今年からeスポーツ競技としてプロライセンスの発行を開始した対戦格闘ゲーム『鉄拳7』。選手たちの強くなるための秘訣や今後のビジョンとは? プロの加齢選手&破壊王選手にインタビュー! 前編に引き続き、今回も「鉄拳7×esports GIANT KILLING in ゲオ」が実施されたゲオ八尾店でお話を伺いました!
今年誕生した『鉄拳7』のプロプレイヤー。日々の練習方法や今後のビジョン
今年からeスポーツ競技としてプロライセンスの発行を開始した対戦格闘ゲーム『鉄拳7』。選手たちの強くなるための秘訣や今後のビジョンとは? プロの加齢選手&破壊王選手にインタビュー! 前編に引き続き、今回も「鉄拳7×esports GIANT KILLING in ゲオ」が実施されたゲオ八尾店でお話を伺いました!
賞金がもらえて、経験値も積める。『鉄拳7』のプロになるってどういうこと?
――お2人はプロになってから、どんな変化を感じていますか?
加齢:まずは結果が求められることですね。
破壊王:加齢はよしもとゲーミングさんがスポンサーについているから、余計にそうかもしれないよね。勝つことへのプレッシャーはお互いにありますよ。
加齢:あとはプレイ時間も増えて、より一層『鉄拳』に向き合うようになったと思います。色んな人に教える機会も増えるので、人のプレイもよく見るようになりましたね。
――現時点では、プロになるメリットはどんなことなんでしょう?
破壊王:プロは賞金がかかった大会に出られますし、そこで活躍することで色々な企業さんからスポンサー契約の話が来たりするので、それが一番のメリットです。そうすることで『Tekken World Tour』のような海外の大会への参加にもつながっていくと思います。
加齢:国内ではまだ大きな大会は少ないですけど、プロライセンスを取得してからは緊張感のある場所で試合に臨む機会がかなり増えました。もちろん、賞金がもらえることも嬉しいですが、より多くの経験を積めることが一番のメリットですね。
――賞金がもらえる大会に出られて、より大きな経験を積むことができて――。
破壊王:今のところいいことしかないです(笑)。
対戦ゲームは相手がいてこそ成り立つもの。相手との読み合い、考えることが重要
――これから色々な人たちがプロを目指すと思うのですが、お2人が普段の練習で意識していることを教えてもらえますか。
加齢:やっぱり、一番は実際に色んな人たちと対戦することですね。トレーニングモードで技を磨くのも大事ですが、それは当然の話で、それ以上に試合の中で「なぜこの技をくらったのか」「なぜこの技を当てることができたのか」を考えるのが大切です。格闘ゲームの技数って、実はそんなに多くないんですよ。しかも実際に試合で使う技はさらに絞られます。その中でなぜ上手い人は技を当てられるのか、なぜ負ける人は技を当てられてしまうのかを考えることが重要です。
破壊王:勝っているときだけではなく、負けているときに自分がどうなっているのかを考えることもすごく大事ですね。
加齢:結局、“考える”ことが大事なんだと思います。強い人はあまり使っていないキャラでも上の段位になったりしますが、それは一試合ごとの内容をちゃんと振り返っているからだと思うんですよ。あと、はじめたばかりの頃は「このコンボを決めたい!」と考えますけど、実はそれって自分だけの世界の話だと思うんです。対戦ゲームは相手がいてこそ成り立つので、相手との読み合いがすごく大事です。
破壊王:相手も同じように、行動を読みながら動いているわけですしね。
――その展開を読む力を鍛えるには、どうすればいいんでしょう?
破壊王:経験値も関係しますけど、相手の技を理解して、「この場面なら次はこうされるかな」と考えて行動することですね。
加齢:たとえば、一度じゃんけんをして、そのあと時間を置いてまたじゃんけんをすると、「あの人はこの前チョキを出したから、次はこうかな?」と予測できますよね。格闘ゲームも一緒で、予測のバリエーションを増やすことが近道なんです。相手のクセを知っていれば、「ここでは相手のキャラはグーしか出せないからパーを出そう」「ここではチョキかグーが出るはずだから、(最悪でもあいこになる)グーを出そう」と考えられます。
――自分だけの独自の練習方法や、試合への向き合い方はありますか?
