「学園アイドルマスター」を彩るアイドルたちの知られざる関係性【前編】 紫雲清夏と葛城リーリヤは「コインの表と裏のような関係性」!?

「学園アイドルマスター」に登場するアイドル同士の関係性について、制作プロデューサー陣が大いに語ります! “関係性が気になるアイドルたち”のリクエスト募集企画で上位にランクインした3組に関する裏話も!?

2024年5月16日にリリースされた『アイドルマスター』(以下、『アイマス』)シリーズの完全新作、「学園アイドルマスター」(以下、「学マス」)は、アイドル一人ひとりにとことん向き合いながら育成が楽しめるスマートフォン向けゲームアプリ。

アイドルとプロデューサーの1対1のコミュニケーションに重きを置いている「学マス」ですが、気になってしまうのが「この子とこの子は仲がいいの?」「このふたりはお互いをどう思っているの?」といった、アイドル同士の横のつながりです。

そこで今回は、本作のメインプロデューサーを務める小美野さん、そしてアシスタントプロデューサーを担当する佐藤さんと山本さんのお三方に、「学マス」に登場するアイドルたちの関係性や、知られざる裏話などをたっぷりと語っていただきました。

本インタビューに先駆けて読者の皆さまから募集した“関係性の気になるアイドルたち”で上位にランクインした3組についても詳しく伺っていますので、すでに「学マス」を遊んでいる方はもちろん、まだ触れたことのない方も、ぜひ最後までチェックしてみてください!

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小美野 日出文

バンダイナムコエンターテインメント
AE事業部 765プロダクション

「学マス」メインプロデューサー。過去には家庭用ゲームソフトやスマートフォン向けゲームアプリの開発にも携わる。2019年~2021年は、「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」の担当代理も務めた。

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佐藤 大地

バンダイナムコエンターテインメント
AE事業部 765プロダクション

「学マス」アシスタントプロデューサー。2020年に入社し、『アイマス』シリーズのライブイベント補佐や、『アイマス』シリーズ公式YouTubeチャンネル「アイドルマスターチャンネル」の立ち上げに携わった後、「学マス」チームに合流。

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山本 亮

バンダイナムコエンターテインメント
AE事業部 765プロダクション

「学マス」アシスタントプロデューサー。2020年に入社し、『アイマス』シリーズのゲーム運営に携わった後、「学マス」チームに合流。

「学マス」のテーマは“成長”。『アイマス』らしさを抽出&再構成してたどり着いた

――まずは、「学マス」とはどのような作品なのか教えてください。

小美野:「学マス」は、2024年5月16日にサービスを開始したスマートフォン向けゲームアプリです。『アイマス』シリーズにおける、完全新作となります。アイドル養成学校“初星学園”を舞台にアイドルたちの成長を描く、アイドル育成シミュレーションゲームです。

――「学マス」という作品のテーマを一言で表すとしたら、どんな言葉が当てはまると思いますか?

小美野:まさに“成長”ですね。伏見つかさ先生と対談したときにもお話ししたのですが、アイドルたちの成長過程を丁寧に描いていくことが、「学マス」のひとつのテーマです。

シリーズの完全新作を制作するにあたり、自分なりに“『アイマス』らしさ”を構成している要素を抽出し、整理していくことからはじめました。最終的に、“アイドルたちの成長物語”としての魅力を大切にしていきたいと思い、「学マス」のコンセプトの中核に“成長”を据えることを決めたんです。

(左から)「学マス」アシスタントプロデューサーの佐藤さん、メインプロデューサーの小美野さん、アシスタントプロデューサーの山本さん

みずみずしいビジュアルとともに、それぞれの個性をカードゲームで表現!

――3組の関係性を伺う前に、「学マス」アイドルへのこだわりについてお聞きします。アイドルの設定やデザインを考えるうえで、大切にしたテーマやポイントはあるのでしょうか。

小美野:開発初期に、まずは「学マス」のビジュアル面のトーン&マナー(一貫性を持たせるためのルール)を決めよう、という話になり。そこでは“スタイリッシュ”というキーワードが持ち上がったのですが……。

「『学マス』では“スタイリッシュ”をキーワードにしたいと思います!」と坂上(陽三)さんにお話ししたら、ものすごくお叱りを受けました(苦笑)。「なんとなく言いたいことは分かるけど、“スタイリッシュ”って具体的に何なの? カッコいい系、オシャレ系、いろいろあると思うけど、イメージが分散するワードは危険だよ」というご指摘を受けて、返す言葉もありませんでした。

