「アイドルマスター」(以下、「アイマス」)シリーズの新展開「PROJECT IM@S vα-liv(ヴイアライヴ)」と、『アイドルマスター シャイニーカラーズ Song for Prism』。後編では、制作チームがお互いの取り組みで注目している点や、IP(※1)軸戦略「PROJECT IM@S(※2) 3.0 VISION(サードビジョン)」(以下、「3.0 VISION」)への意気込みを伺いました。
※1 IP:Intellectual Property の略で、キャラクターなどの知的財産のことを指す
※2 PROJECT IM@S:「アイドルマスター」シリーズのメディアミックス展開の総称
「アイマスフューチャー連載」とは?
2023年以降の「アイドルマスター」シリーズを、アニメ/ゲーム/イベントなどの担当者が語る全3回のインタビュー。第2弾となる今回は、「PROJECT IM@S vα-liv(ヴイアライヴ)」のプロデューサー・勝股 春樹さんと、『アイドルマスター シャイニーカラーズ Song for Prism』のプロデューサー・高山 祐介さんが、それぞれ新プロジェクトを語ります。
アイドル育成プロジェクト「PROJECT IM@S vα-liv(ヴイアライヴ)」(以下、「ヴイアライヴ」)のプロデューサーを担当する勝股さんと、enza(※3)版『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(以下、『シャニマス』)&新作ゲーム『アイドルマスター シャイニーカラーズ Song for Prism』(以下、『シャニソン』)の制作プロデューサーを兼任する高山さん。入社1年違いの先輩・後輩コンビでもあることが前編で明らかになったおふたりは、お互いの取り組みをどう感じているのでしょうか。
「アイマス」に新たな風を吹き込む立役者とも言うべきおふたりが、”期待の斜め上を超える”べく、飽くなき挑戦を続ける理由などについて、クロストーク形式で語っていただきました。
※3 enza(エンザ):バンダイナムコネクサスが運営するブラウザゲームプラットフォーム
勝股 春樹
バンダイナムコエンターテインメント
「PROJECT IM@S vα-liv(ヴイアライヴ)」プロデューサー
高山 祐介
バンダイナムコエンターテインメント
『アイドルマスター シャイニーカラーズ』プロデューサー
『シャニマス』プロデューサーとして、enza版『シャニマス』、スマホ向けゲームアプリ版『シャニソン』のプロデューサーを兼任。2015年に入社し、立ち上げ初期から現在に至るまで『シャニマス』の運営・開発に携わる。
“これからの「アイマス」”に、さらなる熱狂を!
――ライブ配信を通してリアルタイムでアイドル候補生たちの奮闘を描く「ヴイアライヴ」、そしてアイドルたちが輝いていく過程や瞬間的な”きらめき”を印象的に表現してきた『シャニマス』ですが、おふたりはそれぞれのプロデューサーという立場から、お互いにシンパシーを感じる部分や刺激を受ける部分などはありますか?
高山:僕は「ヴイアライヴ」がどれほどの頻度でライブ配信を実施するのか、まだちょっとイメージがついていない部分もあるのですが……どんなかたちであれ、めちゃくちゃ大変じゃないですか?
