企業とのコラボレーション施策や、ライブイベントの開催は、「アイドルマスター」(以下、「アイマス」)シリーズにおいて多くの“プロデューサーさん”(※1)が注目しています。今回はそんなライセンスビジネス、ライブイベントをそれぞれ担当する社員に、アイドルたちの活動の可能性を広げる取り組みへの思いを伺いました。
※1 プロデューサーさん:「アイマス」シリーズのファンのこと
「アイマスフューチャー連載」とは?
2023年以降の「アイドルマスター」シリーズを、アニメ/ゲーム/イベントなどの担当者が語る全3回のインタビュー。第3弾となる今回は、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』のライセンスビジネスを担当する本間凌太さんと、『アイドルマスター ミリオンライブ!』のライブイベントを担当する脇田和樹さんが、アイドル活動の可能性を広げる取り組みについて語ります。
「アイマス」の新たなIP(※2)軸戦略として、2022年12月に発表された「PROJECT IM@S(※3) 3.0 VISION(サードビジョン)」(以下、「3.0 VISION」)。
そこでは、“作中のアイドルたちの活動の可能性を広げ、ゲーム領域に閉じないアイドル活動”を目的にした「“MR”-MORE RE@LITY-プロジェクト」(以下、「MRプロジェクト」)の強化が宣言され、今日に至るまでさまざまな取り組みが実施されています。
※2 IP:Intellectual Property の略で、キャラクターなどの知的財産のことを指す
※3 PROJECT IM@S:「アイドルマスター」シリーズにおける、メディアミックス推進プロジェクトの総称
そんな「MRプロジェクト」を推進するにあたって重要な存在が、ライセンスビジネスとライブイベントです。
各企業とのコラボレーション施策や、従来の“声優”ライブのノウハウに最新技術を融合させた“アイドル”ライブのかたちは、リアルとデジタルが融合する自由で新しい“アイドルプロデュース体験”をもたらしてくれています。
そこで今回は、『アイドルマスター シャイニーカラーズ』(以下、『シャイニーカラーズ』)のライセンスビジネスを担当する本間さんと、『アイドルマスター ミリオンライブ!』(以下、『ミリオンライブ』)のライブイベントなどに携わる脇田さんに、それぞれの領域での取り組みについて伺います。
入社以前から“プロデューサーさん”でもあった本間さんと脇田さんは、アイドル活動の可能性を広げるために、どのような思いで日々の業務に打ち込んでいるのか……。ふたりの社員が描く「アイマス」の未来について語っていただきました。
本間 凌太
バンダイナムコエンターテインメント
第3IP事業ディビジョン ライセンスプロダクション
脇田 和樹
バンダイナムコエンターテインメント
第3IP事業ディビジョン ニュービジネスプロダクション
2018年入社。グッズのプロデュース担当を経てライブイベントの担当に。現在は『ミリオンライブ』を中心にライブイベントプロデュースに携わる。
入社面接にて、“コンサートライト”フル装備姿の写真を披露!?
――おふたりは入社以前から“プロデューサーさん”だったと伺っています。何をきっかけに「アイマス」に触れたのでしょうか。
本間:アーケード版の『アイドルマスター』、いわゆる『アケマス』がきっかけでした。幼少期からゲームセンターが好きで、とあるアーケードゲーム誌の記事で『アケマス』を知りました。プレーしにいったところ、独特のゲーム性に魅了されたんです。
脇田:僕は、2011年に放送されたテレビアニメ『アイドルマスター』から入りました。765プロダクションに所属するアイドルたちの成長を描いた作品です。ちょうど同時期にPlayStation 3版の『THE IDOLM@STER 2』が発売されたこともあって、そこから過去のシリーズ作品などを購入しつつ、のめり込んでいきましたね。
――おふたりの入社時期と、現在に至るまでの担当業務を教えてください。
本間:2018年5月に中途採用で入社しました。入社当初からライセンスビジネス……いわゆる自社IPを他社さまにお貸ししたり、コラボレ―ション施策を実施したりなど、IPの活用・運用を手がける仕事をしています。
『アイドルマスター』、『アイドルマスター シンデレラガールズ』(以下、『シンデレラガールズ』)、『アイドルマスター SideM』、『アイドルマスター スターリットシーズン』、『アイドルマスター ポップリンクス』などの経験を経て、2022年度以降は『シャイニーカラーズ』のライセンスビジネスを担当しています。
脇田:2018年の4月に新卒で入社しまして、最初は「アイマス」シリーズのライブグッズを中心としたグッズ製作を経験しました。その後、2021年度からライブイベントそのもののプロデュースも手がけるようになり、現在は『ミリオンライブ』を担当しております。
――おふたりとも同時期の入社ですが、年齢も近かったりするのでしょうか?
