『ONE PIECE ODYSSEY』が贈る感動体験。思い出の真っ只中へ飛び込む、オリジナルストーリーとは!?

2023年1月12日発売の新作RPG『ONE PIECE ODYSSEY』。麦わらの一味が謎の島“ワフルド”と記憶の世界を舞台に冒険を繰り広げる本作について、プロデューサーの都築克明さんにお話を伺いました。

アラバスタやウォーターセブンといったかつての冒険の舞台も含めて『ONE PIECE』の世界を楽しめる新作RPG『ONE PIECE ODYSSEY』。

本作でオリジナルストーリーを展開する背景、麦わらの一味らしい行動原理、「いざ 思い出の真っ只中へ」というキャッチフレーズに込められた2つの意味などをお聞します。

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都築 克明

バンダイナムコエンターテインメント所属

家庭用ゲーム『ONE PIECE ODYSSEY』プロデューサー

コンセプトは「『ONE PIECE』の世界を冒険するRPG」

――まずは、『ONE PIECE ODYSSEY』が開発されることになった経緯を教えてください。

都築:本プロジェクトが動き出したのは2017年ごろです。当時から、『ONE PIECE』が2022年で連載25周年を迎えることは分かっていて。この記念すべき年に、IP(※1)における家庭用ゲームブランドのステータスを1段階引き上げるタイトルが必要だろうと考えていて、プロジェクトのコンセプトの検討には非常に時間をかけました。

※1 IP:Intellectual Property の略で、キャラクターなどの知的財産のことを指します。

都築さんの写真

都築:新タイトルでどのような体験価値を提供しようかと考えた時に、過去担当した『ONE PIECE 海賊無双4』に対するファンの皆さまからの感想で「麦わらの一味で冒険できるゲームがほしい」という声が多かったことを思い出したんです。

たしかに、『ONE PIECE』で描かれるバラエティー豊かな世界で冒険できるゲームがあったらおもしろいのではないか。しかも、主人公であるモンキー・D・ルフィと麦わらの一味の個性を活かした冒険が体験できれば、これまでのRPGや『ONE PIECE』ゲームとも異なる体験を生み出せるのではないか。

そう考えて、「『ONE PIECE』の世界を冒険するRPG」というコンセプトのもとプロジェクトを始動させました。

――本作ではオリジナルストーリーが展開される点も注目されています。どのようにしてオリジナルストーリーを作ることが決まったのでしょうか。

都築:原作マンガ・アニメには熱量の高いファンがたくさんいらっしゃるため、そのとおりに作ると、先の展開が分かっている状態になってしまいます。アクションであればプレイの爽快感などで補うのですが、RPGは先の展開が気になることが重要。あらかじめ展開や結末が読めてしまうのは致命的だったんです。

ならば、かつての冒険を舞台に2年後の麦わらの一味たちが当時の記憶をもったまま降り立ったらどうなるんだろう、と考えました。これが“オリジナル”の部分です。

作品を好きな方々はアラバスタ編で何があったか、誰と戦い、どんな結末になったのか、全部知っているじゃないですか。同じようにルフィたちもそれぞれの冒険で黒幕を知っている状態、つまりプレイヤーと一味の視点が重なった状態で展開する冒険であれば、おもしろい体験になるんじゃないか、というのがオリジナルストーリーを採用した理由のひとつです。

プロデューサー都築さん

都築:それに何より、連載中の作品のゲームですので、作品に沿う内容だとどうしても、ゲームのエンディング時点で「物語の続きはマンガ・アニメでたしかめてください」となってしまう。

以前、元上司から「家庭用ゲームの価値は完成された感動体験である」という話をされたことがあったんです。その言葉が心に残っていたので、本作はマンガ・アニメの展開をそのまま落とし込むのではなく、ゲームとしてのエンディングをしっかりと描いて、達成感や感動が得られるものにしたいと思っていました。

