各社とのコラボレーション施策やライブイベントなどの開催により、多くのファンから注目を集める「アイドルマスター」シリーズ。それぞれの領域で活躍する社員ふたりが語る、“アイドルがリアルに存在しているかのように感じてもらうため”のこだわりとは!?
「アイマスフューチャー連載」とは?
2023年以降の「アイドルマスター」シリーズを、アニメ/ゲーム/イベントなどの担当者が語る全3回のインタビュー。第3弾となる今回は、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』のライセンスビジネスを担当する本間凌太さんと、『アイドルマスター ミリオンライブ!』のライブイベントを担当する脇田和樹さんが、アイドル活動の可能性を広げる取り組みについて語ります。
ゲームを原点として始動し、(2023年現在)18年間に及ぶ長き歴史を紡いできた「アイドルマスター」(以下、「アイマス」)シリーズ。
そこで描かれるアイドルたちの活動の可能性をさらに広げ、ゲーム領域だけに留まらない活躍を実現すべく、ライセンスビジネスやライブイベント領域において、“期待の斜め上を超える”ための施策がくり広げられています。
『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(以下、『シャイニーカラーズ』)のライセンスビジネスを担当する本間さんと、『アイドルマスター ミリオンライブ!』(以下、『ミリオンライブ』)のライブイベントを担当する脇田さんは、同じ2018年入社。
そんな、ふたりの社員は、「アイマス」の未来に向けてどんな挑戦をしていきたいと考えているのか?
ライセンスビジネスとライブイベント、それぞれの取り組みについてのこだわりを語る場面では、ときには「あえて、“プロデューサーさん”(※1)扱いをしない」ことが、アイドルたちの実在感を高めることがあるのだとも。
お互いに“入社以前からプロデューサーさん”であるからこそ見えてきた、これまでにない挑戦の数々について語っていただきました。
※1 プロデューサーさん:「アイマス」シリーズのファンのこと
本間 凌太
バンダイナムコエンターテインメント
第3IP事業ディビジョン ライセンスプロダクション
脇田 和樹
バンダイナムコエンターテインメント
第3IP事業ディビジョン ニュービジネスプロダクション
2018年入社。グッズのプロデュース担当を経てライブイベントの担当に。現在は『ミリオンライブ』を中心にライブイベントプロデュースに携わる。
“ライブの視察に訪れているプロデューサーの自分”という感覚を味わってほしい
――ここからはアイドルたちの実在感を高めるために、どのようなことを意識されているか伺っていきます。脇田さんからお伺いしたいのですが、「アイマス」では“声優”が出演するライブと、“アイドル”が出演するライブというふたつの軸が存在しますね。それぞれの魅力についてどう解釈されていますか?
脇田:人それぞれライブの捉え方があると思いますから、これは公式の見解ではなくあくまで僕個人の解釈になりますが……。それこそ入社以前、いち“プロデューサー”として参加していたときの感覚で言いますと、声優さんのライブは、「アイマス」の世界を今この場所に一緒に作り出そうとする一体感を味わえる空間なのだと思っています。
アイドル自身になりきって演じてくださる方もいれば、アイドルのパートナーとして舞台に上がってくださる方など、声優さんごとにさまざまな方法でアイドルを表現されていると思っています。そして参加する“プロデューサーさん”たちも、いろいろな方法で愛情表現をしてくださっている……僕は、そんなそれぞれの“アイマス愛”を感じるために、ライブに足を運んでいた節があります。
そうした“アイマス愛”が集まることで、「今日、この場を『アイマス』一色にしよう!」という一体感が生まれ、非日常的な空間が形成される――同時に、その場にいる全員が魔法にかけられたような感覚に陥ってしまう、あの感じが本当に素敵だなと思っているんです。
――脇田さんのお話を踏まえると、逆に“アイドル”によるライブは、より直接的な実在感を楽しむ空間とも言えそうですね。
脇田:そうですね。アイドルたちが普段生活している世界からこちら側に飛び出して歌って踊ってくれる、そんな空間だと僕は捉えています。
先日開催した『765 MILLIONSTARS LIVE 2023 Dreamin’ Groove』(以下、『Dreamin’ Groove』)では、会場にお越しいただいた“プロデューサーさん”たちを、あえて“プロデューサーさん扱いしない”という、今までにない演出にも挑戦したんです。
――“あえてプロデューサーさん扱いしない”という演出を採った経緯や、狙いを教えていただけますか?