本間:僕は、29歳です。
脇田:本間さんのひとつ下で、28歳です。
本間:ちょうど、20代後半~30代前半は「アイマス」の“プロデューサーさん”たちの中でもボリュームのある年齢層なので、我々に親近感を覚えてくださる方も多いんじゃないかなと思います。
――なお、脇田さんは入社選考の時に、コンサートライトを持ったご自身の写真を提出したそうですが……?
脇田:なぜ、そのことを!? 説明させていただくと……実は選考時に「あなたらしさの分かる写真を提出してください」というオーダーがあり提出したのであって、決して自分からアピールしにいったわけではありません(笑)。
大学時代はアメリカンフットボール部に所属していたので、当初は部活中の写真を提出するつもりでした。ただ、それだと「アイマスが大好き」という要素を表現できないと思い、グラウンドでコンサートライトを持っている写真を撮ってお渡ししたんです。そうしたら、それが……。
――今でも語り草になってしまっている、と(笑)。
脇田:はい。さすがに、あの写真がきっかけだとは思いませんが(笑)、まさか採用されるとは思いませんでした。ちなみに、面接時は「正直になんでも話そう」というスタンスで、「アイマス」が大好きなことを洗いざらい話したんです。
――そうした脇田さんの真っすぐな姿勢が吉と出たのかもしれませんね。本間さんも面接の際には、以前から“プロデューサーさん”だったことを伝えていたのでしょうか。
本間:そうですね。話の流れで、面接官から「あなたは入社したら、おそらく『シンデレラガールズ』の担当になると思います。『シンデレラガールズ』には100名以上のアイドルがいるけれど、大丈夫?」と聞かれたんです。
「もちろん『シンデレラガールズ』のアイドル全員の名前を言えますし、さらには「アイマス」の全ブランド・全アイドルがわかります」とお話しして、後日、採用通知をいただきました(笑)。
“ファンも作り手も、みんなが笑顔になれるエンタメ”を目指して!
――“プロデューサーさん”時代を経て、実際にお仕事として「アイマス」に関わることになった今、どのような思いで取り組まれていますか?
本間:学生時代や前職で働いていたころ、「アイマス」に元気をもらえた瞬間がたくさんありました。それと同じように、今度は自分が担当するさまざまな業務で、「プロデューサーさんやファンの方々の背中を押せたらいいな」と思って、日々仕事に打ち込んでいます。
これまで「アイマス」が自分に与えてくれたものの大きさを身をもって知っているからこそ、自分が仕事として携わる以上は一瞬たりとも手が抜けないという気持ちにもなります。
脇田:わかります! 青春時代をともに駆け抜けてきたコンテンツですから、「自分がこれまで受けた感動に匹敵する、あるいはそれを上回る感動をプロデューサーさんたちに提供していかねばならない」と思っています。
そのような意味ではプレッシャーを感じることもありますが、常に良い緊張感の中で挑戦できている感覚がありますね。
――長年、「アイマス」に携わってきた先輩社員から影響を受けたことや、「ここがすごい!」と思ったことなどはありますか?
本間:「『アイマス』のアイドルたちは、キャラクターではなくタレントだ!」ということは、僕が入社した当時から先輩方に言われ続けてきました。おそらく、これはライセンス部門で“創業以来ずっと継ぎ足されてきた秘伝のタレ”のごとく、軸にされてきた考え方なのだと思います。
もしかしたら、「3.0 VISION」のニュースリリースをご覧になって、「アイドルたちのタレント化を推進するということか」と思った方もいらっしゃるかもしれませんが……ライセンス部門としては、昔も今も「彼女ら・彼らはタレントである」が合言葉なので、その意味では考え方に大きな変化はありません。
僕自身も、そういった「アイマス」のアイドルに対する考え方が、好きな部分だったんだなと、入社して改めて気付いた部分があります。
また、アイドルたちのプロフィール情報などに目を通すことも多いのですが、見るたびに「リリースから18年経っても知らないことがいっぱいあるんだな」と思い知らされるんです。本当に発見だらけで、そういった驚きがあるたびに、「この子たちは人間なんだな」と感じますね。
脇田:僕はもともと「アイマス」が好きでこの仕事に就きました。だからこそ「自分の中だけにある『アイマス』をプロデューサーの皆さんに押し付けたくはない」という思いから、判断に迷ってしまうことが多々ありまして……。
そんな時、入社以来とてもお世話になっているとある先輩から、「常に“プロデューサーさんがどう感じるか”という視点でがんばるといいよ」というアドバイスをいただきました。
それ以降、判断に迷った時は、 “プロデューサーさん”のことを思い浮かべながら、「喜んでくれそうだな」「こんな風に受け取ってくれるだろうな」と想像するようになりました。
――“プロデューサーさん”から運営側になったことで、ご自身の理想とする“アイドルたちの活躍する姿”に変化やアップデートはありましたか?