そこであらためてチーム内で議論し、最終的に打ち出したコンセプトが“みずみずしさ”でしたこの言葉には、まだまだ成長過程にあるアイドルたちを生き生きと描いていくという決意を込めています。ビジュアル全体としてのビビッドな色使いから、ライブシーンの臨場感に至るまで、“みずみずしさ”を随所で感じていただけるようにこだわっています。

佐藤:例えば、アイドルたちの立ち絵(メインビジュアル)に関しても、「どのような色使いをしたら“みずみずしさ”を表現できるのか?」と長期間議論して形にしていきました。キャラクター原案は南野あき先生、へちま先生に共同で担当いただいているのですが、お二人のイラストがもつテイストをひとつのトーン&マナーにまとめていく際には、両先生からもたくさんのアドバイスをいただきつつ方向性を決めていきましたね。

小美野:特にこだわった点は、目の虹彩などの塗り方と、頭頂部の髪のハイライト表現ですね。よく見ていただくと、かなり斬新な方法を採用していることに気付いていただけると思います。

――ゲームシステムやデザイン面における、こだわりポイントも教えてください。

山本:アイドルごとの性格であったり、長所・短所であったりを、どのようにゲームデザイン上に落とし込んでいくのか、という点はかなり気を遣いながら作り上げていった部分です。ですから、皆さまから好評のお声を多数いただけて非常に嬉しく思っています。ひとえに、アプリ開発を担当してくださったQualiArtsさんのチューニングの賜物ですね。

例えば、早熟型な花海咲季であれば、序盤のレッスンパートを楽々クリアできるけれど、最終審査で1位を狙ったり、A+以上の高評価を狙ったりしようとすると、途端に難しくなる……といったように、キャラクターデザインとゲームの操作感覚をうまく噛み合わせることができたと思います。

また、咲季のプロデュースパートの最終試験では、彼女の最愛の妹にして絶大なポテンシャルを秘めるライバル、花海佑芽が立ちはだかります。

大器晩成型の佑芽が終盤に爆発的な追い上げをみせ、姉の咲季を脅かすという花海姉妹の関係性も上手にゲーム性に落とし込むことができ、多くのプロデューサーさん(※1)からも大きな反響をいただきました。

※1 プロデューサーさん:『アイマス』シリーズのファンのこと

小美野:山本には「学マス」の開発がかなり進んだタイミングでチームに入ってもらったのですが、プロデュースパートのチューニングに関して、カードゲーマー目線でさまざまな意見を出してもらえて助かりましたね。山本はもともとトレーディングカードゲームが好きで、そのあたりの知見がとても深いんです。「このスキルカードはこの段階で入手できていいのか?」「このスキルカードは強すぎるのでは?」というように……。

▼「学マス」をダウンロードする!

――ここまでは「学マス」で大切にされたコンセプトや、ビジュアル、ゲームシステム面でアイドルの個性を際立たせる工夫についてお話いただきました。ここから、読者から寄せられた「関係性の気になるアイドル」でトップにランクインした3組について伺っていきます。3位から1位まで、たっぷりと語っていただけたらと思います!

関係性が気になるアイドル<3位>:“有村麻央&姫崎莉波”は自然体でいられる関係性!?

――リクエスト第3位には、“有村麻央&姫崎莉波”の組み合わせがランクインしました。ふたりは、それぞれどのようなアイドルなのでしょうか?

小美野:麻央は3年生で、元子役の経験があり、歌劇の男役スターに憧れを持っています。ただ、思ったように身長が伸びなかったり、彼女自身とてもかわいらしい見た目をしていたりと、自分が理想とする“カッコいいアイドル”になかなか近づけないことに悩んでいる女の子です。

世の中には、自分のやりたいことと自分の得意なことが一致しないことに悩んでいる方が多くいらっしゃると思うんです。しかし、理想と得意なことのどちらかを諦めざるを得ないのかといったら、実はやり方次第で両立はできるのではないか……そんな思いで作り上げていった、“カッコいいとかわいいの融合”がコンセプトのアイドルです。

佐藤:莉波も同じく3年生で、過去に所属していたユニットの中では妹キャラで売り出していたという経歴があります。しかし、もともと大人びた容姿や性格だったので、ユニット内でのキャラ付けが噛み合わず、人気が出なかったという苦い経験をしているんです。

3年生になるまで努力はし続けていたものの、まったく芽が出ず本人的にも諦めようかなと思いはじめたタイミングで、幼馴染でもあったプロデューサーと再会。彼が幼少期の莉波に感じた印象をもとにした、「あなたの魅力はここなんです」という揺るぎないプロデュース方針のもと、その才能を開花させていく、というコンセプトのアイドルになっています。

――現在プロデュース可能な10名のアイドルの中では、麻央と莉波だけが3年生コンビですが、付き合いも長いのでしょうか?

