2021-22シーズンに、Bリーグ1部(B1)で初の4強入りを果たしたプロバスケットボールチーム「島根スサノオマジック」。白熱した試合はもちろんのこと、バンダイナムコエンターテインメントの冠試合では『太鼓の達人』や『パックマン』などとコラボレーションしたイベントでも盛り上がりました。島根スサノオマジックが発信するスポーツエンターテインメントの舞台裏に、チームCEOとキーパーソンらのクロストークを通して迫ります。
前編の安藤誓哉選手のインタビューでは、選手の目線から「なぜ島根スサノオマジック(以下、スサマジ)は躍進できたのか」をテーマに語っていただきました。後編では、ファンの一体感を盛り上げた取り組みを社員に語ってもらいました。
登場するのは、チームのCEO(最高経営責任者)の田中快さんと、バンダイナムコエンターテインメント内で島根スサノオマジックのPRを担当する花采薇さんとバンダイナムコエンターテインメントの冠試合を担当する中村早希さん。
シーズン中に3度開催されたバンダイナムコエンターテインメントの冠試合では、安藤選手が「面白かった」と絶賛した「『太鼓の達人』対決」や、絶妙なフォルムの「『パックマン』マリトッツォ」、アニメ『機動戦士ガンダム』シリーズの主題歌を担当した森口博子さんのライブパフォーマンスなど、バンダイナムコエンターテインメントならではの斬新な企画で会場を盛り上げました。
バンダイナムコエンターテインメントが長年培ったエンターテインメントの知見を、プロスポーツにどう生かしていくのか……。お三方の試行錯誤の日々を、ぜひ追体験してみてください。
田中 快
島根スサノオマジック代表取締役CEO/バンダイナムコエンターテインメント第3IP事業ディビジョン ディビジョン長
花 采薇
バンダイナムコエンターテインメント 経営推進室 コーポレートコミュニケーション部 所属
アプリゲームの制作に携わったのち、スサマジPR担当に。台湾出身で、日本の体操競技に憧れを抱いたのが来日のきっかけ。
中村 早希
バンダイナムコエンターテインメント 経営推進室 コーポレートコミュニケーション部 所属
新卒入社からPR業務を担当するようになり、3年目。スポーツが好きで、学生時代に陸上や硬式テニスの経験がある。
スポーツは生モノのエンタメ。チームが育てた土台を広げていきたい
――まずは、田中さんにクラブの全体的なお話をうかがっていきます。21-22シーズンはスサマジにとって飛躍の1年となりました。改めて、どのような思いですか?
田中:いろんなことがあった1年でしたけど、結果的にはとてもいいシーズンになりました。何より、ファンの皆さんに喜んでいただけたのがよかった。ただ、チャンピオンシップに進出し、ベスト4だったからこそ、もっとできることがあるとも感じましたね。
――CEOに就任された際は、どのようなビジョンを持たれていましたか?
田中:『チームを飛躍させる』をミッションに掲げ、ファンの方、そして所属する選手たちに愛されるチームを作りたいと思っていました。また、これまでバンダイナムコエンターテインメントが培ってきたエンタメにまつわる知識や経験をさらに活用できたらという思いもありました。
スポーツも人の心を動かすという意味ではエンターテインメント。バンダイナムコグループがファンに届けてきた「ゲームやおもちゃをもらってうれしい」とか、「アニメを見て感動する」とかと、本質的には同じだと思うんです。
ただひとつ違うのは、スポーツがノンフィクションである点。フィクションのエンタメを作るノウハウはそれなりにもっているつもりでしたが、生モノであるスポーツをエンタメにするというのはなかなか大変なことだなと思いましたね。そこが楽しさでもあったんですけど。
――具体的にはどのような取り組みを行ったのですか?
