【プロフェッショナルインタビュー「アソビト」】清水正洋氏をつくる“3つの〇〇”

【プロフェッショナルインタビュー「アソビト」】清水正洋氏をつくる“3つの〇〇”

バンダイナムコエンターテインメントを支えるプロたちの神髄を、“3つの要素”から探る連載企画の第6回目は、経営推進を担う清水正洋氏が登場。「好き」や「経験」はとことん突き詰め楽しみつつ、同時にその「好き」や「経験」から常に新しいことを発見し学び、仕事に生かす清水氏。今回の3つの要素もまた、そこに通じるものでした。

好きなことすべてがエンターテインメントへ繋がっていく

清水正洋氏をつくる3つの要素、「観葉植物」、「雑貨」、「本」

清水正洋氏が挙げた3点は実にバラエティーに富んでいて、一見すると共通点はなさそうですが、そこにはすべて、現在の仕事やエンターテインメントにつながる想いが込められていました。そんな清水氏を形成する要素、「観葉植物」「雑貨」「本」について語っていただきました。

1:観葉植物。「癒しと気づきの宝庫」

観葉植物・モンステラ

――まず、お持ちいただいた観葉植物についてお聞かせください。こちらはどういった種類なのでしょうか。ご興味を持たれたきっかけを教えてください。

清水:今回持参したのは会社に置いているモンステラです。これは丈夫で育てやすいんですよ。観葉植物にはまっていまして、きっかけは2つあるんですが、まずはカフェのような雰囲気が好きなことなんです。もともとカフェが好きで、ひとりで本を読んだりもしているんですが、この落ち着く空気を形作る要素はなんだろうかと思ったときに、緑が多いということに行き着いた。それがひとつ目。

もうひとつの理由は、我々エンターテインメントのビジネスをやっていく中で、前社長が非常に運を大事にする人だったことなんです。運は「運ぶ」と書く。「運を運んでビジネスをしていくことが会社の業績をあげていくんだ」、とよくおっしゃっていたんですね。観葉植物を置くと気の流れが良くなるとも言われているので、それも相まって興味を持ちました。

インタビューに答える清水正洋氏
外資系コンサルティング会社に5年半在籍した後、2006年に株式会社バンダイへ。その後、株式会社バンダイナムコゲームス(現、株式会社バンダイナムコエンターテインメント)に異動。現在、株式会社バンダイナムコエンターテインメント取締役を務める

――会社以外でも育てていらっしゃるんですか?

清水:家の中にもたくさんあるんです。よく「植物園みたいだ」と言われるんですけど、数えてみたらオリーブが13本、シマトネリコが3本、ウンベラータが2本、フィカス・アルテシマが1本、あとはガジュマルもあります。お世話も大変なんですよ。日曜日の夜には30分くらいかけて水やりをしています。それくらい家に置いて、自分の気分を快適にしています。

――さきほどおっしゃっていたように、良い「気の流れ」は感じていらっしゃいますか?

清水:いいですよ、快適です。今は子どもがまだ小さくて汚すので常に掃除との戦いですが、緑があるのは非常に気持ちがいいです。うまく水を与えて新しい芽が出てくると、パワーをもらえる感覚がありますし、世話をしながら気づくことや学びもあるんです。観葉植物は水をそれほど頻繁にあげなくてもいいんです。渇ききったときにあげるのがいい。それって人に対しても通じるものがあると感じます。

インタビューに答える清水正洋氏

――例えばどのような点でしょうか?

清水:人と接するとき、それを必要としていないときにいろいろとインプットしても仕方がないところがあって。乾いているとき=本当に必要なときに与えてあげるのがいい。それと観葉植物の枝葉の剪定をして風通しをよくするのは、葉っぱが込み合っていると成長を妨げるからで。それも人間関係には風通しが必要なことに通じますし、例えばオリーブは異なる品種が交配できる環境の方が実をむすびやすい。これは同じところにばかりいないでいろんな人に出会うといいものが生まれるのではないか、ということとも合致する。観葉植物からは気づきや学びをもらっています。

2:雑貨。「ネットショッピングというエンターテイメント」

ラップホルダーとマリメッコのマグカップ

――雑貨がお好きとのことですが。今回お持ちいただいたこちらは何でしょうか?

清水:これはマグネットラップホルダー(左)とマリメッコのマグカップなんですが、実は本当に持ってきたかったのは、キッチンペーパーホルダーなんですよ。ただ、食器棚に貼り付けていたので、持ってこられなくて。このラップホルダーもキッチンペーパーホルダーもネットで見つけて買ったんですが、すごく便利で、感動したんです。

キッチンペーパーホルダーの画像

――最近、特に強く感動したのがそのキッチンペーパーホルダーですか?

清水:そうですね。キッチンペーパーって置いておくとすぐにぐしゃ、となってしまうじゃないですか。置く場所もなかなかないなか、キッチン家具に取り付けて使えるなんて、すごいな! って思ったんです。便利雑貨って、発見すると感動するんですよね。

山崎実業さんの「 tower 」というシリーズのキッチン雑貨が好きです。おしゃれなフォルムで、きちんと片づけが出来る。その便利さに感動します。そのスタイリッシュな雑貨の延長線上として、ちょっと可愛い雑貨にも興味があるんです。このマリメッコのマグカップもこうして置いているだけでインテリアになりますし。

インタビューに答える清水正洋氏

――雑貨をよく購入されるとのことですが、雑貨屋さんで買われるんですか?