本間:ライセンスビジネス担当の立場からすると、“アイドルたちの活躍”とは、平たく言えばアイドルたちがゲームの中から飛び出して現実の世界で活躍する姿なのだと思います。
さまざまな企業とのコラボレ―ション施策を通じて、“プロデューサーさん”たちや、クライアントの皆さまに笑顔になってもらいたいのはもちろんのこと、アイドル本人も笑顔で前向きに取り組んでもらえるようなお仕事にしたいという思いがあるので、そこは常に意識しています。
脇田:これは面接の時にもお話したことなのですが、僕が「アイマス」を好きな理由は、“プロデューサーさん”はもちろん、作っている人、関わっている人みんなが楽しそうにしているからなんです。
作り手が苦しんでファンに笑顔になってもらうのではなく、“ファンも作り手もみんなが笑顔になれるエンタメ”が、僕の理想なんです。本間さんと通ずる部分があると思いますが、僕もライブイベント担当として、“アイドルたちが、裏方が、プロデューサーさんが笑顔でいてほしい”という思いは、ずっと変わらないですね。
“プロデューサー”さんが、めっちゃ好き――来るべき未来も見据えて!
――みんなが笑顔になれる「アイマス」であるために、ライセンスビジネス担当とライブイベント担当それぞれの立場から取り組んでいきたいことを教えてください。
本間:約1年半前のインタビューでは、「『アイマス』シリーズを皆さんの生活導線の中で必ず見かけるような存在にしたい」とお話しさせていただいたと思うのですが、ここ最近は、そのさらに向こう側を考えるようになったんです。
「アイマス」シリーズが生活のどこかにある状態を築いたうえで、「『アイマス』をきっかけに新しい趣味ができました」とか、「『アイマス』のおかげで生活が豊かになりました」とか……そのレベルまで目指せるといいな、というような気持ちが生まれてきています。
ですから、最近はコラボレーション先を考える際にも、例えば「ZOZOTOWNさんでおしゃれを楽しんでほしいな」「ナッシュさんを利用して健康な食生活を送ってほしいな」と、そんなことばかりを考えています。“プロデューサーさん”には、ずっと楽しく、健やかでいてほしいんですよね。本当に、“プロデューサーさん”がめっちゃ好きです(笑)。
脇田:「アイマス」のイベントを作っているメンバーには、“「アイマス」を好きでいてくれる人たちみんなが笑顔で集まれる空間を作ろう”という共通の思いがあります。
僕個人としても、これからもみんなが「『アイマス』っていいよね!」と笑い合えるようなイベントの形を作っていきたい、と入社した時からずっと思っています。
それがどういったかたちで実現するのかは未知数ですが、18年間も続いている「アイマス」というコンテンツに今この瞬間、携わらせていただいている以上、とても大きな目標であり責任だと捉えて取り組んでいます。
同期入社のコンビが、アイドルの“実在感”を高めるために意識しているのは「あえて“プロデューサーさん”扱いしない」こと!? 気になるインタビュー後編はこちら↓
「アイドルマスター」のライセンスビジネス&ライブイベント担当が語る、アイドルがリアルに存在しているかのように感じてもらうために【後編】【アイマスフューチャー連載③ 本間×脇田】
【取材後記】
同年入社で同世代、入社前から“プロデューサーさん”であるなど、共通ポイントがいくつも伺えた本間さんと脇田さん。おふたりの言葉からは、お仕事への情熱や、とめどない「アイマス」への愛情、そして、“プロデューサーさん”たちへの愛情がにじみ出ていたように感じます。
後編では、そんな社員のおふたりが、アイドルの“実在感”を高めるために意識していることや、それぞれの領域から今後挑戦していきたいことなどを語っていただきます!
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「アイドルマスター」シリーズを紐解くインタビュー記事まとめ
©窪岡俊之 THE IDOLM@STER™& ©Bandai Namco Entertainment Inc.
2018年入社。「アイマス」シリーズ全般のライセンスビジネスを経験したのち、2022年度より『シャイニーカラーズ』のライセンスビジネスを担当。