前編に引き続き、「学園アイドルマスター」に登場するアイドル同士の関係性について、プロデューサー陣が明かします。“関係性が気になるアイドルたち”のリクエスト募集企画で上位にランクインした3組以外にも、関係性が気になるアイドルはたくさんいる……ということで、後半戦として、ライバルアイドルとの関係についても語っていきます!
『アイドルマスター』(以下、『アイマス』)シリーズの完全新作、「学園アイドルマスター」(以下、「学マス」)。本作に登場するアイドルを語る後編では、ライバルアイドルとの関係性、恐ろしいほどに白熱するという運営陣の“解釈バトル”、お三方が今後挑戦してみたいことなどについて聞きました。
小美野 日出文
バンダイナムコエンターテインメント
AE事業部 765プロダクション
佐藤 大地
バンダイナムコエンターテインメント
AE事業部 765プロダクション
「学マス」アシスタントプロデューサー。2020年に入社し、『アイマス』シリーズのライブイベント補佐や、『アイマス』シリーズ公式YouTubeチャンネル「アイドルマスターチャンネル」の立ち上げに携わった後、「学マス」チームに合流。
山本 亮
バンダイナムコエンターテインメント
AE事業部 765プロダクション
「学マス」アシスタントプロデューサー。2020年に入社し、『アイマス』シリーズのゲーム運営に携わった後、「学マス」チームに合流。
“十王星南&藤田ことね”、“篠澤広&秦谷美鈴”など、気になるコンビはまだまだ存在、その関係性は?
――トップ3にランクインしたアイドル以外でも、注目の組み合わせがあればぜひ教えてください。
山本:“十王星南&藤田ことね”の関係性について、この機会にお話ししたいと思います。「学マス」にはライバルアイドルとして、花海佑芽、秦谷美鈴、十王星南の3名が登場しています。咲季と佑芽は姉妹で、手毬と美鈴は過去にユニットを組んでいたことがある間柄なのですが、ことねと星南だけは少々特殊な関係性なんです。
山本:学園一のアイドルとの呼び声が高く、学園長の孫娘として英才教育を受けてきた星南。そんな彼女が、ことねには一目置いており、「私のプロデュースを受けなさい」といった調子で追いかけ回すんですね。しかし、ことねとしては「なんで生徒会長に目をつけられてるの!?」と不可解でしかなく、星南はことねから距離を置かれてしまう。
ことねは自分のことを落ちこぼれだと思っていますし、自分に自信がない。それにリアリストな一面があるので、星南のような雲の上の存在から熱視線を向けられても、「何か裏があるんじゃないか」と勘ぐってしまうんです。一方の星南は星南で、ことねのそういった感情に気付けない鈍感さがあり、いつまで経っても溝が埋まらないわけです。
――ことねと星南の関係性が描かれているサポートカードのコミュでは、星南の意外な一面が垣間見えますね。
小美野:当初は生徒会長としてのカッコいい星南を前面に出していき、ゆくゆくはちょっと抜けたところも描いていこうと話し合って作っていたんですけれども……。
山本:星南の化けの皮が剥がれるのが、思っていたよりもだいぶ早かったですね(笑)。今となっては、星南がカッコいい生徒会長として皆さまに認識されていた瞬間って、サービス開始前に配布した「初星学園パンフレット」を開いたあの瞬間だけだったんじゃないかと思います。
パンフレットを見ていただくと、見開き1ページ目に、凛とした立ち姿とともに新入生向けのメッセージを送る星南が写っていますので、まだ見たことがない方は、ぜひ彼女の勇姿をチェックしてください。
――いわゆるメインストーリーに当たる初星コミュの中では、アイドルとしての秘めたポテンシャルを発揮する、ことねの姿が描かれています。星南もそういったことねの潜在能力に惚れ込んだということなのでしょうか?