田中:試合の会場をテーマパークのような非日常の場所にしたいという思いで、演出に注力しました。
花:特に力を入れていたのは、チームにまつわるデザインに一貫性をもたせることですね。
田中:チーム名のモチーフとなった武の神「スサノオ」をイメージしたグラフィックをユニフォームのサイドにあしらい、オープニングの演出や公式サイトのデザインも同じグラフィックに沿った形で構成しました。
2010年のチーム創設以来、島根の方たちが築いてきたものを、バンダイナムコエンターテインメントのノウハウを生かしてより強く、より多くの方に広げるということも意識しました。そのひとつが、スサマジの創設期から活動していたチアパフォーマンスグループ「アクア☆マジック」が、オリジナルソングを2021年にリリースしたことです。
――アクア☆マジックが昨季よりハーフタイムなどで披露している「Shinin’ Magic」は、スサマジのファンにはもちろん、ネット配信で試合を視聴している人々がSNS上で「あの曲が頭から離れない」「また聴きたい」などと発信するくらい、キャッチーでいい曲ですよね。
田中:「Shinin’ Magic」はAKB48の「ヘビーローテーション」を作曲した山崎燿さんにご提供いただきました。チアグループがCDを出すのは、Bリーグだけでなくほかのプロスポーツチームでもなかなか珍しい試みではないでしょうか。
花:アクア☆マジックのメンバーは毎年オーディションで決定するんですが、去年はより大々的に募集をして、メンバー決定後に歌唱オーディションも行いました。
――もともといるアイドルをチアに仕立て直すのでなく、チアをやっている子たちがアイドルになっていく……そんなストーリーも素敵ですね。
田中:「バンダイナムコエンターテインメントが入って、スサマジを一気に変えました」みたいなやり方はしたくなかったんです。あくまでサポートとして、地元の人々と一緒にチームを盛り上げていく。それが大事なことだと思っています。
――地元のファンの皆さんの声を聞く機会はありますか?
田中:会場に行くとファンの方が話しかけてくれるんですよ。何よりチームが強くなったことを喜んでくださる方が多いですけど、「演出が楽しい」と言っていただけると、なおさらうれしいです。
もちろん負け試合は悔しいですが、その気持ちを会場にいるファンの皆さんと共有しているなと感じて、うれしく思うし、それがスポーツのよさなんだなって実感します。
本気で勝つ、本気で負ける。だから感動する。チームがその姿勢を見せているんだから、経営も本気でやるという意識でいます。
――前編で、安藤誓哉選手も同じことを言っていました。「仲間たちには本気で優勝をめざす姿勢を伝えた。覚悟をもって本気でやるから楽しいんだ」と。
田中:「優勝する」と口にして、実際にあと少しというところまでチームを連れて行ったのが、安藤選手のすごいところですよね。僕らも本気で優勝をめざしているので、本気でいいチーム、ファンに愛されるチームを作っていきたいです。
――チームカラーの青でほぼ埋め尽くされたチャンピオンシップ準々決勝。残り数秒で勝敗が決した準決勝。スポーツはよく「筋書きのないドラマ」と言いますが、今季のスサマジはまさにそのドラマを生み出すチームでした。
田中:あんな台本、フィクションでも書けないですよ! 外れたシュートが(ラストシュートを決めた琉球ゴールデンキングスの)エバンス選手のところに行くなんて……。ただ、安藤選手も言ってましたけど、まだ覚悟と本気さが足りなかったのが、昨年の結果なのかもしれませんね。
選手はもちろん、我々もファンの方も本気でやってさらに限界を超えて、というところがないと、ファイナルの壁は超えられないんだろうな。出雲の神様に「まだまだがんばれよ」と言われたような気がします。
目標は「テーマパーク」。ワクワクが長く続く方法を考えていた
――続いて、花さんと中村さんにバンダイナムコエンターテインメント冠試合の演出についてうかがいます。冠試合は、正月、4月のレギュラーシーズン最終試合、5月のチャンピオンシップ準々決勝と3回行われましたが、どのような意識で取り組まれましたか?
