『アイマス』シリーズ合同ライブ「MOIW2023」の見どころと、運営スタッフが胸に刻む“つながり“への思いとは?

梅木馨さんと根岸麻衣子さん

『アイドルマスター』シリーズ全5ブランドが集結するライブ「THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!!!! 2023」の運営スタッフに、ライブにかける思いや見どころなどを伺いました。

2023年2月11日・12日に開催される、「THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!!!! 2023」(以下、「MOIW2023」)は、『アイドルマスター』(以下、『アイマス』)史上初の東京ドーム単独ライブ。

2015年に開催された「THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!」以来、実に8年ぶりの合同ライブとして、ここでしか見られないさまざまなパフォーマンスが披露されます。

THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!!!! 2023のビジュアル

今回は「MOIW2023」の制作・運営を担当する多くのスタッフの中から梅木馨さん、根岸麻衣子さんに、合同ライブ開催の経緯や見どころ、さらにライブ当日に向けて実施されるさまざまな企画などついてお話いただきました。

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梅木 馨

バンダイナムコエンターテインメント
第3IP事業ディビジョン ニュービジネスプロダクション

理由あって長年にわたり『アイマス』シリーズのイベント企画・運営、関連商品やサービス展開などに携わる。

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根岸 麻衣子

バンダイナムコエンターテインメント
第3IP事業ディビジョン ニュービジネスプロダクション

家庭用ゲームのプロモーションやRPG『テイルズ オブ』シリーズのイベント「テイルズ オブ フェスティバル」の企画・運営などに携わったのち、2022年より『アイマス』シリーズのイベント企画・運営を担当。

すべてが“つながる”ことで“みんな元気”になる合同ライブに

――まずは、「MOIW2023」を開催することになった経緯を教えてください。

梅木:2020年に『アイマス』シリーズが15周年を迎えるにあたり、実はさまざまな企画を準備していたんです。当時、5ブランド合同のイベント「プロデューサーミーティングツアー」(以下、「合同プロミ」)を発表していましたが、その集大成として東京ドームで合同ライブも開催する心づもりでした。

しかし、新型コロナウイルス感染症の影響で、ほかのイベント同様に「合同プロミ」の開催も見送らざるを得ない状況になったんです。

梅木馨さん
イベント担当の梅木さん

梅木:ここ最近ようやく、フルキャパシティで有観客ライブを開催できるようになってきましたが、そのあいだずっと、かつて企画していた5ブランド合同イベントを実現したいという思いをもち続けていたんです。

そんななか、今回の日程をご提案いただく機会に恵まれました。もはや自分の中では、「このタイミングを逃してしまったら、5ブランド合同イベントなんて一生実現できないんじゃないか」という不安めいたものすらありました。なにしろ1年間に土曜日・日曜日は52回しかありませんからね。

そのたった52回の土日には、ブランドごとの定期的なイベントもありますし、そこでさらに全国ツアーなどを組んでしまうと、本当に土日の取り合いになります。

根岸:それこそ運営スタッフのあいだでは、「『アイマス』の最大のライバルは『アイマス』である」とよく言っていますよね(笑)。

梅木:そんななか、関係各所とのさまざまな調整の末、なんとか必要な条件がある程度整ったタイミングで、ようやく「MOIW2023」の開催に着手することができたというわけです。

もっとも、そのぶんイベント制作のスケジュールはかなりしんどくなってしまいましたが(苦笑)。

根岸:本来このようなライブは、基本的には丸1年ほどの期間をかけて作り上げていくものなんです。とはいえ今回は、「東京ドームでなんとか開催できそうだ」と判明した時点で、すでに開催予定日まで約7ヵ月しかありませんでした。そのため、公演に関わるさまざまな要素を異例のスピード感でまとめていく必要があったんです。ご協力いただいた皆さまに感謝しております。

根岸麻衣子さん
イベント担当の根岸さん

――開催準備が急ピッチで進められていくなかで、「MOIW2023」のテーマを“みんな元気!!!!!”とした背景についてお聞かせください。

梅木:このテーマ、実はけっこう難産だったんです。

そもそも、合同ライブのコンセプトは「“人”も、“ブランド”も、“想い”も、リアルとオンラインの両面で“つながる”お祭りイベント」。

そこには、長い年月の中で育まれていったプロデューサーさん(※1)同士やプロデュース体験のつながり、プロデューサーさんとアイドル&キャストたちとのつながり、ブランドを超えて生まれる化学反応や過去に開催した合同ライブの追体験を意味するつながりといった、さまざまな“つながり”を大切にしたいという思いが込められています。