勝股:正直言って、大変です(笑)。
高山:僕も以前、『シャニマス』において、「大崎甜花のゲーム実況_てーにんぐるーむ」というライブ配信コンテンツに携わったこともあるので、単発配信ですら、はちゃめちゃに大変だということはある程度理解しています。
それなのに、「ヴイアライヴ」は年単位のスパンで、それも事業として本腰を入れてやるということですから、「これは生半可なことじゃないな……」と思って(笑)。
勝股:でも、高山くんが「ヴイアライヴ」の取り組みに熱い視線を送ってくれていたと思うと、なんだかうれしい気持ちになりますね。だって高山くんといえば、今や『シャニマス』プロデューサーとして、プロデューサーさん(※4)たちからも「俺たちの高山」って言ってもらえるくらいに信頼を集めていたりもするわけだから(笑)。
※4 プロデューサーさん:「アイドルマスター」シリーズのファンのこと
高山:もちろん、「ヴイアライヴ」にはめちゃくちゃ興味ありますよ! 僕はenza版『シャニマス』に加えて『シャニソン』にも関わることになり、それを踏まえて肩書きも『シャニマス』プロデューサーになりましたので。ブランド全体をプロデュースしていく立場として、旬な分野に対して機を逃さずコンテンツをお届けしていけるような出口を作るのは重要だと感じています。
ゲーム単独で考えているとゲーム市場だけで終わってしまうところを、イベントやコラボなどを通して他領域や他企業と連携しながら間口を広げていくことでこそ、”熱狂”が生まれていくんじゃないかなと……。そのためには、ゲーム外での展開もなるべくたくさん用意して、プロデューサーの皆さんに「すべてチェックしきれなくて悔しい!」と思ってもらえるくらいに広げていかなければ、と思っているんです。
勝股:僕から見て『シャニマス』は、イラストひとつ、シナリオひとつとってもすごくリアルな人間描写が描かれているところが「めっちゃいいなー!」と思っていて。
「アイマス」はこれまでも人間描写を描いてきた部分があるけれど、それをこれほどの生々しさでというか……すごい解像度で人物を描いているよね。そのうえで、ちゃんとゲーム設計も含めて「アイマス」として成立させているというか。
こう例えるのが正しいのかどうかはわからないけれども、『シャニマス』は、映画『シン・ゴジラ』を見た時の感覚に近いんですよね。今の時代の人たちに刺さる要素も盛り込みつつ、『ゴジラ』としての大切な部分をしっかり押さえているみたいな。まさに『シャニマス』が出たときは、新しいけどちゃんと知っている、これからの「アイマス」を担える作品出てきた、と思っていましたね。
当時は「765PRO ALLSTARS」でMRやプロデューサーミーティングをやっていた時期だったこともあり、とても刺激を受けましたし、そんな作品が作れる高山くんを同じアイマス担当として尊敬しています。
1年1年を積み重ねつつ、1歩1歩を噛み締めすぎないように
――ぜひ高山さんには、5thライブを経て『シャニマス』が5周年を迎えたことへの思いの丈を語っていただきたいです。
高山:5thライブでは『シャニマス』のテレビアニメ化を、そして5周年を迎えた4月29日には『シャニソン』を発表させていただいたこともあり、本当に大きな節目のタイミングだったと感じています。
『シャニマス』では毎年、制作チーム内でテーマを決め、そのテーマに沿ってゲーム内イベントなどの方向性を定めていく、という作り方をしてきました。そんな、『シャニマス』制作チームの6年目のテーマは”未来を選択していく”です。まさに僕たちもプロデューサーさんと一緒に、『シャニマス』の未来を作っていくフェーズにしていきたい、と考えています。
『シャニソン』やテレビアニメ化など、6年目の新たな1歩として現在進行系で取り組んでいる、あるいはこれから歩み出す一つひとつの取り組みが、『シャニマス』の長い道のりのなかで、後々振り返ったら「あの時、こうやってスタートを切ったんだよね」と思ってもらえるような足跡として続いていくと信じています。
ですから、6年目も変わらずに新しいことに挑戦していきたいなと思っています。あくまでも5周年は通過点であって、ゴールではない。ここからまた『シャニマス』の道のりは続いていくんだという気持ちでいます。