なので、今回は謎の島・ワフルドというまったく新しい冒険の舞台にたどり着き、そこから『ONE PIECE』の魅力のひとつでもある新しい出会いがあり、島の秘密を解き明かしていく話になっています。

ワフルドに向かう海賊船

――ゲームひとつで完結する物語になっているわけですね。アラバスタやウォーターセブンなど、かつて作品に登場した場所を舞台にオリジナルストーリーが楽しめる点も楽しみです。

都築:アラバスタ編やウォーターセブン編の物語は、私も含めて日本のファンにとってある種、原体験になっていると思っています。その場所をフィールドとして歩き回れるのは、本作で楽しんでいただけるポイントのひとつです。

オリジナルストーリーだからこそ、麦わらの一味の行動原理をブレさせない

――RPGとして麦わらの一味や作品に登場したキャラクターたちを描くうえで、大事にされたのはどんなことでしょうか。

都築:2年の月日を経て麦わらの一味が変わった部分、あるいは変わらない部分を、しっかりと作品を読み込んで見つけていくことで、彼らの一貫した行動原理をブレさせないよう意識していました。

作品を追体験するだけであれば、そこでの発言や行動をしっかり再現するのが大事ですが、今回はオリジナルストーリーなので、作品にはなかったシーンがいくつも出てくるんですよね。例えば、原作やアニメではテンポよく進む物語でも、RPGにすると合間の移動で会話を交わすような場面が出てきます。

そもそも2年後の一味がアラバスタに行ったとしたらどんな反応をするのかも含めて、言動を作り上げないといけないんです。

アラバスタ到着

――そこはファンにとっても大事にしてほしいポイントですね。

都築:分かりやすいところでは、冒険を進めていくなかで決断を迫られた時、最後に方針を決めるのはルフィで、一味はその決定をもとに動いていく。女性が困っているクエストがあれば真っ先に前に出てくるのはサンジ、みたいな部分ですね。

シナリオチームと連携して物語を作っていく過程でも、ルフィだったらこう考えるだろう、このシーンで仲間を引き締めるのはゾロだよね、などと話し合って目線を合わせていました。

そうしたポイントを押さえて物語を作ることで、作品で描かれる彼らの行動原理とズレない描写になったと思います。

麦わらの一味

――本作のストーリーについて、特にこだわったのはどの部分ですか?

都築:こだわった部分はたくさんあるのですが…。ひとつだけと言われたら、さまざまな世界を麦わらの一味が冒険していくなかで、エンディングにたどり着いた時に、ゲームとして一貫した物語になるようにしたところですね。

アラバスタやウォーターセブンなど、各地で独自の物語が展開しつつ、その中にも軸となるテーマをもたせています。さまざまな体験が詰め込まれているんですけど、最終的にはそれらがひとつのテーマに収束していく。プレイ後に、いい映画を見たあとのような満足感が得られるゲームを目指しました。

その軸を通すうえで重要なのが、オリジナルキャラクターであるアディオとリムです。

オリジナルキャラクター アディオとリム
オリジナルキャラクター アディオとリム

――本作には尾田先生に制作いただいたオリジナルキャラクターのアディオとリムが登場しますが、この2人のデザインを初めて見た時の印象を教えてください。

都築:尾田先生にデザインのご依頼をしたのは、メインストーリーの大枠が決まった段階でした。その時にはオリジナルストーリーの鍵となるキャラクターとしてアディオとリムの設定はあったものの、見た目が決まっていなかったんです。

そんななか尾田先生からイラストをいただいて、2人はこんな顔をしていたんだ! でも、たしかに今回描きたい物語にピッタリだ!と新鮮さを感じたとともに、すごく納得感をもったことを覚えています。原作者である尾田先生に手がけていただいたことで、想像のさらに上をいく驚きがありました。