佐藤:3年間、クラスがずっと一緒だったので、変に意識をしないというか、お互いに気を遣わなくて済む関係性です。ほかに3年生というと生徒会長の十王星南がいますが、莉波は星南に対してアイドルとしての実力差を勝手に感じている部分があって、星南に対しては敬語だったりもします。その点、麻央に対しては自然体で接することができると……。

小美野:麻央は寮長で、莉波は生徒会の書記。どちらも苦労人ポジションで、後輩からは慕われている立場ですし、お互い自分の中の枠に囚われていて無理をしているところも似ています。境遇が似ているからこそ、通じ合える部分はあるのかなと思いますね。

決して年がら年中一緒にいるわけではないんですけど、麻央と莉波は学園内でのコミュニケーションも自然と多くなりがちです。そういった意味では、いつも一緒にいる「親友」というよりも、ふとしたときに「本音で話し合える間柄」なのかなと思っています。

佐藤:このインタビューが公開されたタイミングでは、すでに開催済みのイベントになっているかと思うのですが、莉波と麻央がサマースクールに通う姿を描いたストーリーイベントがありまして。その中で、ご飯を食べまくる莉波を麻央が「やれやれ」と見守るといったシーンもあります。普段は“お姉さん”然とした莉波ですが、麻央と一緒にいるときはかなり自由な振る舞いを見せていますね(笑)。

――ちなみにアイドルたちの学年設定は、いつごろどのように決めていったのでしょうか?

小美野:初期の段階では具体的な学年の設定は決めておらず、ある程度キャラクター設定が固まった段階になってから、学年設定を確定していきました。

例えば、「そもそもアイドルとしての基礎技術が足りていない」といった悩みは1年生でなければ描きづらいですし、「基礎は足りているけれどアプローチを間違えていた」という過程ありきの問題は3年生だからこそ描ける物語だと思います。描きたいお話があり、そこに対してふさわしい学年を付け加えていった形です。

……なお、まだ2年生が登場していない理由はきちんとあります! そのうち明かせるタイミングが来るかと思いますので、楽しみにしていてください。

関係性が気になるアイドル<2位>:“月村手毬&葛城リーリヤ”は痛烈カウンターパンチが飛び交う仲!?

――続いて、2位となった“月村手毬&リーリヤ”の関係性についてお伺いします。まずは手毬がどのようなアイドルなのかを教えてください。

佐藤:手毬は、二面性のあるトラブルメーカーです。表向きはクールでストイックな印象ですが、裏ではおいしいものに目がなかったり、甘えん坊だったりと、ギャップの振り幅が大きいですね。プロデューサー目線で言うと手のかかるところはありつつも、アイドルを目指す気持ちは純粋で真っすぐなので、思わず応援したくなってしまう、そんな女の子だと思います。

最初はクールさを主軸に作っていったのですが……。シナリオ&キャラクター設定を担当していただいた、伏見つかさ先生とともに方向性を固めていくうちに、気付いたら属性満載の話題に事欠かないアイドルになってしまったような気がしています(笑)。

手毬とリーリヤは1年1組のクラスメイトなのですが、プロデュースシナリオやサポートカード上での絡みは特にありませんでした。リクエストで2位にランクインしたのは、やはり初のストーリーイベントとして5月に開催した「1年1組のアイドルたち」のイベントコミュが影響しているのだろうなと思います。

――「1年1組のアイドルたち」のイベントコミュでは、クラス懇親会に非協力的な態度をとった手毬に対して、リーリヤがビビりながらも毅然と説得するという、印象的なシーンがありました。

佐藤:そうですね。その中で、リーリヤが手毬に対して「足を引っ張らないでくださいね?」と言い放つ……この発言は、清夏の声真似によるイタズラで、実際にリーリヤが言ったことではないのですが、手毬はリーリヤから言われたのだと勘違いしてしまいます。

手毬には、“予想外な出来事に弱い”という一面があり、ゲーム内でのプロデューサーとの会話でも、突然の言葉に思考が一瞬停止してしまうようなシーンがあります。つまり、リーリヤとの一幕も、リーリヤのことを勝手に無害な存在だと思いこんでいたところに、突然のカウンターパンチが飛んできて固まってしまったわけですね。

手毬は不器用なので、他人とのコミュニケーションがあまり得意ではありません。手毬の声優を担当してくださっている小鹿なおさんにも、「彼女は、基本的には会話をすぐに終わらせたがる傾向があります」とお伝えしています。したがって、他人との距離の詰め方も、しばしば間違えてしまうところがあるんです。

――クラスメイトという以外は特につながりがないようにも思える手毬とリーリヤですが、このふたりの関係性を掘り下げる構想は当初からあったのでしょうか?