――一方、「アイマス」シリーズに包括的に携わられてきた勝股さんは、シリーズのこれまでの歩みをどう受け止めていますか。
勝股:僕が「アイマス」チームに入ったときは、すでに「アイマス」自体が9年目でした。当時は先人の方々の背中を必死で追いかける身でしたが、そこからさらに9年近く関わらせていただいています。だからこそ、制作側としては「アイマス」を1年、また1年と続けていくことへの責任と、5年~10年と続くことが当たり前じゃない、というプレッシャーを常に抱いています。
「アイマス」がいつまでも愛される作品であるようにがんばりたいと心から思っている反面、それが行きすぎると、どんどん守りに入ってしまう危険性もあって……。”かくあるべき“を大事にしすぎた結果、自分たちで可能性や良さを閉じてしまうということにもつながる怖さも知っているので、危機意識も同時にもっています。
今、「アイマス」はアーケード版のリリースから18年目です。人間で言うと、18歳なんて青春真っただ中。まだまだ可能性の塊じゃないですか。社内には、「アイマス」が好きではじめから作品へのリスペクトをもって取り組んでいる後輩も増えました。そんななかで、中堅〜ベテランに差し掛かってきた僕らが守りの姿勢を見せたら、それこそ後進たちは攻めようがなくなってしまう。
作品の可能性を広げる役割を担うひとりとして、“変える”ためではなく“続ける”ために、後輩たちに背中をあずけて、あえて新しいことに切り込んでいく攻めの姿勢をもつように心がけています。もちろん、ただ単に新しいことをしたいわけではなく、もっともっと「アイマス」を好きになってもらいたい、「アイマス」が末永く続いてほしいという一心で日々もがいています。僕は、『シャニマス』にも勝手に同じマインドを感じていますよ(笑)。
高山:今、後進についてのお話をされていましたけど、「アイマス」チームには次々と若いメンバーが加わってきていて、僕としても勝股さんと似たような考えをもっています。
『シャニマス』チームとして新しいことに挑戦していかないとルーティンワークだらけのつまらない日々になってしまいますし、制作陣が「楽しくない」という気持ちでいたら、その空気感は間違いなくプロデューサーさんにも伝わってしまうと思うんですね。
そういった意味でも、僕自身もそうですし、若手メンバーも含めて、“楽しみながら考えて作っていく”ことが大切だと思っています。
勝股:「期待の斜め上を目指す」――これは2023年3月に「アイマス」総合プロデューサーを勇退された坂上さんの言葉です。この精神は、僕や高山くんを含め、「アイマス」に関わるすべての制作陣に受け継がれていると感じます。
プロデュース体験の源泉としての『シャニソン』、”必要な挑戦”に立ち向かう「ヴイアライヴ」
――”斜め上”を目指していくなかで、高山さんは『シャニマス』プロデューサーとして、勝股さんは「ヴイアライヴ」のプロデューサーとして、IP軸戦略「3.0 VISION」をどう受け止め、それぞれの立場からどのような挑戦をしていきたいと考えていますか。
高山:個人的に、「3.0 VISION」とは、これからも「アイマス」は駆け抜けていきます! という所信表明だと捉えています。
enza版『シャニマス』や『シャニソン』を通して提供したいのは、アイドルとのコミュニケーションおよび、アイドルをステージで輝かせるといった過程を通じたプロデュース体験です。そういった遊び手側の操作がゲーム内の展開に反映されるというインタラクティブ(双方向)性こそがゲームの強みだと考えています。
これからも、ゲームのもつインタラクティブ性を最大限に活かして、プロデュース体験の源泉となる部分をブレさせずに提供していきたいですね。『シャニマス』に限らず、誰かが原点に忠実なプロデュース体験を提供する役割を担えていれば、「ヴイアライヴ」のように新たなプロデュースのかたちが生まれる余地、受け入れてもらいやすい土壌も作れるのだと、勝股さんとのお話を通して再確認できました。
これからもゲームという媒体を通して、「アイマス」っていいね! と言ってくれるファンをどんどん増やしていけたらうれしいですね。
勝股:まさに、「これからも、『アイマス』」ですね!