尾田先生デザインのアディオ

「いざ 思い出の真っ只中へ」に込められた2つの意味

――本作のトレーラー(予告映像)に「いざ 思い出の真っ只中へ」というキャッチフレーズが出てきますが、こちらに込められた思いを教えてください。

都築:ひとつは、ゲームの中で麦わらの一味が自分たちの記憶に飛び込んでいくことを意味しています。加えて、本作を遊ぶプレイヤーにとってもまさに「いざ 思い出の真っ只中へ」な体験をしてほしいということですね。

現在の『ONE PIECE』は完結に向けて怒涛の展開がくり広げられていますが、個人的にはグランドラインに入ったころの新しい島に辿り着いて、新たな秘密を見つけて……みたいな、ワクワクする瞬間をゲームで表現してみたいと考えていました。かつて憧れた世界にゲームで入っていけるというのは胸が弾む体験になるんじゃないかと。

北米などでは配信サービスで今まさにアラバスタ編を見ている方もいるんですが、昔から原作マンガ・アニメで『ONE PIECE』を楽しんでいる日本のファンにはこのフレーズが刺さるだろう、と思って選定しました。

プロデューサー都築さん

――日本と海外のファンの違いというお話がありましたが、国内だけでなく世界に向けて作るからこその苦労はありましたか?

都築:どの国でも作品自体を魅力に感じているのは共通しているのですが、好きになったタイミングや好きでいる期間の長さ、愛し方などは国や地域によって違いがあります。例えば、日本ではアラバスタ編に思い入れの強いファンが多い印象をもっていましたが、北米などではウォーターセブン編の人気がすごく高かったりするんです。

ひとつの作品を作りながら、そうした違いに対して調整をしていくため、本当に繊細な対応が必要でした。新しい情報を出すにしても、日本と海外の両方を勘案しながら一本の映像を作らないといけません。作品として魅力的な部分はブレないようにしつつ、見せ方は地域によって変えています。

プロデューサー都築さん

――キャラクターの行動原理やストーリーにおけるテーマなど、本作は一貫性を大事にされている印象がありますが、『ONE PIECE ODYSSEY』のもつ軸とはズバリ何でしょうか。

都築:ゲーム全体としてのコンセプトと、それに紐づくストーリー・バトルにもそれぞれテーマがあったりするのですが、全体を通してブレないようにしたのは「麦わらの一味の冒険」であることです。

バトルにしてもストーリーにしても、意識しているテーマは、麦わらの一味としての体験を掘り下げた結果出てきたもの。本作のどの部分を切り取っても、この一味の冒険という軸が必ず見えるように気をつけて開発を進めました。

プロデューサー都築さん

――最後に、本作の発売を楽しみにされているファンの皆さんへメッセージをお願いします。

都築:『ONE PIECE ODYSSEY』の開発をはじめてから5年が経ち、『ONE PIECE』の連載25周年のタイミングで発売を迎えました。

非常に長い時間をかけたぶん、「ONE PIECEの世界を冒険するRPG」という当初に立てたコンセプトを体験できるタイトルに仕上がったと思っています。ですので、ぜひ本作で麦わらの一味の冒険を楽しんでいただければと思います!

ファンファーレでは皆さまのご意見、ご感想を募集しております! 編集部にて拝見させていただきました上で、今後の改善のための参考にさせていただきます。

【編集後記】
原作マンガ・アニメがあるゲームが多くあるなかで、作品をしっかりと再現するものも楽しみですが、原作を踏まえながらも新たな展開が見られるオリジナルストーリーはまたワクワクするもの。

作品へのリスペクトをもちつつ、一本のゲームとしても完結する冒険がどのようなものになるのか、アラバスタやウォーターセブンで展開するストーリーともに本作独自の物語にも要注目です。個人的にはロビンのあの名シーンがどうなるのかが非常に気になるところ!

取材・文/村田征二朗
1989年生まれのライター。しゃれこうべ村田、垂直落下式しゃれこうべライターMなどの名でも活動し、コンシューマータイトルやスマートフォンアプリのゲーム関連記事を執筆。原稿料の8割はプロレス観戦のチケット代に消える。

©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション 
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