小美野:ことねの中に眠る身体能力に目をつけたのも間違いないとは思いますが……。そもそもアイドルとして最も大切なことって、“人に好かれること”だと僕は思っていて。仕事柄、さまざまなリアルライブを観に行く機会があるのですが、パフォーマンスの質以上に、演者さんの感情や熱量の込め方にハッとさせられることが多いんです。
そういう意味では、星南はどちらかというとアイドルをアーティスト的に、パフォーマンス能力の良しあしで捉えがちな部分があるので、“人に好かれる”という天性の才能を持つ、ことねがなおさら魅力的に映ったのだと思います。
だから、星南は人を見る目はものすごく良いものを持っているんですよ。ただ、スカウトの仕方が鬼のように下手というだけで……。
山本:逆に言えば、そういった星南の強引な勧誘に対して何の疑問も持たずについて行ってしまった子たちが、佑芽や美鈴、千奈なんですよね。
――記事前編では、莉波目線の星南について佐藤さんが語られていました。逆に星南目線での莉波や麻央に対する印象は、どのようなものだと考えていますか?
小美野:莉波や麻央がプロセスを大切にするタイプなのに対し、星南はどちらかというと結果を求めるアイドルだと思います。そういったアイドルに対する考え方では、相容れない部分もありそうです。きっと星南は、莉波や麻央を見ていて「能力的には優れたものを持っているだけに、アプローチの仕方を間違えているのがもったいないな」と思っているのではないでしょうか。
山本:逆に、星南と近い考え方を持っているアイドルを挙げるとするならば咲季だと思います。シビアな目線で結果を重視するところは似た者同士なのかもしれません。
そんな星南と咲季が、似ているようで明らかに違う点が、「もうこれ以上、自分の成長は見込めないかもしれない」という段階まで行き着いた後のアプローチなんです。
そこで星南は他者のプロデュースという新たな方向性に展開していきますが、咲季は「自分は早熟型ですぐに成長限界にぶつかる」と自覚したうえで、なおもアイドルとしてトップの座を獲りにいこうとするわけです。通じ合えそうな部分はありながらも、別の道を歩んでいこうとするふたりが絡んだときに何が起こるのか、という部分は今後ぜひ描いていきたいですね。
――ライバルアイドルたちと、そのほかのアイドルたちの関係性がどう発展するのかは今後も気になるところです。ほかにも、「このふたりは意外と相性がいい」という組み合わせがあれば教えてください。
佐藤:“篠澤広&秦谷美鈴”は、意外と良い相性のふたりかもしれません。広は14歳で海外の大学を卒業した天才少女で、学問の道を極めることができたからこそ、あえて自分に最も不向きだと思われるアイドルの道に挑戦する変人。対する美鈴はのんびりマイペースで、他人の世話を焼いたり、甘やかしたりするのが大好きな少女です。
佐藤:ふたりともマイペースという意味では我が強いのに、不思議と波長が合うような面もあって……。歩みだした理由も、目指す先も違うのに、なんとなく歩幅が合っているのかもしれない、といったおもしろい関係性なんですよね。
「ほっとけないクラスメイト」というサポートカードのコミュでは、学園内で迷子になった広と美鈴がベンチでのんびり過ごすことになったり、「マイペース、マイライフ」では、ぽかぽか陽気の中、ふたりでお昼寝をしていたりと、相性の良さが随所で描かれています。
山本:こうして話すと、「学マス」のアイドルたちは変わり者ばかりなのですが(笑)。変わり者が多いのに、2~3人単位で見ていくと謎のまとまりの良さがあったりするんですよね。
お嬢様キャラの倉本千奈も、入試を最下位の成績で初星学園に入学し、つらく厳しい日々のレッスンの中で「いったい誰ですの……軽い気持ちで『アイドルになりたい』だなんて言い出したおばかさんは」「わたくしですわぁ~~~~~~~~~!」と自分で自分にツッコミを入れてしまうようなおもしろい子なんですが……。
そんな千奈も、“落ちこぼれ仲間”であり自分以上に変人である、広や佑芽と接する中では、千奈だけが振り回されっぱなしでツッコミ役に回らざるを得なくなることもあって。そんな風に、特定のアイドル同士の組み合わせで見えてくる個々の新たな一面のようなものは、まだまだ無数にある気がします。
アイドル同士の関係性会議では、制作メンバー間での“解釈バトル”が勃発!?
――アイドル同士の関係性はどのように考え、固めていっているのでしょうか? 参考にしているものなどはありますか?
