2021年6月に発売した『スカーレットネクサス』と同年9月に発売した『テイルズ オブ アライズ』。3月31日から開始した両作でのコラボコンテンツ配信を記念し、制作チームによる対談を開催。前編では開発時の裏話やJRPGの魅力について語っていただきました。今回はファンファーレと「Tales of YouTube Channel」がタッグを組み、本記事だけでなく当日の様子を映像でも公開しておりますので、合わせてお楽しみください!
超能力を駆使して怪異と戦う少年少女の物語を描いた『スカーレットネクサス』(以下、『スカネク』)と、ふたつの星を巡る物語を紡ぐ『テイルズ オブ アライズ』(以下、『アライズ』)。2021年に発売された両作がコラボレーションを行い、互いの作品で武器やアタッチメント、BGMなどが追加されるコラボコンテンツを配信しました。
このコラボを記念し、今回は『スカーレットネクサス』からディレクターの穴吹健児さんとプロデューサーの飯塚啓太さん、『テイルズ オブ アライズ』からディレクターの香川寛和さんとプロデューサーの富澤祐介さん、そしてアートディレクターの岩本稔さんに集まっていただき、フリーアナウンサーの森遥香さんによる司会のもと両作の開発裏話やRPGの魅力について語っていただきました。
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飯塚 啓太
バンダイナムコエンターテインメント所属
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穴吹 健児
バンダイナムコスタジオ所属
『SCARLET NEXUS』ディレクター。『テイルズ オブ』シリーズに10年以上携わり、『テイルズ オブ エクシリア2』などでディレクターを務める。
![Recipe Image](https://funfare.bandainamcoent.co.jp/wp-content/uploads/2023/03/tomizawa.jpg)
富澤 祐介
バンダイナムコエンターテインメント所属
『テイルズ オブ アライズ』プロデューサーであり、現在の『テイルズ オブ』シリーズのIP総合プロデューサー。バンダイ所属を経てバンダイナムコゲームス(当時)で『GOD EATER』シリーズの立ち上げなどに従事したあと、『テイルズ オブ ヴェスペリア REMASTER』より『テイルズ オブ』シリーズのプロデュースに携わる。
![Recipe Image](https://funfare.bandainamcoent.co.jp/wp-content/uploads/2023/03/kagawa.jpg)
香川 寛和
バンダイナムコスタジオ所属
『テイルズ オブ アライズ』ディレクター。プレイステーション2版『テイルズ オブ デスティニー』ではエフェクトを、『テイルズ オブ グレイセス』や『テイルズ オブ ゼスティリア』などでは戦闘プログラムの制作を担当。
![Recipe Image](https://funfare.bandainamcoent.co.jp/wp-content/uploads/2023/03/iwamoto.jpg)
岩本 稔
バンダイナムコスタジオ所属
『テイルズ オブ アライズ』アートディレクター&メインキャラクターデザイナー。『テイルズ オブ ヴェスペリア』でのアートディレクターをはじめ、多くの『テイルズ オブ』シリーズのアート、キャラクターデザインに携わる。
![Recipe Image](https://funfare.bandainamcoent.co.jp/wp-content/uploads/2023/03/mori.jpg)
森 遥香
ホリプロ所属のフリーアナウンサー。自他ともに認めるゲーム好きで、YouTubeでのゲーム配信なども行っている。
『スカーレットネクサス』と『テイルズ オブ アライズ』のコラボコンテンツが実現
森:今回は『スカネク』と『アライズ』の両制作陣にさまざまなお話を伺っていきたいと思います。さっそくですが、まずは今回の対談のきっかけにもなった両作のコラボがどういった経緯でスタートしたのかお聞かせください。
穴吹:コラボは僕から持ち掛けさせていただきました。同時期に出るなら絶対にコラボはしたほうがいいと思っていて、ずっと声をかけたいという気持ちはあったんです。
あるイベントで一緒にプロモーションをする機会があって、そこで一度コラボ企画を提案して、ウェブ会議用の壁紙を配信させてもらったんですよね。そのあとも何度か相談を繰り返し、今回のコラボコンテンツが実現しました。
富澤:本当はこちらからお話を持っていくつもりだったんですけど、先を越されましたね(笑)。一緒にプロモーションをさせてもらった時に、お客さまが両タイトルを違和感なく楽しんでくれそうだ、みたいな手応えがお互いにあったと思うんですよ。なので、ご提案にはもう二つ返事でしたね。
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次世代機や新たなゲームエンジンでの苦労と挑戦
森:続いて、開発時に苦労したことや挑戦したことなどを教えてください。
飯塚:やっぱり大きいのは開発の途中でPS5とXbox Series Xに対応すると決めたことですね。
穴吹:当時はまだハードの情報も出ていない状態で、スケジュールを組むのにも時間を割きました。この時期にここまで分かっていたらこのプラン、そうでなかったらこのプラン、みたいにスケジュールを複数用意しながら進行していたので、けっこうシビアでしたね。