佐藤:清夏とリーリヤのように、ガッツリ絡ませようと最初から考えていたわけではありませんでした。ただ、意外と芯の強いところがあるリーリヤのことを手毬は認めている部分もありますし、リーリヤも手毬のことを嫌ってはいないと思います。

お互い頑固というか、ストイックな一面があるという意味でも近しいところがありますし、もともと手毬とリーリヤの相性は良いのではないかと思っていて。そこを「1年1組のアイドルたち」のコミュの中で、伏見先生がおもしろく描いてくださったので、我々としても解像度が一層高まったと感じています。

小美野:確かに、イベント報酬のサポートカード「第2回教室パーティー!」のコミュを伏見先生に書いていただく際にも、「手毬とリーリヤは意外と仲良くなる雰囲気があるから、もっと距離を詰めさせてもいいのかも?」と議論した記憶がありますね。

関係性が気になるアイドル<1位>:“紫雲清夏&葛城リーリヤ”はコインの表と裏!?

――それでは、1位に輝いた、“紫雲清夏&葛城リーリヤ”の関係性について伺います。まずは、このふたりがどのようなアイドルなのかを教えていただけますか?

小美野:まず清夏については、見た目どおり元気で明るいギャルです(笑)。レッスンをサボりがちなところから、不真面目でやる気なさげに見える子でもあるのですが……実は過去にバレエで世界の舞台を経験したこともあり、そのあたりが現在の彼女にどう絡んでいくのか、という部分が見どころのひとつになっているアイドルです。

一方のリーリヤは、スウェーデン出身の女の子です。初星学園に入学するまで歌やダンスは未経験だったものの、アイドルに強い憧れを持っており、頑固で生真面目で、尋常じゃないほどの努力家でもあります。

ふたりとも1年生ですが、入学前からの親友でもあります。昔、清夏がバレエの関係でスウェーデンに行った際にリーリヤと出会い仲良くなります。

リーリヤも日本のアニメに興味があり、日本に訪れる機会があった際には一緒に遊んでいました。それであるとき、ふたりで初星学園のライブを観に行ってアイドルに憧れ、「一緒にアイドルになろうね!」と誓って初星学園に入学したという経緯です。

――初星学園に入学する以前から親友関係だったふたりですが、キャラクター設定を考えていくうえで、当初から「このふたりは仲良しである」と決まっていたのでしょうか?

小美野:キャラクター設定を作りはじめた段階では、親友という設定はありましたが、ここまで親密な関係にしようとは考えていませんでした。「学マス」はアイドル一人ひとりにフォーカスして、プロデューサーとの1対1の物語を描いていくというのが基本方針ですので、アイドル同士の横のつながりは、サポートカードのコミュ(シナリオパート)やイベントで補完していくつもりでした。

ただ、キャラクターデザインを起こしていく段階で、清夏とリーリヤはより親密な関係性とする方向性になりました。登場アイドルたちが全員並んだ際のビジュアル的な印象を考えたうえでも、清夏とリーリヤのお互いの魅力をさらに引き立てるという意味でも、このふたりはセットで考えていくのが良いんじゃないか、と。

――清夏とリーリヤの関係性において、魅力となっているポイントや、今後の展開について教えてください。

小美野:清夏とリーリヤで抱えている悩みや越えるべき壁はそれぞれまったく違いながらも、ふたりはコインの表と裏のような関係性になっていると思っています。

もちろん、プロデュースシナリオはそれぞれ独立したお話になっているので、ふたりの話を追うことでひとつの物語になる、といった形式とはまた違うのですが……。親友のふたりが、それぞれの切り口からトップアイドルという目標に向かっていく姿を描くことで、より大きな感動や没入感が生まれるような構造を作りたかったんですね。このあたりは、複雑になりすぎないよう、シナリオチームの雨宮さんともかなり密に話している部分です。

現段階で実装されている親愛度シナリオでは、ふたりが最初のステップを踏み出したところまでを描いたに過ぎません。清夏は外見と内面でギャップがある子ですし、リーリヤも他人に対してなかなか踏み込めない性格なので、実はお互いに言いたいことが言えない部分もあったりします。

そうした、“親友だからこそ本音が言いづらい”という絶妙な関係性が、今後どのようになっていくのか、注目してほしいと思います。

続く後編では、3位以内に入らなかったアイドルの関係性について語ります! 運営陣の間では度々“解釈バトル”が勃発……⁉︎  

取材・文/山本雄太郎
1994年生まれのフリーライター。ゲーム、eスポーツ関連の分野を中心に、イベントレポート記事やインタビュー記事などを執筆。

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