すべての『ONE PIECE』ファンに感動を。「ONE PIECE DAY’23」の舞台裏に迫る!

2023年7月21日と22日の2日間にかけて開催された「ONE PIECE DAY’23」。マンガやアニメ、映画に音楽、ゲーム、グッズといった『ONE PIECE』のあらゆるコンテンツが集結した本イベントについて、その開催経緯から舞台裏、当日の感想などをイベントプロデューサーの花井雄二朗さんをはじめとした4名に伺いました。

7月22日「ONE PIECEの日」に合わせ、2022年に世界同時配信で開催されたイベント「ONE PIECE DAY」。今年は、7月21日に前夜祭として『ONE PIECE FILM RED』の声出し応援上映会、そして22日には豪華キャスト陣が登壇する「スペシャルステージ」の他、初解禁情報の発表や、ここでしか見られない・体験コンテンツを、リアル(会場:東京ビッグサイト)とYouTube配信で届けました。

ONE PIECE DAY’23ビジュアル

今回、イベントプロデューサーである花井雄二朗さん、スマートフォン向けゲームアプリ『ONE PIECE バウンティラッシュ』(以下、『バウンティラッシュ』)チーフプロデューサーのたなPさん、『ONE PIECEカードゲーム』プロデューサーの後藤晃平さん、そして『ONE PIECE』のフィギュアやグッズなどを担当している阪田典彦さんに、イベントの裏側や当日の様子の感想を伺いました。

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花井 雄二朗

バンダイナムコエンターテインメント
第1IP事業ディビジョン第3プロダクション

「ONE PIECE DAY’23」イベントプロデューサー。『ONE PIECE』家庭用ゲーム制作チーム統括を担当しつつ、外部の会社とも連携し『ONE PIECE』のIP戦略を立案、実行する。好きなキャラクターはロロノア・ゾロ。

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たなP(田中 耀平)

バンダイナムコエンターテインメント
第1IP事業ディビジョン第3プロダクション

『バウンティラッシュ』チーフプロデューサー。ゲームの開発から運営、戦略立案に至るまで全体のプロデュースを行う。好きなキャラクターはペローナ。

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後藤 晃平

バンダイ
カード事業部TCG開発チーム

『ONE PIECEカードゲーム』プロデューサー。カードの生産から営業、各所との連携を含めゲーム全体のプロデュースを行う。好きなキャラクターはトラファルガー・ロー。

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阪田 典彦

BANDAI SPIRITS
プライズ事業部

プライズ事業部で20年近くに渡りゲームセンターの景品となるフィギュアなどの企画開発を行う。『ONE PIECE』のフィギュアにも約20年前から関わる。好きなキャラクターはベン・ベックマン。

「ONE PIECE DAY’23」運営陣のインナーテーマは“心のギアを上げろ”

――昨年同様2日間に渡って開催された「ONE PIECE DAY’23」ですが、本イベントはどのような経緯でスタートしたのですか?

花井:昨年度までは新型コロナウイルス感染症の影響もあって、ファンが一堂に会して楽しめるような場所がない状態が続いていたんです。ファンが集まって特別な想いを共有したり、作品を楽しむなかでこんなことをしてみたいと夢見たことを体験したりして、『ONE PIECE』ファンでよかったなと思ってもらえるような場を作れないか、と思ったのがきっかけでしたね。

今年も、「一堂に会して楽しめる」「ファンの夢を叶える」という軸は変わらないのですが、何を切り口にそれを提供していくかについては変わっています。昨年は連載開始から25周年というのがひとつ大きなテーマでしたが、今年はルフィの新形態である「ギア5」の登場にフォーカスを当てています。“心のギアを上げろ”というワードを運営陣のインナーテーマにもしていました。作品の盛り上がりとともにテンションを上げて、楽しく盛り上がっていこう、という感じですね。

「ONE PIECE DAY’23」イベントプロデューサーの花井さん
「ONE PIECE DAY’23」イベントプロデューサーの花井さん

――それぞれの領域を担当されている皆さんが、今回の「ONE PIECE DAY’23」でこだわったポイントを教えてください。

花井:イベントプロデューサーとして念頭に置いていたのは、“心のギアを上げろ”という運営側のインナーテーマに沿って、どうやってファンの方々にワクワクドキドキしてもらい、『ONE PIECE』ってすごい、ファンでよかったと思ってもらえるような体験を作るか、でしたね。