花:快さんが話したように、「スサマジをよくしていこう」という人が集まったので、私たちも安藤選手と同様に”覚悟”をもって考えました。
まず大切にしたのは、会場に来てくれたファンの方々にただ試合を楽しんでもらうだけでなく、試合前から試合後までずっと楽しんでもらえるようにすること。
試合前日からSNSイベントに参加して、会場についたらおいしいものを食べて、ハーフタイムも楽しんで……というように、テーマパークに行く時のようなワクワクした気持ちを長く持っていただくことを意識しました。
中村: バンダイナムコエンターテインメントは2022年4月に「Connect with Fans」という中期ビジョンを掲げて、ファンの方々と密接につながることを目標にしています。
これまでは来場していただいたファンにシンプルに楽しんでいただくことに主眼を置いていましたが、4月と5月は、会場に来られないファンの皆さんにも楽しんでいただくことや、一緒に盛り上げることを意識しました。
花:1月は、バンダイナムコエンターテインメントのキャラクターやゲームを融合させた「バンダイナムコエンターテインメントらしいお正月」、4月は「レギュラーシーズン最終戦、一体感をもって応援しよう」、5月は「チャンピオンシップを本気で応援しよう」がテーマでした。
特に3回目はスサマジにとって初のチャンピオンシップということもあって、冠試合といえどもバンダイナムコエンターテインメント色を押し出さず、とにかくスサマジを一緒に応援するというところにフォーカスしました。
中村:2回目、3回目は、本気で応援しているファンの皆さんの気持ちを意識して、スサマジカラーを全面に押し出したグッズを作りました。
――パックマンがあしらわれた蓄光シリコンバンド、とてもかわいかったです。
中村:そうなんです! あれ、めちゃくちゃかわいいんです。
田中:自分で言ってる(笑)。
花:まずは自分たちがワクワクする内容にしないとと思いました。中村と二人でワーとかキャーとか言いながら作ったので、ファンも同じように喜んでくれてうれしかったよね。
中村:シリコンバンドは音楽フェスなどでもよく展開されるグッズだと思うんですけど、イベントが終わったあともカバンにつけたり、コレクションにしたりといろいろ楽しめるのがいいなと思って提案しました。
実際に、4月の冠試合で配布したバンドを5月の試合でも身につけてくださっているファンの方を見かけて、作ってよかったなって思いました。
大好評!「『太鼓の達人』対決」と「『パックマン』マリトッツォ」ができるまで
――冠試合のハーフタイムに行われた選手同士の「『太鼓の達人』対決」は、バンダイナムコエンターテインメントならではの企画でした。どういう経緯で企画が生まれたんですか?
花:まず「『太鼓の達人』を取り入れる」ということが先に決まっていて、最初は「どんちゃんのグッズを配る」とか「ファンの方に太鼓の達人で遊んでもらう」とか、シンプルなアイデアでした。ただ、それだけだと押し付け感が強くてファンの方は違和感があるんじゃないかという意見が出ました。
ファンは何よりもチームと選手に愛着をもっているので、主役は選手で、『太鼓の達人』はあくまでツールとして活用したほうがいいんじゃないかというところから、選手たちの対決企画が生まれました。
SNSや会場での勝敗予想、動画のディレイ公開など、会場にいらした方にもそうでない方にも楽しんでいただけるよう工夫をしました。
――「『太鼓の達人』企画をやりたいです」と提案した時、チームや選手の反応はいかがでしたか?
花:アミューズメント施設で『太鼓の達人』を遊んだことがある安藤選手と後藤翔平選手は、ノリノリでしたね。
金丸晃輔選手(※1)はやったことがなかったらしくすごく不安そうで、対戦相手の山下泰弘選手(※2)が「これなら金丸選手に勝てる」とかなりがんばっていました(笑)。
※1 金丸晃輔選手は今季三遠ネオフェニックスに移籍
※2 山下泰弘選手は今季佐賀バルーナーズにレンタル移籍
中村:選手たちは企画や写真撮影にすごく協力的で、ありがたいです。
――安藤選手も「楽しかった」と言っていましたね。ファンの方々の反応はいかがでしたか?