小美野:何かを参考にするというよりは、自分の中での想像やフィーリングをもとに提案したものを、シナリオライターの先生方に拾っていただいたり、逆に「このふたりはこうじゃないですか?」とご意見をいただいたりしながら、開発チーム内でのコミュニケーションを通して作り上げていくのが主な流れです。
山本:制作において「このアイドルとこのアイドルが初めて絡むことになるぞ!」となったときは、各人が自分なりの解釈を持ち寄って議論することになるのですが……。この解釈バトルは、毎回恐ろしいほどに白熱するので大変です(笑)。
小美野:「このふたりがベッタリくっつくことはないでしょ!」とか、「このふたりが普段から会話しているイメージがない!」といった意見が飛び交うこともあります。例えば、莉波と美鈴とか。ふたりとも生徒会メンバーで接点はありますけど、お互い世話焼きタイプなだけに、積極的にコミュニケーションを取ろうとはしないのではないか、と。
佐藤:莉波と美鈴の件は、最終的にはサポートカードのイラストの雰囲気も調整をお願いしましたね。「会話することはあるにしても、ここまで先輩・後輩関係を逸脱したベッタリな距離感にはならないと思います」といったように。今後どこかのタイミングで出ると思うので、楽しみにしていただけるとうれしいです。
――最後に、「学マス」の今後の展開において注目してほしい部分と、読者へのメッセージを合わせてお願いします。
山本:「学マス」に触れてくださった方が、何らかの形で「楽しかった」「幸せになれた」と思えるようなコンテンツにしていきたいと思っています。
ゲームやライブなど、我々がご用意したもののみならず、プロデューサーさん(※1)同士の交流や横のつながりによって生まれるものも含めて、さまざまに楽しめる作品づくりに今後も尽力してまいります。
※1 プロデューサーさん:『アイマス』シリーズのファンのこと
佐藤:「学マス」の舞台である“学園”という概念の拡張性は極めて高いと思っています。例えば、初星学園の一部分をリアルで再現するとか、MR(※2)で初星学園内でのライブを再現するなど、初星学園を現実に顕現させていけたらおもしろそうですよね。
そうやって、プロデューサーの皆さまが実際に初星学園に所属している感覚になれて、楽しめるような施策を今後も考えていきたいと思っていますので、応援のほどよろしくお願いいたします。
※2 MR:Mixed Reality(複合現実)の略。現実世界と仮想世界を融合させる技術のこと
小美野:「学マス」では、サービス開始に先駆けて「地域対抗! 事前登録合戦!」というイベントを開催させていただきました。各都道府県の事前登録数から算出した事前登録ポイントを競い合い、最もポイントが高かった地域には我々が直接お礼をお伝えしに行くという内容でした。
せっかく全国の皆さまに競い合っていただいたわけですから、可能な限り多くの地域……本音を言えばすべての都道府県を回りたいと思っていまして、現在、絶賛企画検討中です。皆さまのお声一つひとつが僕らのエネルギーになりますから、今後も皆さまに恩返しをしていきたいです。
2025年の『アイマス』シリーズ20周年に向かっていくタイミングで、ひとりでも多くの方に魅力を知っていただけたらと思っています。
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【取材後記】
小美野さん、佐藤さん、山本さんのお三方に「学マス」アイドルたちの関係性を解説していただいたことにより、アイドルたちへの解像度がさらに深まるとともに、まだあまりゲーム内では語られてない組み合わせに対する興味や、今後の展開についての期待がより高まりました!
また、アイドル同士の関係性を考えるうえでは、制作メンバー間での解釈バトルが繰り広げられているというお話も気になったところ。機会があれば、ぜひその模様を少しだけでもいいから聞いてみたい……と、思ってしまったプロデューサーさんも多いのではないでしょうか。
取材・文/山本雄太郎
1994年生まれのフリーライター。ゲーム、eスポーツ関連の分野を中心に、イベントレポート記事やインタビュー記事などを執筆。
THE IDOLM@STER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.
「学マス」メインプロデューサー。過去には家庭用ゲームソフトやスマートフォン向けゲームアプリの開発にも携わる。2019年~2021年は、「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」の担当代理も務めた。