脇田:声優さんのライブでは、「会場にお越しのプロデューサーさん」に向けたアナウンスやMCをする例が多いですが、一方、『Dreamin’ Groove』では、「ご来場いただいた皆さま」とアナウンスをしたり、アイドルたちによるMCでも「ファンの皆さん」に呼びかけていただきました。
もちろん、会場を訪れてくれているのは“プロデューサーさん”たちに変わりはないのですが、僕の中では“自分の育てたアイドルが、応援してくれるファンに向けて歌い、踊っている姿を、プロデューサーとして視察する”という感覚を味わってほしいという狙いがあったんです。
――“プロデューサーさん”なら一度は夢見るであろう、ある意味究極のロールプレーだと思います。
脇田:そう受け止めてくださる方が多かったらうれしいです。そのような理由で、『Dreamin’ Groove』は、2018年から2020年にかけて開催された『THE IDOLM@STER MR ST@GE!! MUSIC♪GROOVE☆』(以下、『MUSIC♪GROOVE☆』)とひと味違った別ベクトルの発展形として作り上げていった部分があります。
『MUSIC♪GROOVE☆』は、“MR=ミックスド・リアリティ”という言葉のごとく、あらゆる技術をミックスさせて実在感を生み出すというコンセプトでしたが、『Dreamin’ Groove』では“MR=モア・リアリティ”として、ライブを見守ってくださる皆さんの感情までも巻き込んで実在感を醸成する狙いがあったんです。
会場にお越しの皆さんには、“プロデューサー”として徹していただけるように、『MUSIC♪GROOVE☆』ならではの演出であったアイドルとの掛け合い要素はあえてなくしました。ライブ告知の段階から一貫して、「ぜひ彼女たちの視察にお越しください!」という表現を使わせていただいていたのもそのためです。
――正統進化の枠に収まらない、挑戦的な試みが多数盛り込まれていたわけですね。
脇田:“プロデューサーさん扱いしない”とは言いつつ、“プロデューサーさん”はあくまでもあなただけだから、ぜひ現場をちゃんと見守ってあげてください……そしていざ会場を訪れたら自分に向けてではなく、ファンの皆さんに向けてパフォーマンスするアイドルたちがいますから、と。
言うなれば、『アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ』のコミュ(シナリオパート)のように、ハラハラドキドキしながらアイドルたちを見守る気持ちを現実で味わってほしいという思いがありました。
“プロデューサーさん扱いしてほしい時と、そうじゃない時がある”という心理
――続いて、ライセンスビジネスについてはいかがでしょう。本間さんは、アイドルやコラボレーション先の選定などにおいて、どんなことを意識されていますか。
本間:コラボレーション施策はクライアントさんがあってのことなので、ときにはこちらの提案と先方の希望が合致しないこともあります。
そうした中でも、“プロデューサーさん”、クライアントさん、アイドルのみんなが笑顔になれるようなコラボレーションを実現させるために、まずクライアントさんがどんな悩みを持っているかをお伺いし、「でしたら、こんなアイドルはいかがですか?」という会話は必ずさせていただくようにしています。
加えて、アイドルを先方に提案する際には、彼女ら・彼らのストーリー性を感じてもらえるようなプレゼンテーションを心掛けています。例えば、「花キューピットさんと『シャイニーカラーズ』がコラボレーションします!」となったときに、アルストロメリア以外のユニットが出てきたら大多数の“プロデューサーさん”は不思議に思うかもしれません。
だからこそ、ストーリー性を伝えるためにも、クライアントさん向けの資料は必ず作るようにしています。「このアイドルたちはこういう個性を持っているので、このようなコラボレーション形式がいいと考えているんです」というお話は、必要不可欠ですね。
――『シャイニーカラーズ』のコラボレーション施策といえば、発表時の公式リリース文も特徴的ですよね。
本間:ありがとうございます。そこは、自分が担当になってから気を遣っている部分でして、例えば“北海道から沖縄まで日本全国約4,100店からなる花店の配達ネットワーク「花キューピット」と283プロダクション所属ユニット「アルストロメリア」のコラボが決定しました。”と、実際の芸能事務所から発表されるニュースリリースのような文体を踏襲するよう徹底しています。
これは個人的な趣味に近いのですが、自分自身が“プロデューサー”だからこそ、自分のことを“プロデューサーさん”扱いしてほしい時と、そうではない時があって……。
例えば、“プロデューサーの皆さんこんにちは! 「花キューピット」と「アルストロメリア」のコラボが決定しました!”と発表したとしたら、なんだかむず痒くないですか?