花:「バンダイナムコエンターテインメントだからこそできる企画」「ゲームと融合した企画ができるのはスサマジだけ」といったお褒めの声を、たくさんいただきました。
「子どもがめちゃくちゃ喜んでました」というお父さんお母さんからのコメントも多くて、子どもから大人まで幅広く楽しんでいただけたと感じています。
中村:SNSに勝敗や対決中のオフショットなどを投稿したところ、大きな反響がありました。「ほかの選手の対決も見たい」というご意見もいただいたので、来シーズンぜひ実現したいです。
――キッチンカーで販売した、パックマンの形をしたマリトッツォも好評でした。
花:なにかキャラクターを使ったフードを作るとしたら何がいいだろう……とメンバー内で考えているうちに、話題だったマリトッツォを『パックマン』のデザインで作ったらいいのでは?となりました。
当初の予定では1月の冠試合限定の予定だったんですけど、すごく好評だったので、4月、5月の冠試合でも継続して販売することになりました。
――言われてみれば、『パックマン』のフォルムはマリトッツォの形そのものです。
花:『パックマン』が好きなファンの方が「この発想はなかった」とSNSに投稿してくださってました(笑)。スサマジのホームゲームでしか食べられないものを作って、ファンの皆さんに楽しんでもらえてよかったです。
中村:マリトッツォの制作は、地元の企業さんにお願いしました。4月の再販の際には、有名な「白バラ牛乳」を使うなどいろいろ工夫してくださって、すごくおいしくなりました。
花:そうそう。ミルクが濃厚になって、甘さも増したんだよね。
中村:はい。地元の皆さんのおかげです。
大切にしたのは選手の感情とファンの思いに寄り添うこと
――スポーツチームのPRに取り組まれるなかで、ご苦労もあったかと思います。今だから話せるエピソードなどがあれば教えてください。
花:12月は冠試合の準備で島根に出張することが多かったんですけど、ちょうど雪がすごく降っていたんですね。私は台湾出身なので、軽装で行ったら寒くて凍えかけました。それだけです。
田中:……え、それだけ????
花:はい、それくらいです。ずっと楽しかったです。
中村:苦労とは別物かもしれませんが、自分の視野の狭さを実感させられた出来事はありました。
4月の冠試合のイベントを提案する時、1月に好評だった「『太鼓の達人』対決」を別の選手でやったらどうかと思ったんです。ただ、宮河さん(宮河恭夫氏、バンダイナムコエンターテインメント 代表取締役社長)や快さんに「選手たちがセンシティブな状況になっている可能性もあるから、再考したほうがいい」とアドバイスをいただいて、なるほどなと。
私はレギュラーシーズン最終戦までチャンピオンシップ争いがもつれた際の選手たちの精神状態や会場の雰囲気を想定できていなかったんです。
――田中さんが先程おっしゃっていた「ノンフィクションのエンタメの難しさ」ですね。
中村:はい。それでもう一度考え直した結果、本気で勝とうとしている選手、本気で応援しているファンの方々の気持ちを盛り上げるようなことができないかと思って、ファンの皆さんから寄せられた応援写真を会場で流す「フォトシャワー」を実施しました。
「応援の力を集める」というコンセプトで、多くの方に協力していただけましたし、事情があって会場に来られない人からも事前に写真をお寄せいただきました。撮影ブースではオリジナルグッズの貸し借りなど、ファン同士でのコミュニケーションも生まれていたようで、そういう点でもいいイベントになったと思います。
――せっかくの機会なので、田中さんから見たお二人の頑張りをうかがえますか?