プロデューサーさんのコンテンツの遊び方や楽しみ方は、時代に合わせて変化するものであり、それが自然なことだとも理解しています。だから僕らはその時、その時に合わせた最適なプロデュース体験を追求し、積み重ねていきたいと思っています。
「ヴイアライヴ」に関しては「PROJECT IM@S」名義ではありますが、「アイマス」が未開の地を開拓していくうえでの切り込み隊長的な役割を担うプロジェクトだと考えています。「ヴイアライヴ」の挑戦を通じて、「アイマス」の新たな可能性を見つけていきたいですし、「アイマス」チームは、そうした可能性を拾い上げて、より良いかたちで落とし込んでくれるようなチームとして成熟してきている安心感もあります。
まずは「ヴイアライヴ」が精一杯、泥臭く奮戦し……その結果、ゆくゆくは「ヴイアライヴ」も「アイマス」の一員として認めてもらえるようになればうれしいなと思っています。
――最後に、「ヴイアライヴ」や『シャニソン』の展開を楽しみにされているプロデューサーさんに向けて、メッセージをお願いします。
高山:すでに「アイマス」の各ブランドに触れていただいている人も、そうではない人もいらっしゃると思いますが、僕としてはブランドそれぞれにまったく違う味わいがあって、全員が各々の目指す方向性に向かって突き進んでいることが「アイマス」の良さであると感じています。
その中で、もしも『シャニマス』の方向性を魅力に感じてくださる人がいらっしゃるのであれば、それ以上の喜びはありません。そんな皆さんに向けて、僕らはこれからも全力でコンテンツを提供していきます。enza版『シャニマス』と、開発中の『シャニソン』を通じて、今後もプロデュース体験を楽しんでいただけるように尽力してまいりますので、今後ともご期待ください。
勝股:「ヴイアライヴ」は、「アイマス」シリーズにおけるアイドルたちのタレント活動のさらなる拡大と、新たなアイドルがデビューするチャンスの場を設けるために立ち上げた挑戦プロジェクトです。”挑戦”というワードばかりが印象に残るかもしれませんが、”挑戦”自体を目的にしているわけではなく、あくまで”挑戦”は目的を達成するための手段に過ぎません。
「こうした取り組みをすればもっと楽しくなるのではないか」、「『アイマス』の魅力がより多くの人に伝わるんじゃないか」といった考えをもとに、「ゆえに挑戦することに決めた」という順番で「ヴイアライヴ」の企画が立ち上がっています。これからも皆さんに楽しいプロデュース体験を提供するために、”挑戦”をしていきたいと思っています。
そのうえで、「これは違うんじゃない?」という部分に関しては、ぜひ忌憚なく叱咤激励していただければ幸いです。今後とも”期待の斜め上”を超えていけるように日々精進してまいりますので、引き続きプロデュースのほどよろしくお願いいたします!
アイドル育成プロジェクト「ヴイアライヴ」と、『シャニマス』新作ゲームアプリ『シャニソン』はどんな思いから生まれた!? 気になるインタビュー前編はこちら↓
「アイドルマスター」新プロジェクト!「ヴイアライヴ」&『シャニソン』によって広がり・深まる“アイドルプロデュース体験”【前編】【アイマスフューチャー連載② 勝股×高山】
ファンファーレでは皆さまのご意見、ご感想を募集しております! 編集部にて拝見させていただきました上で、今後の改善のための参考にさせていただきます。記事に寄せられた声を「Fan’s Voice」として紹介させていただく場合もございます!
【取材後記】
入社時期も、これまで担当してきた領域も違えど、ともに「アイマス」の未来を築いていく戦友としてお互いを信頼し合う勝股さん、高山さん。そんなおふたりの――ひいては「アイマス」チームの合言葉となっているのは、「期待の斜め上を目指す」という飽くなき”挑戦志向”だったようです。
“プロデューサーさん”であれば、「アイマス」の20周年に向けてつねに攻めの姿勢を取り続けるおふたりの姿に、心奮い立たせられずにはいられないハズ。「ヴイアライヴ」と『シャニソン』がそれぞれで描く新たな”プロデュース体験”にも注目です!
©窪岡俊之 THE IDOLM@STER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.
2014年に入社し、「ミリオンライブ!1stLIVE」よりイベントプロデュースや、『アイドルマスター』シリーズのライセンス管理を担当。「THE IDOLM@STER MR ST@GE!!」の立ち上げ、「MIRAIKEN studio」設立にも携わる。