東映アニメーションさんと連携して、「ギア5」の登場シーンをアニメの放送に先駆けて公開し、そこに合わせて『ONE PIECEカードゲーム』やフィギュアなどでも「ギア5」関連のものを一気に解禁して、全体で盛り上がれるような展開を用意しました。

ONE PIECE DAY’23の様子

たなP:『バウンティラッシュ』チームでは、オフライン会場だからこそできる、リアルでのゲーム大会の開催は当初から構想していました。オンライン大会は過去にも開催していたんですけど、そこでファン同士がつながって、すごく盛り上がるんですよね。

『ONE PIECE バウンティラッシュ』チーフプロデューサーのたなPさん
『ONE PIECE バウンティラッシュ』チーフプロデューサーのたなPさん

たなP:そのようなつながりを多くの人に体験してほしい、『バウンティラッシュ』に触れたことのない方がはじめるきっかけになる、大会を見ても楽しい、などさまざまなかたちで盛り上がれるように意識していましたね。

ONE PIECE DAY’23の様子

後藤:『ONE PIECEカードゲーム』のチームとしては、ブースター第5弾で「ギア5」が登場するという情報を「ONE PIECE DAY’23」で出したのはもちろん、これからカードゲームをはじめるファンの方々に向けても力を入れました。

『ONE PIECEカードゲーム』プロデューサーの後藤さん
『ONE PIECEカードゲーム』プロデューサーの後藤さん

後藤:カードゲームって視覚的にはおもしろさが伝わりにくい部分もあると思うので、番組内でただ対戦を行うのではなくて、未開封のパックをその場で開封して、そこから出てきたカードで即席のデッキを組んで戦う形式にしたんです。ルールを知らない人にもワクワク感や臨場感を届けられればと考えていました。

ONE PIECE DAY’23の様子

阪田:グッズまわりは、ほかのブースと比べて参加事業部がすごく多いんです。やっぱり“心のギアを上げろ”ということで、いかに「ギア5」を盛り上げるかということに重点を置いてブースも構成していましたね。

『ONE PIECE』フィギュアやグッズなどを担当している阪田さん
『ONE PIECE』フィギュアやグッズなどを担当している阪田さん

阪田:これまでは、グッズの見せ方は事業部でそれぞれ考えていたんですけど、今回はちょっと違うやり方にしたいなと思って、デジタルサイネージを使って映像とフィギュアを融合して見せられるような方法を採用しました。バンダイナムコグループや関係各社からこんなに多くの『ONE PIECE』のグッズが出ているんだ、というインパクトも伝わるように、全体の見せ方は意識しましたね。

ONE PIECE DAY’23の様子

――イベントを開催してみての率直な感想をお聞かせください。

花井:たくさんのファンの方々に会場へ足を運んでいただき、熱量高く楽しんでいただけたようで、ひとまずホッとしています。そして、集英社さん・東映アニメーションさんはじめ関係各所の多大なるご協力にもとても感謝しています。

また、今回はワールドワイドでの配信も実施しました。これにより、会場には来られなかったファンの方々にも楽しんでいただけて、皆さまのリアクションを現場やコメントで見ることができたのが良かったと思います。ただ、至らない点もあったとは思うので、次回開催に生かしていきます。

――当日のファンの方々の反応はいかがでしたか?

たなP:『バウンティラッシュ』でいえば、初のリアル大会ということで非常に白熱したバトルが繰り広げられました。また、選手同士がコミュニケーションをとっていたのが印象的でしたね。ほかにも、連勝チャレンジバトルやフォトスポットの体験ブースでは、子ども連れのご家族や友達同士など老若男女問わずブースを楽しんでいただけていたと思います。

また、ブースに私が立っていると、「いつもバウンティ楽しんでいます!」「一緒に写真撮ってほしいです!」「応援しています!」などと声をかけてくださってとてもうれしかったですね。ファンの皆さまの温かさを直に感じることができました。

――ちなみに、実現はできなかったものの話に出ていた企画などはありますか?