田中:僕もPR経験者なので分かるんですが、PRって双方向を意識して動かないといけないのが大変なんですよ。特に生ものを扱うスポーツの広報・PRは、一方通行で選手に「これやってください」と投げるだけでは成り立たない。
選手の感情を想像し、ファンの皆さんの思いに寄り添いながらキャッチボールをしかけることが大切だということをちゃんと理解してくれていたのが頼もしかったです。
花:快さんにはたくさんアドバイスをいただき、良い成果に繋げられました。
田中:スサマジ側の広報もいるので、そこと連携しながらお互いいいものを作っていくという感じですよね。バンダイナムコエンターテインメントが培ったノウハウにスサマジの広報が連携することで、より力が増した気がします。
中村:おっしゃるとおり、スサマジ側のスタッフの方々ともいろいろな形で連携させていただきました。
花:『太鼓の達人』の時も、「この2人を対戦させたらおもしろいですよ」とか「曲は選手に選んでもらったほうが盛り上がる」とか、アドバイスいただきました。安藤選手たちが「アンパンマンのマーチ」をセレクトするなんて、私たちには絶対思いつきませんでした(笑)。
中村:グループ企業や他部署との連携も印象深いです。私は広報以外の経験がないので、キャラクターやゲームの権利やライセンス管理などでは担当部署の皆さんにすごく助けられましたし、森口博子さんのハーフタイムショーの時はグループ会社のバンダイナムコライブミュージックさんにお世話になりました。グループ内にいろいろな知見をもっている方がいて、すぐに相談できるのはこの会社の強みだなと感じました。
――ファンとのつながりという点で感じたこと、これから展開していきたいことはありますか?
中村:5月のチャンピオンシップクオーターファイナルの際に、ファンの皆さんにチームへの応援メッセージを書いてもらう企画をやったんですが、実際どれくらいの方が書いてくださるだろうか……と正直不安でした。ところが、ふたを開けてみたらすごくたくさんの方が参加してくださって、ボードがびっしりとメッセージで埋まりました。
それまでは、ファンの労力をなるべく少なくしたほうがいいかな、会場に来られない方もいらっしゃるのでSNSでメッセージを募集して掲示したほうがいいかな、みたいな考え方をすることが多かったんですが、逆に会場に足を運んだからこそ得られる、あえて労力を使うことで「特別」と感じられるような経験も作り出していくべきなのかもしれないと考えました。
花:スサマジのファンの方ってみんなすごく温かいんです。快さんだけでなく、私にまで声をかけてくださる方もいらっしゃるくらいですから。
私たちの取り組みを通してファンの皆さんと一緒にスサマジを盛り上げていきたいですし、SNSなどを活用した取り組みにもより力を入れて、さらにチームの認知度を挙げられるようがんばっていきたいです。
「スサノオマジック」を全国に広げ、子どもたちが誇りを持てる島根を作る
――スサマジは「地方創生」にも力を注いでいるチームです。島根に活力を与えるという観点では、どんな取り組みをしていきたいですか?
花:ファンクラブのデータを見ると、これまでは島根県在住の40〜50代やファミリー層が主流だったのが、去年からは若い女性や県外在住の会員がかなり増えてきています。これはチームの規模の拡大を示せる1つのデータだと思います。
私たちが目指しているのは、スサマジが全国に広く愛されるチームに育て、島根に住んでいる若い世代に地元への誇りを感じてもらうこと。
「日本中に自慢できるチームが地元にあるっていいな」「島根に生まれてよかったな」と思ってもらえるためのお手伝いをしていきたいですね。
田中:地方を盛り上げることって、全国を盛り上げることと同義なんですよね。
例えば、新体制の発表会。これまでは小規模な記者会見として実施する形をとっていましたが、昨年からバンダイナムコエンターテインメント本社にある「MIRAIKEN studio」を使って、選手たちのトークショーを交えたエンタメショー形式で実施し、それをYouTubeで全国の方にご視聴いただけるようにしたんです。
そうしたら、昨年は約5万人、今年は前年度よりも多くの方々に視聴していただいて。アクア☆マジックのシングルリリースもしかり、島根を盛り上げつつ、全国でも盛り上げていくことが地方創生のカギだと思っています。
――優勝にはあと一歩手が届きませんでしたが、新体制1年目でセミファイナル進出というスサマジの躍進は、国内バスケ界にとっても非常にセンセーショナルな出来事でした。皆さんの立場から、チームが飛躍した秘訣はなんだと思いますか?