このように、「合同ライブとは何か」というコンセプトはあるものの、「MOIW2023」を一言で表せるワード……つまり、わかりやすいテーマもあったほうが良いだろうという話になったんです。

※1 プロデューサーさん:『アイマス』シリーズのファンのこと

――コンセプトとともにテーマを設定していくことが苦労したポイントだったと。

梅木:そうですね。制作スタッフのあいだでは、“みんなでいっしょに”をテーマにする案も挙がりました。これは、「765PRO ALLSTARS」の7周年ライブでのタイトル“みんなといっしょに!”からも着想を得たものだったのですが、なにしろそのライブは2012年の開催ですからそのモチーフでいくのはどうなのかという議論があったり、「みんなでいっしょに、どうなる」の「どうなる」の部分がない、などの理由で見送りに……。

そんななか、「わかりやすくて、ちょっと突き抜けているくらいのほうが良いのでは?」という発想から生まれたのが、“みんな元気!!!!!”でした。

イベントは、プロデューサーさん、キャスト、スタッフ全員で作り上げるものです。この数年、世界的にもいろいろなことがあったけれど、さまざまな取り組みを行いつつイベントを続けられてきました。そして、ようやく迎えた東京ドーム。実に8年ぶりの合同ライブで、5ブランドによる初の開催にこぎつけることができました。

昔からのプロデューサーさんも、最近プロデュースをはじめた方も、当ライブを通じて、参加するプロデューサーさんみんなに元気になってもらいたい、そして、元気に次のプロデュースに臨んでもらいたい、という気持ちを込めています。そのうえで、5ブランド合同ライブを表現すべく“!”を5つ加えて、テーマとして定めたんです。

MOIW2023のビジュアル

根岸:手前味噌ですが、とてもピッタリな言葉だと思いました。“みんな元気!!!!!”という言葉から受ける印象がすごくポジティブですし、このイベントに参加したプロデューサーさん、ひいては私たち運営スタッフも、お互いに元気をもらい合えるような、楽しいイベントにしたいと思っています。

ピュアな思いでかたち作られていった「MOIW2023」

――『アイドルマスター』シリーズの合同ライブは2015年以来、8年ぶりの開催となりますが、どのような気持ちで臨んでいらっしゃいますか?

梅木:第一に、「8年もかかってしまってごめんなさい」という気持ちがあります。本来であれば2020年に開催しようとしていたものが、いろいろなことが重なり、3年遅れになってしまいました。

それでも少しずつ日常が戻ってきていますし、やはりライブ会場で新展開や次回開催のライブ情報を告知させていただくと、プロデューサーさんたちが思わず声を漏らして喜んでくれたりします。そんな光景を現地で見ていると、私たちとしても「がんばろう!」と励みになりますね。

そうした感謝を胸に、今回のイベントも精一杯盛り上げていきたいです。

根岸:“8年ぶり”というワードには私も重みを感じますが、8年の期間が空いたことで『アイドルマスター SideM』や『アイドルマスター シャイニーカラーズ』が合流し、こうして5ブランドのひとつの到達点的なイベントを開催できることは、非常に感慨深いです。

アイマスの歴史に立ち会うことができたと感じていただけるよう、入念に準備を進めています。

「MOIW2015」の様子
2015年7月18日・19日に西武プリンスドーム(現ベルーナドーム)で開催された「MOIW2015」の様子

――そんな「MOIW2023」では、総勢100名以上の出演者が出演する大規模公演を実施すると伺っています。

梅木:『アイマス』シリーズの5ブランドが一堂に会するからには、ここでしか見られないパフォーマンス、つまりそれぞれのブランドのライブでは見られないような光景、景色をお届けしないと合同ライブを開催する意味がありません。

ただ、一方で、それぞれのブランドならではの魅力も、きちんとお届けしたいという気持ちも当然もっています。プロデューサーさんによっては、この機会に初めて出会うブランドもあるでしょうから。