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森:情報が少ないなか、しかも途中から対応するのは大変そうですね。
穴吹:幸い、両ハードとも開発そのものはスムーズに進めることが出来まして、そこは助かりました。でも何よりも、エンジニアの方々がすごく頑張ってくれたのが大きいです。
香川:『スカネク』チームは次世代機で念力アクションに使うボタンを変えたじゃないですか。ちゃんとアダプティブトリガー(※1)などにも対応していて、この時期にそこまでやるのか、と思った記憶があります。
※1 アダプティブトリガー:PS5専用コントローラーDualSenseの、L2/R2ボタンを押す重さが変化する機能。
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飯塚:やるからには徹底的にやろうと思ったんですよね。当時は『スカネク』チームが次世代機にどう対応していくのか、というのを見られている感がすごかったです(笑)。
香川:めちゃめちゃ情報をいただいていました(笑)。当時はまだ参考になるゲームもなかったので、発売に近いタイミングで開発を行うとなると、やっぱりチーム間で情報共有をしよう、みたいな話はしていたと思います。
飯塚:最初に踏み込んだ人が先陣を切って試行錯誤していく、みたいな感じでしたね。それはもう先に動く者の使命なんですよね。そこから後続につなぐからこそチャレンジもできるので、試してみて得た情報は積極的にシェアしていました。
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森:『アライズ』側の裏話も聞ければと思いますが、いかがでしょうか。
岩本:ビジュアルを考える立場としては、開発がスタートしてから何年後かになる発売時に新しさを感じられて、でも『テイルズ オブ』らしいねと思ってもらえるような進化をさせるのはむずかしかったです。
よりいいものを目指して、「これは作れないだろう」ぐらいのものを開発に持っていくんですけど、描画プログラマーが、それを超えるようなものを作ってくれたんですよね。おかげでいいものができたと思います。
森:アートの面ではアトモスシェーダー(※2)も大きな挑戦だったと思いますが、こちらの開発はいかがでしたか?
※2 アトモスシェーダー:水彩画の世界にイラストのキャラクター表現が繊細に調和する最新グラフィック技術のこと
岩本:僕自身は楽しんでやっていたのですが、エンジンをほぼフルカスタマイズして作っていたので、エンジンのバージョンアップ対応に毎回数ヵ月かけて対応していたらしくて、そこはすごく苦労したと聞いています。
![黒いシャツを着た男性
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富澤:バージョンアップ対応は本当に大変ですね。開発の人間はその話を聞くだけで目を背けてしまいます(笑)。『アライズ』も『スカネク』もUnreal Engine 4に対応して、そこもチーム間で切磋琢磨した部分かなと思います。
穴吹:「今のバージョンで固めちゃダメなの?」って思ってしまいました(笑)。バージョンを上げると修正が必要になって、元の状態に戻すだけで数ヵ月かかるんですよね。僕自身Unreal Engine 4での開発は初めてで、戦々恐々としていました。
![](https://funfare.bandainamcoent.co.jp/wp-content/uploads/2022/03/01_01-1024x574.png)
香川:でも、バージョンアップによってエンジン自体のバグが直っていくので、対応が必要なんですよね。一番驚いたのは、それまではデモシーンなどを作る時に秒で計算していたのが、単位がフレームに変わって、ほとんどのシーンが動かなくなったことですかね。
森:皆さんの空気感で大変さが伝わってきます。
![ブラインドの前に立っている女性
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穴吹:そういう苦労もあるんですけど、すばらしいエンジンだからこそ我々も使うんですよね。そこだけはちゃんと言っておかないと(笑)。
不安の先で掴んだ手ごたえ
森:無事に発売を迎え、数ヵ月が経過しました。ファンの皆さんからの反響はどうだったのでしょうか?
香川:『テイルズ オブ』のお客さまの期待を超えるタイトルとしてお楽しみいただけているのか、みたいな不安があって発売直後はSNSが見られませんでした。結果として『テイルズ オブ』ファンの方々はもちろん、新規のお客さまにもお楽しみいただけている事を知り、とてもうれしかったです。
岩本:発売前に触った『スカネク』がすごくおもしろかったのもあって、そのこともプレッシャーでしたね。こんなにいいものが出ちゃうのかと。
穴吹:ありがとうございます。
岩本:キャラクターを好きになってくれたお客さまからのコメントがすごくうれしくて、モチベーションも湧きましたし、開発者冥利に尽きる気持ちでした。
![テーブルを囲んで座っている男性
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森:『スカネク』チームは発売後の反応を見て、いかがでしたか?