田中:一体感だと思います。いくらすごい選手をたくさん連れてきても、めざす方向性がバラバラのまま成果が出せるほど、組織というのは甘いものではない。
チームの完成図を思い描きながら、「島根のためにがんばりたい」という選手とスタッフを集めた結果、強いパワーが生まれて成績につながったんだと思います。
花:会場演出や取り組みがうまくいった理由も、一体感だと思います。私たちも選手たちもファンの皆さんも、「スサマジを盛り上げよう」という強い思いをもって、同じ方向を向いていました。
中村:バンダイナムコエンターテインメントが真剣にスサマジに向き合っているということが、ファンの皆さんに伝わっていたらいいなと思います。
私個人としては、チームを強くすることはできないけれど、選手の意外な表情やオフの様子を引き出すことでチームを好きになってもらうことはできると思いながらいろいろな取り組みに関わってきましたし、今後もそういう視点でチームのお手伝いができればと考えています。
――先程も少しお話しがありましたが、キャラクターやゲームとのコラボレーションの仕方が本当に絶妙でしたね。いずれも、スサマジを引き立てるような活用方法でした。
田中:これからもそうありたいですよね。スサマジのファンが一番興味をもっているのは、なんていったって「島根スサノオマジック」というチームなわけですから。
――それでは最後に、スサマジのファンの皆さんへ、来季に向けたメッセージをお願いします。
花:来季もスサマジのPRチームとして活動します。引き続きファンの方々が楽しめるイベントや取り組みを展開する予定なので、楽しみにしてください。
中村:ワクワクすることをたくさん用意して、会場でお待ちしております。ぜひ遊びに来てください。
田中:チームとしては昨シーズン以上の成績を残したいです。多くの方に「スサマジのファンでよかった」と思えるようなシーズンにしたいので、ぜひ楽しみにお待ちいただきたいですし、一緒に頑張っていきましょう。
もう少し未来のことを話すと、「優勝」よりさらに先の夢もすでに描いています。日本を飛び越え、世界に届くようなチームとなって、島根とスサマジを世界に広げられるようにがんばります。
――それはワクワクしますね。期待させていただきます。
田中:はい、ご期待ください!
前編はこちら↓
プロバスケ「島根スサノオマジック」安藤誓哉が語る!B1リーグ4強までチームが強くなったワケ【前編】
【編集後記】
「苦労したことはありましたか?」。取材中、至るところでそのようなニュアンスの質問を向けましたが、お三方はそろって「ない」という主旨の言葉を返しました。エンタメを作る側の人間に大切なのは、自分が対象を愛し、仕事を楽しむ姿勢。そして、そんな人々が作り上げたものだからこそ、今季のスサマジの取り組みは面白かったんだなと腑に落ちました。そして、取材の最後に田中さんがお話しくださった「世界」への意欲、しびれました。
関東在住の当方ではありますが、来季は島根での取材を敢行し、『パックマン』マリトッツォを食べ、シリコンバンドをおみやげとしたいです。関係者の皆さま、今からよろしくお願いいたします。
取材・文/青木美帆(ブルーノオト)
バスケットボール専門誌の編集部を経て、国内バスケ界隈で取材・執筆活動中のライター兼編集者。息子(小1)の影響で、ガンダム、ウルトラマン、ドラゴンボール、仮面ライダーに囲まれた日々を送っている。
https://twitter.com/awokie
ゲームにまつわる仕事のほか、ライブなどの企画・統括を数多く手がけ、現在に至る。学生時代は高校野球で甲子園を目指していた。