脇田:わかります。あくまで、アイドルたちの新しいコラボレーション施策の案件を、これから外の人たちへ向けて一緒に発表しましょう! といったほうが、“プロデューサーさん”の心理的にはうれしいと思うんですよね。
本間:言ってしまえば、現実の芸能事務所がアイドルプロデューサー宛に「プロデューサーへ! コラボレーションが決まりました!」なんてリリース、絶対に書かないじゃないですか。細かい部分ですが、そのような文体ひとつにもこだわって、実在感を高めていくように意識しています。
――“プロデューサーさん”視点での工夫が随所に盛り込まれていることが、よくわかりました。
本間:僕たちの仕事は、さまざまな面でプロデューサーの皆さんに助けていただいているお陰で成り立っていますので……。クライアント側に“プロデューサーさん”が紛れ込んでいることがあったり、「『アイマス』といえば、“プロデューサーさん”たちが熱心なことで有名ですよね」といったかたちで覚えてくださっている人も多かったり。
また、SNS上などでも、「こんなコラボレーションが実現したらいいんじゃないか」と積極的に発信してくださる“プロデューサーさん”が多くいらっしゃるので、そういったご意見も参考にしながら、コラボレーション先やアイドルなどを選定しています。
“プロデューサーさん”も、まだそうじゃない人も巻き込んで“みんな笑顔”に!
――今後、おふたりはそれぞれの立ち位置からどのような挑戦をしていきたいと考えていますか?
本間:インタビュー前半でもお話しさせていただきましたが、「アイマス」をきっかけに“プロデューサーさん”の生活がより豊かになるようなコラボレーション施策を手掛けていきたい、という部分がひとつ。
それから、いつか“プロデューサーさん”たちとともにイチからコラボレーション施策を作り上げていくようなチャレンジもできたらと考えています。起用するアイドルをはじめ、コラボレーション候補の選定、プレゼンテーションの作戦会議なども含めて、一緒にタイアップを実現させていくような試みはしてみたいですね。
脇田:これはライブイベントに限った話ではないのですが、今後は、「まだ自称するのはちょっと……」と躊躇しているような、いわゆる“プロデューサーさん予備軍”の方々にもアピールしていく機会を増やしていきたいと思っています。
直近では『THE IDOLM@STER M@STERS OF IDOL WORLD!!!!! 2023』にて実施した「オリジナルのぼりプロデュース」のように、偶然その場を通りがかった人にも、自分の担当アイドルの魅力を伝えていけるようなプロデュースの場を提供していきたいと思っています。
もっとも、「オリジナルのぼりプロデュース」では、諸々の調整に時間がかかってしまった結果、プロデューサーの皆さんには年末の忙しい時期にデザインの制作をお願いすることになってしまいました。この場を借りてお詫びいたします。今後、改善してまいります!
――最後に、今後のイベントやコラボレーション展開を楽しみにされている方々に向けて、メッセージをお願いします。
脇田:運営側として関わらせていただいているなかで、プロデューサーの皆さんにはいろいろと至らぬ部分やご迷惑をおかけしている部分もあると思います。
若輩者ではございますが、ライブイベントを担当させていただく人間として、“関わる人すべてを笑顔に”という気持ちは、今後もブレずに持ち続けていく所存ですので、引き続きよろしくお願いいたします。
まずは、2023年11月4日・5日に開催する「ミリオンライブ」10周年記念ツアー第3幕、『THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 10thLIVE TOUR Act-3 R@ISE THE DREAM!!!』と、2024年2月24日・25日に開催する第4幕『THE IDOLM@STER MILLION LIVE! 10thLIVE TOUR Act-4 MILLION THE@TER!!!!』にて、皆さんのプロデュースをお願いしたく存じます!
今は『ミリオンライブ』にとって記念すべき1年の真っ最中です。プロデューサーの皆さんと一緒に最高の1年を作っていけるよう、これからも精進します!
本間:引き続きクライアントとも手を取り合い、ライセンスビジネスをがんばってまいります。この記事が公開される9月には、斑鳩ルカ×SHIBUYA109 POP UP SHOPをはじめ、さまざまなコラボもスタートします。
これからも皆さんの担当アイドルが活躍できるよう、多数の企画が鋭意進行中です。ぜひ楽しみに待っていてください。“プロデューサーさん”のことを頼りにしていますので、今後ともよろしくお願いいたします!
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【取材後記】
ライセンスビジネスとライブイベント、それぞれでの具体的な取り組みを語るうえで共通して「あえてプロデューサーさん扱いをしない」というキーワードを用いていた本間さんと脇田さんでしたが、おふたりいわく「まったくの偶然」とのこと。今後も引き続き、アイドルと“プロデューサーさん”という「アイマス」の基本構造は崩さず、アイドルたちの“実在感”を高めていきたいそうです。
「アイマス」の未来を担う社員として、熱き思いを語ってくださったおふたり。全3回にわたってお届けしてきた“アイマスフューチャー連載”を締めくくるには、まさにピッタリなお話を聞くことができました!
©窪岡俊之 THE IDOLM@STER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.
2018年入社。「アイマス」シリーズ全般のライセンスビジネスを経験したのち、2022年度より『シャイニーカラーズ』のライセンスビジネスを担当。