清水:ネット通販が主ですね。というのも、我が家は共働きが長く、で子どももいるので、オムツや粉ミルクを定期的にネット通販で購入しているんです。僕は家庭においては日用雑貨ネット購入係なんですけど、そうして購入していく中でレコメンドされてくる商品の中にこうした雑貨が並ぶんです。それを眺めながら、買うかどうか検討するんですが、その悩んでいるプロセスが好きで。

――「悩むプロセス」のどういった点に魅力を感じるのでしょうか?

清水:家の中に「こういうものがあったらいいな」というとき、そこにフィットするベストなものを探しているときが楽しいんです。「これがいいかな」「あれがいいかな」とデザインを見たり、サイズを測ったり。いろいろと探しているなかでアイデアを得て、自分で作ることもあるんです。リビングに飾っているファブリックパネルは自作しました。

――「買い物」が日常生活に必要な物を購入するだけの行為にとどまらず、とても楽しんでいることが伝わります。

清水:買い物ってエンターテインメントだと思うんです。どうして熱中するのかな、と考えたときに、WEBに広がる買い物の場を見ると、各社がUI、UXを気にされているのがわかります。購買導線を楽しくすることを各社が工夫しているのを実感しながら、またそこから学んだり、ときにそこから仕事に生かすのが楽しいですよね。それはまたエンターテインメントになっていくと感じています。

3:書籍『問題解決プロフェッショナル』と『考える技術・書く技術』。「自分の原点」

『問題解決プロフェッショナル』と『考える技術・書く技術』の書影

――『問題解決プロフェッショナル』(齋藤嘉則 著)、そして『考える技術・書く技術』(バーバラ・ミント 著)というご本をお持ちいただきました。こちらが清水さんを形成する要素のひとつ、ということですが。

清水:僕はもともと外資のコンサルティング会社にいて、そこに5年半くらい在籍した後にバンダイナムコグループに入社したんです。前職のときに読んでいたこの本はまさに原点です。どちらも有名な本で、特に「考える技術・書く技術」はロジカルシンキングの元祖でもある本です。自分の原点っぽいものはなんだろうと考えて、久しぶりに自宅の本棚を見たんです。

――本にはたくさんの線が引いてありますし、付箋もたくさん貼ってありますね。

清水:社会人1年目のときに、何回も読んでいました。付箋も当時のものですね。普通の付箋よりもちょっといい付箋でもあったので、それが嬉しくて活用していたということもあります(笑)。

これらのページを何度も見ていたことを今、改めて思い出しました。我々のエンターテインメントの仕事は、無から有を生み出し、アイデアやクリエイターさんのクリエイティビティをコンテンツ・サービスという形で売るのですが、コンサルティングという仕事は考えたことを提案書にまとめて、お客さまに渡して対価をいただくビジネスだったんです。そんなことが当時、自分に出来るのかと不安もあり、必死に毎日この本を読みながら仕事をしていました。

『問題解決プロフェッショナル』と『考える技術・書く技術』の中面

――そのコンサルティングという仕事からバンダイナムコエンターテインメントへの転職はどういった経緯だったのでしょうか?

清水:コンサルティングをやっていると、お客さまに提案することから実際にビジネスを動かしてみたい、と思い立つ人が一定層いるんです。プロフェッショナルなプロジェクトチームで常に動いていますが、組織で働いてみたかった。チームの人たちと一緒に、そのチームを引っぱるような役割を担ってみたいという想いがあって、転職活動をしました。

自分が関心あるBtoCのビジネスを求めているなかで出会ったのがバンダイナムコグループだったんです。根源的には本質的な問題に辿り着いて、それをわかりやすく構造化して、いろんな人に共感してもらうことが結構好きで、その部分はエンターテインメントにも使える所もあり、仕事をする、日々を楽しい瞬間と感じています。

インタビューに答える清水正洋氏

――これまでの時間や今、経験していることがバンダイナムコエンターテインメントでは生かすことができる、そういう場やチャンスがたくさんあるのだ、とお話から感じました。

清水:うちのグループも会社もそうですが、その可能性は無限にありますよね。結局、エンターテインメントって、生きていく上で必須ではないんです。そうすると常に新しさがないといけない。過去の積み重ねも大事なんですけれども、そこを変化させていかなきゃいけない。だから社員一人ひとりの力を変数として掛け算しないと、新しいものって生まれないんじゃないかとまず僕は思っています。

――社員のみなさんの持つそれぞれの経験や力が掛け合わさって、バンダイナムコエンターテインメントの新しいコンテンツが形になっているんですね。

清水:そうですね。僕は人事の担当もしていますけれど、人材戦略として社内で掲げているのは、多様性があっていい、ということ。多様性こそが大事だという話になっていて。会社として持っていてもらいたいベースは、当然ある程度揃えていかなきゃいけないんだけど、その上でいろんな杭が何本も立っている今、この掛け算が起こると新しいものが生まれるんじゃないかと思っているので、ユニークな過去や経験、得意技があるとチャンスは無限に広がるなと思っています。そこで生まれたものが新たなエンターテインメントになっていくと思います。

清水正洋氏

【取材後記】
マリメッコのファブリックパネルを自作されたという清水さん。我が家にも実弟が作ってくれたフィンフィレソンのパンダのファブリックパネルがあります。弟の家と我が家とでペアになっているもの。北欧のファブリックは可愛らしくておしゃれでポップでいいなぁ、と改めて思いました。

取材・文/ えびさわなち
【取材・文 えびさわなち】 リスアニ!、リスウフ♪を中心にアニメ、ゲーム、特撮、2.5次元の雑誌やWEBで執筆中のエンタメライター。春に久々の親子旅に行きたい!と思いつく。行くのはやはり息子も好きな京都かな、とネットのホテルサイトを見ると、やはり春の京都は厳しめ。さて。どこに行こうか、と迷い中。