花井:『ONE PIECE』って、やっぱり食べ物が象徴的じゃないですか。それをサイズ感も含めて完全に再現した料理を出したいと思ったんです。例えば、ルフィが食べている骨つき肉も、本当にあのサイズで、皮もちゃんと伸びるところまでやりたいんですよ。

冒頭にも言いましたが、ファンの方々が作品を見るなかで体験したいと思ったことを良いかたちで実現したいと思っています。作中の料理を食べるのもその夢のひとつだと思うんですよね。

たなP:ギンが泣きながら食べていたピラフとか、自分も食べてみたいですね(笑)。

花井:いいですね。それこそ、皿もスプーンも含めて完全再現したいというか、そこまでやらないと意味がないじゃないですか。ただ、実現に向けて考えるべき問題も多いので今回は見送りました。いつかはやってみたいですね。

それぞれのコンテンツ領域で『ONE PIECE』としての世界観を拡充していく

――ここからは、それぞれが担当されているコンテンツ領域の魅力について教えてください。

後藤:『ONE PIECEカードゲーム』は、やはり原作のイラストやアニメイラスト、本作用に描き下ろしたイラストを使っているのが大きな特徴だと思いますね。そして何より、カードゲームとして楽しんでいただけるように、「カードゲーム好きの人たちに受け入れられるような設計」を意識しています。

例えば、カードのテキストであれば、船長ではなくリーダー、仲間ではなくキャラクターなど、カードの分類などには一般的な表現を使っています。ここは過去の製品とは少し異なる部分で、『ONE PIECE』のグッズとしてすごくいいものになるのが見えていたからこそ、こだわった部分ですね。

『ONE PIECEカードゲーム』のカード

たなP:『バウンティラッシュ』は3Dのリアル頭身のキャラクターたちが動き回るアクションゲームなので、やはりモーション部分ですね。キャラクターたちが技を出す瞬間をかっこいい、あるいはかわいいと思ってもらえるように作っています。

あとは、作品のコアなファンなら分かるよね、みたいなモーションもあえて入れるようにしています。「光月おでん」が実際におでんを食べるとかですね。もちろん、友達と競争して楽しめるような要素を積極的に実装していく、というのも運営するうえで心がけています。

『バウンティラッシュ』の光月おでん

阪田:フィギュアの領域では、『ONE PIECE』ファンの熱量が高まるのにともなって、各事業部、各社の開発レベルが確実に上がっています。先日、ロサンゼルスで開催された「アニメ・エキスポ」でも年々『ONE PIECE』のコスプレイヤーさんが増えていて、そのような状況から受けた刺激が製品にも反映されています。

これは個人的にも楽しんでいる部分ですけど、「ギア5をこの事業部ではこう表現するんだな」みたいな、制作サイドのプライドのぶつかり合いが見られるのがグッズのおもしろいところですね。

『ONE PIECE』のフィギュア

――それぞれの領域で、「これは自分たちのコンテンツならでは」と思う、ある種マニアックなポイントをあげるとしたらどんな部分でしょうか。

阪田:やっぱり世の中であまり商品化されていないキャラクターを取り上げるところですかね。例えば、最近だとガシャポンの「ワンピの実」が人気なんですけど、あれはキャラクターの種類数も多くて、普段グッズ化されないようなキャラクターも出ています。

後藤:カードのラインアップを考える時は、チーム内で話し合うんですけど、スマートフォン向けゲームアプリの『ONE PIECE トレジャークルーズ』(以下、『トレクル』)もすごい数のキャラクターを収録しているので、本当に初登場のキャラクターはなかなかいないんです。でも、ローグタウンに出てきた「ハンガーさん」というキャラは『トレクル』にも出ていなくて、かなり盛り上がりましたね(笑)。

ハンガーさんのカード

――ファンの方々も驚くチョイスですね。

後藤:ハンガーさんのグッズが手に入るのは『ONE PIECEカードゲーム』だけかもしれません。そういうふうに、登場回数の少ないキャラクターがカードになって登場すると、遊んでいる人も「このキャラクターって誰だっけ」みたいになるじゃないですか。そこでまた作品を調べるようなことになったら、『ONE PIECEカードゲーム』として作品に恩返しができるんじゃないかなと思います。

たなP:商品化するとなると、どうしても人気キャラクターに寄りがちではあるんですよね。でも、登場回数の少ないキャラクターもしっかり入れることで、『ONE PIECE』としての世界観が拡充されるんじゃないかと思っています。

『バウンティラッシュ』で言えば、エイプリルフールに「ガイモン」が登場しましたし、アラバスタ編に出てきた「クンフージュゴン」も参戦しました。このキャラクターが出てきたらどうやって戦うんだろう、みたいなことはファンの方々も考えると思うので、その夢を叶える、みたいな部分はすごく意識しています。