こうした“ここでしか見られないパフォーマンス”と、“それぞれのブランドならではの魅力”の両面をお届けしたいというアイデアを実現するため、必然的にこのような大規模公演になったというのが率直なところです。

開催までに越えなければならない壁は無数にありましたし、また現在進行形で調整を進めている部分も多々ありますが、運営準備期間中は「こういうことをやったら楽しいんじゃない?」「これをやったら盛り上がるんじゃない?」というピュアな気持ちを重視して、スタッフ一同話を膨らませて議論を重ねていきました。

根岸:そうやって運営スタッフが総出で際限なくアイデアを膨らませていったからこそ、プロデューサーの皆さんの期待を超えるイベントにしたいと思っています。

梅木:それに、今回の「MOIW2023」は、通常の各ブランドのライブとはまったく違った作り方をしていますからね。

――合同ライブには、合同ライブなりのプロセスがあるということでしょうか。

梅木:はい。より正確に言えば、各ブランドに“そのブランドなりのイベントの作り方”が存在します。そもそも5ブランドすべての、アイドルやキャストの特性、楽曲、設定、歴史ほかもろもろを、完璧に取りこぼしなく、偏りもなく把握することはなかなかに難しいわけじゃないですか。

もちろん運営スタッフの各々が、ある程度は担当外のブランドについて詳しく把握していたりもしますが、やはり“餅は餅屋”ですから。今回はまず全ブランドの担当者を集め、そこに総合演出をご担当いただくJUNGOさんにも加わっていただき、詳細な内容を詰めていったんです。

普段の各ブランドのライブでも相当な時間をかけて制作していますが、今回は短いスケジュールに対して、多くの出演者数が掛け算されているので、運営スタッフの勤務状況を管理している根岸の顔がどんどん曇っていきました(笑)。

梅木馨さんと根岸麻衣子さん

根岸:セットリストの打ち合わせも、1回あたり数時間ほどの会議をほぼ毎週やっていましたからね。それだけみんなでこだわって作ったセットリストですから、プロデューサーさんたちの反応が今から楽しみでもあります。

梅木:会議中に「このキャスト同士の組み合わせで、この曲をやったらおもしろいんじゃない?」なんて話が出ると、その曲を全員が詳しくは知らない場合もあり、「じゃあ、曲をテイスティングしようか!」と試聴する流れになったりする。だから、どうしても会議が長引いてしまうんです。

根岸:そうそう、テイスティング(笑)。その言いまわし、私たちの中で流行りましたよね。

――そうした“テイスティング”も含めた成果が、“ここでしか見られないパフォーマンス”につながっているわけですね。

梅木:そうなっているとうれしいですね。“人”も“ブランド”も“想い”も含めて、いろいろな部分でつながりを感じてもらえたら、我々としてもうれしく思うところです。

――おふたりが個人的に注目してほしいと思うポイントはどこですか。

梅木:2014年と2015年に開催した合同ライブと同様に、今回もライブ合わせの新曲『CRYST@LOUD』を制作・発表しました。これ以外にも、「みんな元気!!!!!WEEK」など、ライブ当日に向けてさまざまな企画を行っていく予定です。

通常のライブであれば、ライブ当日ないし前夜で盛り上がるところを、本イベントではライブ当日を含む前後の期間にわたって、プロデューサーさんたちも、キャストも、運営スタッフも、みんなで盛り上がるお祭りにしたいと思っています。

もちろんライブ自体もがんばって作っていますが、ライブ以外の部分もトータルで楽しんでいただけるようにしたいと思っていますので、ご注目いただきたいですね。

根岸:おそらく、皆さんそれぞれ何かしら好きなブランドがあって観に来てくださると思うのですが、普段あまり触れてこなかったブランドのキャストがパフォーマンスする姿を見て、きっといろいろと感じるものがある内容になっていると思います。

「ほかのブランドには興味がないから、どうしようかな……」と迷っている方にとっても、純粋なエンターテインメントとして楽しめるライブになっているかなと思いますので、ぜひそちらもご期待いただけたらうれしいです。