破壊王:練習方法で特に変わったことはしていないと思いますよ。
加齢:でも試合中なら、僕の場合は「笑う」こと。せっかく貴重な経験をさせてもらっているので、試合でも「楽しまないともったいない!」と思うんですよ。
破壊王:逆に「負けたらどうしよう?」とばかり考えていると……。
加齢:プレイが後手後手になってしまいます。昔は僕も勝てなくて、2015~2016年の大会でも負けてばかりでした。それで当時の動画を見返すと、試合中もめちゃくちゃ真顔なんです(笑)。「せっかく世界で32人しか出られない貴重な大会に出ているんだから、ゲームを楽しまないともったいない!」という気持ちになってから、勝てるようになりました。
――そもそもみなさんがゲームをはじめたのも、きっと純粋に楽しかったからですよね。
加齢:まさにそうですね。あとは、大会の直前に負けても、自分の戦い方を変えないことも大切です。1週間前に大きく変えても、その戦い方を突き詰めることはできないですから。
破壊王:僕の場合、これは気持ちの問題ですけど、大会前には昔、加齢に言われた「ビビらず、思いっきりいけ!」という言葉を思い出したりしますね。
『鉄拳』はみんなでやるのが楽しい! eスポーツの醍醐味は“会場の熱気”
――これから『鉄拳7』のプロライセンス選手が増えていくとして、「こうなってくれたらいいな」と思うことはありますか?
加齢:これは僕の勝手な意見ですけど、今後プロ選手が増えるなら、ライセンスの争奪戦があってもいいと思うんです。本来、弱い選手がプロライセンスを持つ資格はないわけですし。
破壊王:「一度ライセンスを取ったらずっと安泰」よりはいいかもね。
加齢:たとえば、サッカーの「J1」「J2」のようなランクがあって、「J1」の下位何組かは「J2」の上位何組かと入れ替えだったりすると面白いと思うんですよ。そして「J2」の下位何人かは、アマチュア大会の上位何人かと入れ替わる。これ、どうですか?(笑)。
破壊王:おおお(笑)。
加齢:ライセンスを持っている人たちが緊張感を持って臨めるような状況は、僕ら自身のモチベーションにもつながると思うので。
――加齢選手も破壊王選手も、自分に厳しいんですね。
加齢:「現状維持」は弱くなる原因ですしね。それぐらいのハングリー精神があった方が楽しいと思うんです。そうやって、みんなでモチベーションを上げていけたらいいな、と。
――では、これから『鉄拳』をどんな風に盛り上げていきたいですか?
破壊王:色んな方に『鉄拳』の楽しさを知ってもらいたいですし、やったことのない人も参加できるイベントを全国各地でやってくれるなら、そこにも可能な限り向かいたいです。自分のプレイだけではなく、色んなかたちで『鉄拳』を盛り上げていけたら嬉しいですね。
加齢:オンラインでも店舗でもいいですが、どんな形でも“人が集まる場所”は大切にしたいです。「『鉄拳』はみんなでやると楽しいよ!」ということを伝えたいです。
破壊王:この間僕らが出た「EVO 2018」(アメリカで行なわれる世界最大級のeスポーツイベント)も、『鉄拳』でのお客さんの盛り上がりがすごかったんですよ。
加齢:そうやって触れられる熱気がeスポーツの醍醐味だと思うので、少しでも興味のある人はぜひ試合に来てほしいですし、僕たちも面白い試合を見せられるよう頑張ります!
【取材後記(後編を終えて)】
加齢選手&破壊王選手のお話で印象的だったのは、自分たちの活躍だけでなく、『鉄拳』そのものの発展も大切にしていることでした。「対戦ゲームは相手がいてこそ成り立つ」のと同じように、eスポーツの大会も「選手」と「観客」の熱気が合わさってこそ楽しいものになるはずです。
『鉄拳7』の熱気を試合会場で感じてほしいと語る加齢選手と破壊王選手。実際、取材後に行なわれたゲオ八尾店でのイベント「鉄拳7×e-sports GIANT KILLING inゲオ」では、店舗に集まった様々なプレイヤーとの手に汗握る熱戦が繰り広げられ、大技が決まるたびに観客が大きな歓声を送っていました。少しでも興味のある人はぜひ一度、試合会場に足を運んでみてはどうでしょうか?
取材・文/杉山 仁
フリーのライター/編集者。おとめ座B型。三度の飯よりエンターテインメントが好き。
写真/玉永俊輔
玉永俊輔(たまながしゅんすけ)
1978年生まれ。大阪出身。現在はスチルライフを中心に広告、取材等で活動。
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