『バウンティラッシュ』に参戦した「クンフージュゴン」
『バウンティラッシュ』に参戦した「クンフージュゴン」

盛り上がりが加速する『ONE PIECE』の熱量をさらに高める

――『バウンティラッシュ』、『ONE PIECEカードゲーム』、そして各種グッズ展開における今後の展望を可能な範囲で教えてください。

たなP:4.5周年を迎えた『バウンティラッシュ』は、ダウンロード数も全世界1億を突破しました。今後も『ONE PIECE』としてのおもしろさを追加していくのはもちろん、もっと気軽に友達とつながれるよう、コミュニティを広げていく部分も意識していきたいですね。

後藤:現在、『ONE PIECEカードゲーム』は日本語版と英語版、簡体字版の3言語で展開しているのですが、2024年3月には初の世界大会を開催します。まずはそれを成功させて、世界中にこれだけプレイヤーがいるんだ、ということをアピールして盛り上げていきたいです。カードゲームは人と直接遊ぶからこそ会話が生まれて、『ONE PIECE』の話やカードゲームの話で盛り上がれるのも魅力だと思うんです。それが楽しめる場を提供していくのが我々の使命だと思うので、世界中でイベントを開いて盛り上げていきたいです。

阪田:これはあくまで個人的に、実現できたらおもしろいなと思っていることなのですが、4年くらい前まで、原型師の方々が好きなキャラクターのフィギュアを作って、どれが一番なのか決める「造形王頂上決戦」という大会が開かれていたんですね。今回「ONE PIECE DAY」でさまざまな事業部とのつながりもできたので、そろそろ事業部対抗戦みたいなものをしてもおもしろいな、と思ったんです。

来年も「ONE PIECE DAY」がやれるなら、そういった切磋琢磨できる大会をぜひ、花井船長の元でやりたいですね。判断も早いし、事業部間の壁みたいなものを全部壊してくれたので、花井さんを中心に据えたら何でもできるんじゃないかと。

花井雄二朗さん、たなPさん、後藤晃平さん、阪田典彦

――最後に、『ONE PIECE』ファンに向けたメッセージを花井さんからお願いします。

花井:今後も引き続き、世界中のファンに向けて、『ONE PIECE』のおもしろさをより濃く、体験しやすいかたちで提供していきます。『ONE PIECE』はデジタルなゲームもあればカードゲームもあって、グッズもたくさんあるという、多様な展開をしている作品です。『ONE PIECE』を好きな方でもまだまだ知らない展開があると思うので、そこをさらに知ってもらって、より『ONE PIECE』を好きになっていただくお手伝いをしていければ、と思っています。今後もさまざまな仕掛けを用意していますので、ぜひ楽しみにしていてください。

花井雄二朗さん、たなPさん、後藤晃平さん、阪田典彦

本記事にも登場した『ONE PIECE バウンティラッシュ』のチーフプロデューサー たなP(田中耀平)さんの単独インタビューはこちら↓

『ONE PIECE バウンティラッシュ』に関する情報はこちらをチェック↓

『ONE PIECE バウンティラッシュ』公式サイト

『ONE PIECEカードゲーム』に関する情報はこちらをチェック↓

『ONE PIECEカードゲーム』公式サイト

『Portrait.Of.Pirates ワンピース “WA-MAXIMUM” モンキー・D・ルフィ “ギア5”』はこちらをチェック↓

『Portrait.Of.Pirates ワンピース “WA-MAXIMUM” モンキー・D・ルフィ “ギア5”』

『一番くじ ワンピース BEYOND THE LEVEL』はこちらをチェック↓

『一番くじ ワンピース BEYOND THE LEVEL』

【取材後記】
まさに『ONE PIECE』のすべてがここにある、なイベント「ONE PIECE DAY’23」。イベント全体や各種出展内容を取りまとめる皆さんに集まっていただいたのですが、今回印象的だったのは、4名の和気あいあいぶり。冗談交じりに花井さんを船長と呼びながら楽しそうに話される様子は、『ONE PIECE』に携わる方々の姿としてこれ以上なくしっくりくるものがありました。今回叶わなかった料理の完全再現も、いつかは実現してほしいものです!

村田征二朗
1989年生まれのライター。しゃれこうべ村田、垂直落下式しゃれこうべライターMなどの名でも活動し、コンシューマータイトルやスマートフォン向けゲームアプリのインタビューや攻略記事を執筆。原稿料の8割はプロレス観戦のチケット代に消える。

©尾田栄一郎/集英社
©尾田栄一郎/集英社・フジテレビ・東映アニメーション