引っ張ってきた加齢選手と破壊王選手。2人は今年はじまったプロライセンス発行大会で勝利し、見事『鉄拳7』のプロ選手となりました。この前編では、2人の出会いからプロまでの道のりを取材。アマチュア時代から活躍してきた両選手の話から感じられたのは、朋友/ライバルの大切さと、『鉄拳』で育んだスポーツマンシップでした。
「いつかこの人たちを倒したい!!」。プロ選手がスタイルを確立するまで
――加齢選手と破壊王選手が出会ったのは中学生の頃だそうですね。その頃から『鉄拳』はかなり強かったんですか?
破壊王:いえいえ、全然です(笑)。
加齢:2人ともめちゃくちゃ弱かったですよ。当時はどうやったら技を出せるかも分かっていなかったし、ひたすらみんなでプレイして、ワイワイ楽しむような感じでした。『鉄拳』は試合を観ていても技がダイナミックですし、コンボも相手が浮いているところに技が当たるのがリアルに伝わってくるので、視覚的にも楽しめます。そこに魅力を感じました。
破壊王:確かに、コンボの魅力はあったよね。僕の場合はキャラ(愛用するキング)が好きというのも大きかったです。今僕は大阪を離れて広島に住んでいますけど、当時僕らは大阪の同じゲームセンターにいて、会うと少し喋って、『鉄拳』で対戦する友達でした。でも、そこからしばらくして、「monte50(明大モンテカルロ/大阪の格闘ゲームの聖地と呼ばれるゲームセンター)」に行きはじめたんです。加齢が中学三年生、僕が高校一年生の頃ですね。
加齢:それまではずっと地元のゲームセンターで遊んでいたんですけど、「梅田に強い人が集まる場所があるらしいぞ」という話を聞いて、一緒に行ってみたんですよ。
破壊王:その結果、見事にボコボコにされて(笑)。そのときに「いつかこの人たちを倒したい!!」と思ったのを覚えていますね。
加齢:でも、関西の『鉄拳』は昔から攻めのスタイルが特徴だったのに対して、僕らはそのスタイルには馴染めませんでした。そこで『じゃあ、この人たちに勝つにはどうすればいいんやろう?』と考えて導き出したのが、「守りの鉄拳」だったんです。
――「関西の盾」と言われてきたキング使いの破壊王選手と、相手に合わせて柔軟に戦い方を変えていく三島一美使いの加齢選手。2人のプレイスタイルは、そうして生まれたものだったんですね。
破壊王:もちろん、共通の師匠だった宮田さんの影響もあったと思います。宮田さんはよく「ボタンを押すな(無駄な攻撃をするな)」と言っていたので。僕らがここまで来られたのは、師匠のおかげですね。
アマチュア時代の思い出とライバルの絆
――その後互いに切磋琢磨してきた中で、印象に残っている思い出というと?
加齢:僕らが高校生の頃、当時富山で開催されていたチーム戦『MASTERCUP.3』に出たんですが、これは僕らが出た初の大きな大会で、決勝トーナメントまで残ることができました。
破壊王:今考えると、よくあんなに遠くまで行ったよね(笑)。
加齢:でも、大会自体は貴重な経験になりました。視野が一気に広がりましたし、『MASTERCUP』はチーム戦なので負けるとチームに迷惑がかかります。そこで感じた「来年リベンジするぞ!」という気持ちが、モチベーションにつながったと思います。
――高校生の頃に大会で貴重な経験をして、今ではお互いをどんな存在だと思っていますか?
破壊王:ずっと一緒に『鉄拳』をやってきて、トータルの勝率もほぼ五分で。加齢がいなかったら、今も『鉄拳』をやっていたかどうかは分からないですね。自分のモチベーションにつながる存在です。
加齢:僕もまったく同じです。今年に入って破壊王が先にプロライセンスを取得したときも、モチベーションの上がり方が半端じゃなかったんですよ。「一方が先に行ったら、もう一方がさらに頑張る」という感じで、本当にいいライバルに出会えたと思います。
破壊王:『鉄拳』が強くなりたい人は、身近なライバルを見つけるといいですよ。自分と同じか、ちょっと強いぐらいの人を目標にすると、モチベーションも上がりますし、課題も見えやすくなるので。
それぞれ『鉄拳』のプロ選手に! 2人の熱い戦いは終わらない
――今年に入って、破壊王選手、加齢選手はともに大会で結果を残し、『鉄拳7』のプロライセンスを取得しています。取得を決めた瞬間の気持ちを教えてください。
破壊王:「よっしゃ、取ったぞ!!」と思いつつも、どんな意味があるのかはまだよく分かっていなかったと思います。でも、プロになって公の場に出ることが増える中で、賞金のある大会に出られること以外にも色んなことが見えてきました。今は店舗でのイベントなど、試合以外でも『鉄拳』の楽しさを伝えたいという気持ちが、より強くなっている気がします。
加齢:僕はライセンス取得を決める直前まで「一線を退こう」と思っていて、破壊王がプロになったことがもう一度頑張るモチベーションになりました。そのとき破壊王に、「お前もプロになってくれ」と言われたんですよ。
破壊王:やっぱり、僕にとっても加齢はデカい存在なので。加齢が『MASTERCUP TRY FUKUOKA』に向かう前日も、ちょうど大阪に帰省していたので、「明日、頑張ってくれ」「行ってくるぜ」とやりとりをしました。
加齢:大会中にもそれを思い出しましたね。「あいつに言われたからには勝たないと」「あいつだけに美味しい思いをさせたらあかん!!」って(笑)。その結果、プロライセンスを取れてすごく嬉しかったです。ただ、僕は最初、プロ制度をあまりよく思っていなかったんです。プロができることでアマチュアの人たちのコミュニティとの乖離がおきてしまうのが嫌だったので。だから、(アマチュアの選手と比べて)「自分はプロだから」とは絶対に言わないし、いつものゲームセンターにもこれからもずっと行き続けたいです。そもそも、アマチュアのコミュニティが育んできたものが盛り上がった結果、僕たちプロ選手が生まれたわけなので、その気持ちは大切にしたいんです。
――みなさんがプロとして活躍することで、アマチュアのシーンに還元されるものもきっとありますよね。
加齢:はい、それを大切にしたいです。そのためにもちゃんと結果を出して、そのうえで「誰かの目標になれるようなプレイ」を心掛けたいです。
破壊王:僕らの試合を観た誰かが目標にしてくれたり、『鉄拳』を好きになってくれたりしたら嬉しいですし、僕らのモチベーションも、技術を伝える意欲も湧いてきます。
加齢:そんな風に、プロとして活動することで、誰かの『鉄拳』へのモチベーションや気持ちをつなげるような存在になれたら、すごく嬉しいですね。
【取材後記(前編を終えて)】
前編では2人の出会いからプロ認定までの道のりを語ってくれた加齢選手と破壊王選手。この日は取材場所となったゲオ八尾店でのイベント開催日で、大阪の鉄拳プレイヤーたちと楽しそうに交流する姿は、今でも無邪気なゲーム少年そのものでした。
後編では、eスポーツとしての『鉄拳』の未来や、プロ選手の普段の練習方法について伺います!
取材・文/杉山 仁
フリーのライター/編集者。おとめ座B型。三度の飯よりエンターテインメントが好き。
写真/玉永俊輔
玉永俊輔(たまながしゅんすけ)
1978年生まれ。大阪出身。現在はスチルライフを中心に広告、取材等で活動。
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