穴吹:遊んでくださった方々が反応してくれることがうれしいですね。『テイルズ オブ』シリーズはトレンドワードになることも珍しくないのですが、『スカネク』は新規タイトルというのもあってどうかな?と思っていました。そんななか、発売日にはトレンドになって、本当にうれしかったです。
飯塚:触ってもらえれば絶対楽しんでいただけると思っていただいたので、今回ワールドワイドで展開して世界中でおもしろいねと言っていただけたことは、非常にうれしく思っています。
![椅子に座っている男性
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富澤:ワールドワイドと言えば、今回ゲームアワードで両タイトルともベストRPGにノミネートしていただけたことが、めちゃくちゃうれしかったですね。結果として『アライズ』が受賞させていただいたのですが、僕としては『スカネク』と一緒にノミネートされたことが本当にムネアツでした。
穴吹:そうですね。ノミネート自体もそうですし、やっぱり『アライズ』と一緒にというのはうれしかったです。ほかのタイトルもあるなかで、僕らが取れないなら『アライズ』が取ってくれたら、という思いでいたらちゃんと受賞してくれたので、本当によかったです。
飯塚:でも本当に、同時期に出したタイトルがあそこに並んだというのはすごいですよね。
富澤:ふつうだったら同じ年に出さないですからね(笑)。
穴吹:本当ですよ(笑)。
![椅子に座っている人たち
低い精度で自動的に生成された説明](https://funfare.bandainamcoent.co.jp/wp-content/uploads/2022/03/220205_sn_toa_0328-1024x683.jpg)
RPGの3大要素である「シナリオ・キャラ・バトル」
森:皆さんが思う、RPGの魅力とは何でしょうか。
穴吹:『テイルズ オブ』を作っていたころから意識していることですが、シナリオ、キャラ、バトルの部分は押さえておきたいポイントですね。
ゲームを進める動機となるストーリー、ゲームのなかで魅力が表現されて好きになれるようなキャラクター、簡単に操作できて、でも考えさせる奥の深さがあるバトル。この3つはすごく大事にしています。
飯塚:やっぱりRPGではストーリーが特徴だと思うんですけど、なかでもキャラクター同士の関係性が魅力じゃないかなと思います。
『スカネク』と『アライズ』では仲間との関係性の描き方が全然違っていて、それがバトルにも反映されているんですよね。それはRPGならではだと思いますし、絶対に外せない部分だと思います。
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岩本:穴吹さんの上げたシナリオ、キャラ、バトルの3つは本当に大事で、『アライズ』に関して言えばそのうえでの魅力は、「応援したくなるようなキャラクター」なのかなと思います。
いつの間にか自分がキャラクターたちの頑張っている姿に元気づけられるような、そういうことを意識して作っています。なので、親近感を持っていただけるための見せ方などにもこだわっていますね。
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香川:キャラを好きになってもらったり、ユーザーが納得するかたちで終わるようなストーリー作りはすごく大事だと思います。これは『テイルズ オブ』の役割でもあると思うんですけど、世界を作ることも大きいかなと思います。
この世界ってどうなっているんだろう、主人公たちはどんな信念を抱いて旅をしているのだろう、みたいなものが味わえるところは大切にしていきたいですね。
富澤:RPGという言葉自体、世界中で解釈も感じ方も違うと思います。海外ではプレイヤー目線でまさにロールプレイをするゲームが多いなか、我々の作品にはキャラクターがしっかりといて、プレイヤーは3歩後ろで見守りながら介入していくような、ちょっと特殊な体験なんですよね。
『スカネク』と『アライズ』が世界中で一定の反応をいただけたのは、アニメのようでアニメとも違って、欧米のRPGとも違う独特の楽しみ方を、ひとつのメッセージとして打ち出せたと思うので、そこはとてもうれしいですね。我々は我々のスタイルを突き詰めていっていい、という自信も得られた気がします。
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『スカネク』と『アライズ』、両タイトルの制作陣が互いの作品にふれて感じたこだわりや、ファンとのコミュニケーションにおいて重要視すること、そして今後の展開などについて伺った座談会の後編はこちら↓
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『スカーレットネクサス』と『テイルズ オブ アライズ』の制作チーム対談!これからのJRPGを語る【後編】
村田征二朗
1989年生まれのライター。しゃれこうべ村田、垂直落下式しゃれこうべライターMなどの名でも活動し、コンシューマータイトルやスマートフォンアプリのゲーム関連記事を執筆。原稿料の8割はプロレス観戦のチケット代に消える。
SCARLET NEXUS™ & ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
Tales of Arise™ & ©BANDAI NAMCO Entertainment Inc.
『SCARLET NEXUS』プロデューサー。スマートフォンアプリの開発、運営に携わったのち、家庭用ゲームの開発やプロデュースを手掛けた。2019年に発売された『CODE VEIN』でプロデューサーを務める。