梅木馨さんと根岸麻衣子さん

“プロデューサーさんの思い”が東京ドームシティを彩る

――ライブ当日に向けた企画のひとつ、“オリジナルのぼりプロデュース”についても教えていただけますか。

梅木:会場となる東京ドームの周辺には、“のぼり”を掲示できる場所が多数あるんです。通常は、東京ドームシティさんが広告面として販売しているのですが、今回は私どもが一旦すべて買い取りました。

そのうえで、プロデューサーさんには“オリジナルのぼりをプロデュースする権利”をご用意させていただきました。

のぼりのデザインはプロデューサーさんが自由に制作できるようになっています。なお、のぼりは2枚印刷して、1枚は現地に掲示し、もう1枚はお手もとにお届けします。

オリジナルのぼりをプロデュースする権販売

――すてきな思い出および記念品になりそうですね。この“オリジナルのぼりプロデュース”を企画した背景について、お聞かせいただけますか。

梅木:新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、従来のようにフラワースタンドをお受け取りすることが難しくなってしまったことが挙げられます。公演に際してお花をお贈りいただくフラワースタンド文化は、プロデューサーさんとアイドルが双方向でつながることができるすてきな文化だと感じていましたので、なんとかして別の形で継続させていく方法はないものかと模索していました。

そこでヒントになったのが、『アイドルマスター シンデレラガールズ』の10周年ライブ「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS 10th ANNIVERSARY M@GICAL WONDERLAND!!!」の際に、東京・池袋駅で実施した企画“みんなでつくるシンデレラロード”でした。

『アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ』のミニゲーム“ゆるっとふわっと シンデレラ×フォト”にて制作したフォト画像を募集し、それを西武池袋駅地下1階のデジタルサイネージにみんなでつくる広告として掲示したんです。

みんなでつくるシンデレラロード

根岸:そうした企画の発展型として、『アイドルマスター シンデレラガールズ』の単独ライブ「THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS LIKE4LIVE #cg_ootd」開催の際には、名古屋駅の名鉄百貨店本店に位置する“ナナちゃんストリート”を装飾する“みんなでつくるシンデレラロードだがや“という企画も行いました。

前回のみんなで作る広告に加え、アイドルのバナーにあしらう衣装(イラスト)をプロデューサーの皆さんに選んでいただくような企画も行いました。

梅木:こうした前例を踏まえて、今回の「MOIW2023」でも何かしら“みんなでつくる”ことができないか、と考えた結果、“オリジナルのぼりプロデュース”を実施することにしたんです。

――まさにプロデューサーさん、キャスト、運営スタッフが一丸となって本ライブをつくり上げていくことになるわけですね。

梅木:“オリジナルのぼりプロデュース”もそうですが、それ以外にもさまざまな企画をきっかけに、たくさんの人がつながって大きな輪になって広がっていくと良いな、と思っています。

――最後に、ライブ当日に向けてプロデューサーさんへメッセージをお願いします。

梅木:ひとえに、「みんな元気!!!!!」……これに尽きますね。ぜひ現地を訪れていただいて、最後は元気になってお帰りいただければ、それ以上のうれしさはありません。

根岸:ライブ当日の東京ドームには、多数ののぼりが立つことで壮大な景色になっていると思います。また、お隣の東京ドームシティアトラクションズでも遊園地コラボを実施していますので、まさに東京ドームシティ全体が『アイマス』一色で彩られることになります。ぜひ、現地参加できる方は足を運んでいただいて、そうでない方も配信で楽しんでいただければ幸いです!

ファンファーレでは皆さまのご意見、ご感想を募集しております! 編集部にて拝見させていただきました上で、今後の改善のための参考にさせていただきます。記事に寄せられた声を「Fan’s Voice」として紹介させていただく場合もございます!

【編集後記】
待望の「MOIW2023」の開催に向けて、運営を担当する根岸さん、梅木さんをはじめとする運営スタッフの並々ならぬ熱意を直に感じることができた今回のインタビュー。『アイマス』を取り巻くすべての人たちの思いを再確認するとともに、新たな“つながり”を生み、広げていくきっかけともなるであろう本ライブの開催に期待が高まりました!

取材・文/山本雄太郎
1994年生まれのフリーライター。ゲーム、esports関連の分野を中心に、イベントレポート記事やインタビュー記事などを執筆。

©窪岡俊之 THE IDOLM@STER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.